平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担研究報告書

食品関係に使用するゴム製品、紙製品、塗製品等に含まれるフタル酸エステルの実態


研究協力者 馬場二夫 大阪市立環境科学研究所

研究要旨

身の回りで使用されているゴム製品、紙製品、塗り製品ならびに数種類の材質のプラスチック製品131試料を対象として、内分泌かく乱作用があるとの疑いがもたれているフタル酸エステル(PAEs)8種類及びアジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHAならびに内分泌かく乱作用については特に指摘されていないフタル酸ジノニル(DINP)等5種類のPAEs系可塑剤について、含有量及び溶出量の調査を行った。その結果、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、及びDEHAの4種類の可塑剤が検出された。含有量で示したものの検出量はポリ塩化ビニル製の試料を除けば6.6〜651μg/gで、大半が100μg/g以下であった。また、汁椀など浸出液の濃度で示したものでは試験した試料の約40%から0.03〜9.50μg/m1の範囲で検出された。全試料を通じて検出頻度の高かったものはDBPとDEHPで、試験した試料総数に対して、それらが検出された割合は10%前後であった。

PAEs等を検出した試料のうち食品と直接接触する可能性のあるコップ、汁椀な試料について、食品衛生法の規格の試験法に準じて、水ならびに4%酢酸での溶出試験を行った結果、いずれの条件においても検出限界の0.01μg/m1以上検出するものはなかった。

以上の結果、ゴム、紙、メラミン樹脂、ポリカーボネートなどポリ塩化ビニル以外の素材からは、可塑剤を意図して添加したと考えられるものはみられなかった。PAEsが検出された試料について実施した溶出試験における移行量も少ないことから、身近な生活用品の使用に伴う差し迫った危険性はないと考えられる。

 

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