平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

総括研究報告書

ボリ塩化ビニル製おもちゃからのフタル酸エステルの溶出に関する調査研究

協力研究者 杉田たき子 国立医薬品食品衛生研究所

研究要旨

ポリ塩化ビニル製おもちゃに可塑剤として用いられるフタル酸エステル類が内分泌撹乱物質の一つであることが指摘されたことから,世界各国で乳児用おもちゃからのフタル酸エステル類の溶出に対する関心が高まり,大きな社会問題となり,我が国でもこれらに関する調査研究事業が進められた.本研究はその事業の一環として,乳幼児が口に含んだときのフタル酸エステル類の移行量の推定及び実験室でのシミュレーション試験法の開発のための基礎的研究を実施した.その結果

@分析法ではおもちゃ中のフタル酸エステル類の残存量の測定にはGC法が,溶出試験溶液の定量にはHPLC法が適した.

Aおもちゃからはフタル酸ジイソノニル(DINP)が多く検出され,DINPは製造メーカーにより形状の異なるピークとなることが明らかとなった.材質中のDINPの定量は,総ピーク面積で,また,溶出試験液中の定量は主ピークの高さを基準にした.

BDINP58%を含有するおしゃぶりを用いて,各種振とう用機器を用いて8の字振とう,往復振とう,上下振とう及び超音波振とうによる溶出試験を行ったところ,8の字振とう(毎分90回)ではDINPの溶出量は10.9μg/mL,往復振とう(毎分160回)では20.4μg/mL及び上下振とう(毎分300回)では35.8μg/mLであり,上下振とうで多く溶出した.DINPの溶出量は溶出用器具の中でのおもちゃ試験片の動きが大きいほど溶出量は多く,ビー玉を加えると,試験片の動きが阻害されDINPの溶出量は減少した.

C4種類の振とう方法を数種類のおもちゃ試験片に応用したところ,DINPの溶出量は試験片の重量や形状にも左右され,今回検討した振とう方法では,300回/分の上下振とう法が溶出量のバラツキが小さく最も有効な方法であると考えられた.

Dヒトによる15分間4回のチューイング試験結果で,DINPの総移行量及び濃度はおしゃぶりで231〜401μg及び4.4〜11.6μg/mL,ガラガラでは308,373μg及び8.4,11.6μg/mL,歯がためでは156,207μg及び4.4,6.6μg/mLであった.今回実施した上下振とう試験(300回/分,15分間)における溶出量は,おしゃぶりで297μg及び9.9μg/mL,ガラガラでは246μg及び8.2μg/mL,また,歯がためでは186μg及び6.2μg/mLであり,ヒトによるチューイング試験の移行量と良く一致した.

 

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