平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

総括研究報告書

内分泌かく乱化学物質の水道水からの暴露等に関する調査研究

主任研究者  国包 章一 (国立公衆衛生院水道工学部 部長)

 

研究要旨

  ヒトに対して内分泌かく乱作用の疑いのある化学物質のうち水道水に含まれている可能性があるものなど33物質について、水道水における存在状況を把握するとともに、水道用資機材からの溶出量等を明らかにし、水道水を通じたヒトへの暴露量を評価するための情報を整備することを目的として、水道の現場調査、水道用資機材の溶出試験等を行った。また、空気を通じたヒトへの暴露量を評価するための情報を整備することを目的として、いくつかの化学物質による空気の汚染状況に関しても現場調査を併せて行った。代表的な水道として25浄水場を選び実態調査した結果、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル等が水道原水から7物質、浄水場出口の浄水から5物質、給水栓水から2物質が、いずれも定量下限値以上の濃度で検出された。また、水道用資機材を用いた溶出試験の結果、フタル酸類、アルキルフェノール類等17物質が、それぞれいくつかの資機材について低濃度で溶出することが認められた。標準物質を用いた別の実験から、これらの化学物質のうちアルキルフェノール類等は水道における塩素消毒によって水中の残留塩素と反応し、検出されなくなることが確認された。さらに、水道水等のエストロゲン様活性の評価方法についても検討した。このほか、空気に関する現場調査の結果、室内空気及び室外空気からフタル酸類等の物質が、定量下限値以下の濃度で検出された。これらの化学物質による水道水や空気の汚染実態及び水道の浄水過程における挙動を解明するためには、今後さらに調査研究が必要であると考えられる。

 

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