平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担研究報告書

課題名:ビスフェノールA等フェノール化合物の暴露に関する調査研究

ポリカボネート食器、食品缶詰等からの溶出に関する調査研究


分担研究者 渡辺悠二 東京都立衛生研究所

研究要旨

近年、給食器、ほ乳びんおよび台所用品に汎用されるポリカーボネート樹脂の原料であるビスフェノールAに内分泌かく乱作用の疑いのあることが指摘され、市販製品中に残存するビスフェノールAが食品に溶出し、人の健康に影響を与える恐れがあるのではないかと懸念されている.


そこで、本調査では市販の一般食器具類、給食器およびほ乳びんからのビスフェ一ルAの溶出量について調査したので報告する.

その結果、1.一般食器具類54品目の材質中の含有量は2.0〜129(平均23.5)mg/kgで、とりわけチタンが添加されていた白色系の試料で含有量が多かった(平均57.4mg/kg).また溶出試験(95℃の水・30分間保持)の結果、40/54品目で68.1ng/mLの範囲でビスフェノールAの溶出が認められ、白色系試料で高い溶出が認められた(白色系:平均10.7ng/mL;その他:平均0.3ng/mL).


2.給食器(190個)のすべてから0.4〜120ng/mLの範囲でビスフェノールAの溶出を認めたが、特にはしで高い溶出が認められた(はし:平均39.6ng/mL、その他平均4.2ng/mL).なお、給食時におけるビスフェノールAの摂取量は児童1回約0.15μg/sと推測される.

3.新しいほ乳びんについて、煮沸消毒および電子レンジ用消毒バヅグによる繰り返し使用時におけるビスフェノールAの溶出量の消長を見た.

煮沸消毒(360回)の場合、0.5%クエン酸溶出液で全く認めず、n−ヘプタン溶出液で10回目まで0.5ng/mL、その後は認められなかった.水溶出液(溶出条件:95℃の水を入れ、室温で30分間放置)では0.3〜0.5ng/mLの範囲で継続的に溶出が認められた.電子レンジ用消毒バッグの場合、0.2〜0.4ng/mLの溶出を認めたが、3〜5回以降は溶出が認められなかった.なお、乳幼児のビスフェノールAの摂取量はおよそ0.04μg/kg/日と推定される。

 

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