平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担研究報告書

ポリスチレン製器具・容器等のスチレンダイマー及びトリマーに関する研究

 分担研究者 山田 隆 国立医薬品食品衛生研究所

協力研究者 河村葉子 国立医薬品食品衛生研究所

研究要旨

ポリスチレン及びスチレン関連樹脂製品における、スチレンダイマー及びトリマーの材質中残存量、溶出傾向、食品への移行について検討した。

試料としてポリスチレン及びABS樹脂、AS樹脂などのスチレン関連樹脂製の器具・容器及びおもちゃを用いた。材質試験は試料を溶媒抽出して精製し、溶出試験は食品擬似溶媒を用いて溶出を行った後抽出及び濃縮し、また、即席食品への移行試験は、調理を行った後抽出及び精製し、それぞれGC-FIDで定量してGC/MSで確認した。

材質中のスチレンダイマー及びトリマーの残存量は、ポリスチレン製品(65検体)では430〜28,300μg/g(平均7,920μg/g)であり、ビーズ発泡成形品(EPS)で低く、一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、押し出し法シート成形品(PSP)ではほぼ同程度で高かった。一方、スチレン関連樹脂製品(26検体)ではND〜2,740μg/g(平均290μg/g)で、1検体を除きEPSよりも低かった。GPPS、HIPS、PSPでは、熱重合法で重合されたポリスチレンを用いるためスチレンダイマー及びトリマーの残存量が高く、EPSや、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン共重合樹脂では、触媒重合法等で重合されたのポリマーを用いるため残存量が低いことが判明した。

食品擬似溶媒による溶出量は、水60℃30分間ではいずれの製品も溶出はみられなかったが、n-ヘプタン25℃60分間では、HIPSやスチレンブタジェン共重合樹脂(SB樹脂)で約40μg/p2の溶出がみられた。食品擬似溶媒への溶出は、溶媒の脂溶性の増加とともに増加した。n-ヘプタンではHIPSやSB樹脂で特に高い溶出がみられたが、これらに混合されているゴムが溶媒に溶けだしやすいため、同時に溶出したものと考えられた。次いでPSP、さらにGPPSであり、AS樹脂、ABS樹脂等では極めて微量であった。溶出量は、溶出溶媒の極性、材質への浸透性、材質中の残存量及び材質中のゴムの共存等により影響を受けることが示された。

調理による即席食品への移行では、EPS容器では移行はみられず、PSP容器でも生めんやノンフライめんでは移行量が低かったが、油揚げめんでは5.0〜62.ng/gの移行がみられた。1食あたりのスチレントリマー量は最大で33.8μgであった。調理によるポリスチレン容器入り即席食品への移行量は、容器中の残存量及び食品の脂肪含量と相関が見られた。

 

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