研究要旨
船舶及び漁網等の防汚塗料及び防汚剤として使用されたトリブチルスズの有機スズ化合物、農薬として使用されたDDT等の有機塩素系農薬及びPCBは、分泌撹乱作用を示す疑いがあることから、再び注目を浴びている化学物質である。
そこで、北陸・東北・北海道海域(日本海)、東京湾、瀬戸内海、若狭湾及び琵琶湖で捕獲された魚介類30種について、有機スズ化合物のTBT、DBT、TPT及びDPT、PCB、有機塩素系農薬のp,p'-DDD, p,p'-DDE, o,p'-DDE, p,p'-DDT, o,p'-DDT, α-HCH, β-HCH,γ-HCH, δ-HCH、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、アルドリン、ディルドリン及びヘプタクロルエポキシド等を分析した。その結果、今回調査した魚から検出された全ての化合物濃度は概ね過去に調査した魚の分析値と大差のないレベルであった。TBTについては瀬戸内海で捕獲された魚の濃度が最も高く、天然魚と養殖魚を比較すると養殖殖ではTBTが主要汚染である特徴があった。PCBは養殖魚で濃度が低く、地域差よりも魚種による差が大きい。DDT、HCH、ディルドリン等の有機塩素系農薬汚染は地域差が見られ、東京湾や瀬戸内海の内海産の魚でレベルが高い傾向にあり、琵琶湖産の一部も汚染されていることが明らかとなった。 |