平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担研究報告書

ポリ塩化ビニル食器等からのフタル酸エステルの溶出に関する調査研究

分担研究者 山田隆 国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長

協力研究者 馬場二夫 大阪市立環境科学研究所

平山クニ 神奈川県衛生研究所

石井里江,堀江正一,小林進 埼玉県衛生研究所

研究要旨

本研究はポリ塩化ビニル樹脂等の材質を柔軟にするために加えられるフタル酸エステル(PAEs)系の可塑剤等に内分泌かく乱作用があるのではないかとの疑いがもたれていることから、身近な生活用品の使用に伴う、それら化学物質の暴露実態を把握することを目的とした。

試料は近畿、関東各地域のデパート等から購入したプラスチック製の器具、容器の測定対象物質は環境庁が内分泌かく乱作用の疑いがあるとしてリストに掲げたPAEs8種類、アジピン酸ジエチルヘキシル(DEHA)、その他で、それぞれについて製品中含有量、あるいは溶出量の検討を行った。

試料をヘキサンまたはジクロロメタン等で抽出したものについて、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計により定性、定量を行った。その結果、試料を通じて検出された可塑剤の種類はDBP、BBP、DEHA、DEHP、DnOP、及びDiNP6種類で、なかでも検出頻度が高いものはDBP及びDEHPであった。ラップフイルムボトル、ホース、手袋などのポリ塩化ビニル製品、ポリ塩化ビニリデン製品では80以上の試料から6種類の可塑剤が検出された。各可塑剤の検出量は0.03〜45.4%あった。しかし、食品と直接接触する用途のものについては、いずれもPAEsは検出さなかった。キッチンペーパー、ヘラ、コップ、皿など紙、ゴム、ポリエチレンそののプラスチック製品では、試験した試料の4.9%に当たる製品から5〜1500μ9/gの範囲で検出された。汁椀など、試験溶液の濃度で示した試料の場合は試験した試料のほぼ40%からDBP、BBP、DEHA、及びDEHPのいずれかが0.03〜9.50μg/m1の範囲で検された。可塑剤を検出した試料のうち代表的なものについて、食品衛生法の規格に準じて、水、4%酢酸等を浸出溶媒として溶出試験を行った結果、PAEs含有量の多い塩ビ製品などでは試料によって水でも0.01μg/m1以上溶出するものがみられたが、含量が100μg/g前後のその他の素材の試料では、試験した全ての試料について検出されなかった。

これらの結果から塩ビ以外の製品については通常の使用条件で内分泌かく乱作用が疑われているPAEsに暴露される危険性はほとんどないといえる。しかし、塩ビ製品で食品と直接接触して使用される可能性のある用途のものについては、取り扱いに方等において適切を期すよう注意する必要がある。

 

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