研究要旨
ビスフェノールA(BPA)には,内分泌撹乱作用の疑いが指摘されておりポリカーボネート製品などからの微量溶出が問題となっている。そこで、本研究では市販品及び実際に学校給食で使用されているポリカーボネート製食器やエポキシ塗装箸からのBPAの溶出について溶出実態調査を行った。結果の概要は下記の通りである.
1.使用中のポリカーボネート製給食用食器からのBPAの溶出濃度はND〜66.7ppbであり,約3割の容器から1ppb以上の溶出が見られた。しかし,市販の新調品からの溶出量は殆どが検出限界以下であった。一方,エポキシ塗装箸は検出量、検出頻度ともポリカーボネート製容器に比べかなり高い傾向が見られた。
2.浸出溶液の影響をみると,n一ヘプタンによる溶出量が最も少ない傾向が見られた。これは、n-ヘプタンのBPAに対する溶解性の低さと、溶出温度が25℃と低いこと等が考えられる。
3.繰り返し溶出試験を行った結果,ポリカーボネート製食器からの2回以降の溶出量は初回溶出量に比べ顕著な減少を示した。一方,エポキシ塗装箸5回目の再溶出でも50ppb以上溶出されたものも見られた。
4.ポリカーボネート製容器を電子レンジで加熱使用することにより,BPAの溶出は促進されることから,電子レンジで加熱使用することは避けるべきと考えられる。 |