平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担研究報告書

内分泌かく乱化学物質の人体暴露に関する研究

分担研究者  秦 順一 (慶應義塾大学医学部病理学教室 教授)
協力研究者  渡辺 昌 (東京農業大学応用生物科学部・栄養学 教授)
飯田 隆男 (福岡県保健環境研究所生活化学課・食品衛生 部長)
田辺 信介 (愛媛大学農学部生物資源化学講座・環境化学 教授)

研究要旨

 1.PCB類
   剖検症例の肝(10検体)、腸間膜脂肪(12検体)および腹壁脂肪(9検体)におけるmono-orthoPCB(8種類)とdi-orthoPCB(2種類)を測定した(表1)。肝、腸間膜脂肪および腹壁脂肪の脂肪重量あたりのmono-orthoPCB平均値はTEQ表記で、それぞれ8.95、19.16および20.59pg/gであり、肝は脂肪組織の約1/2であった(表2)。絶対値では、肝、腸間膜脂肪および腹壁脂肪の脂肪重量あたりのmono-orthoPCBは、478-3366、17357-171919および20022-186417pptと予想外の大量の蓄積があった。di-orthoPCBも同様にTEQ表記で、11.36、24.79および20.59であり、mono-orthoPCBと同じように肝は脂肪組織の約1/2であった(表1)。測定した12種類のPCBのそれぞれの相対比は、肝、腸間膜脂肪および腹膜脂肪いずれも同じ傾向を示した(表3)。今回、得られたmono-orthoPCBとdi-orthoPCBの値は、以前、報告された血液脂肪中の測定値とほぼ同じレベルであった(増田ら、Organohalogen Compounds30:147,1996)

2.ダイオキシン、フラン、ジベンゾフラン類
  剖検症例(4症例)の肝、胆汁および血液におけるダイオキシン、フラン、ジベンゾフラン類とdi-orthoPCBを測定し、表4で示される結果を得た。TEQ表記で見ると、胆汁におけるダイオキシン、フラン、ジベンゾフラン類の蓄積は、血液における蓄積と相関する傾向がうかがわれた。Total TEQ値でみると、胆汁では1.11-27.27、肝では3.77-16.21、血液では3.7-16.44であった。胆汁中の濃度が意外に高いことがわかり、ダイオキシン類の体内循環に示唆をあたえる所見を得た。

3.有機スズ化合物、重金属類
  剖検症例(14症例)の肝および腸間膜脂肪組織について、有機スズ化合物(トリブチルスズTBT、ジブチルスズDBT、モノブチルスズMBT)、重金属(水銀、鉛、カドミウム等)を測定している。モノブチルスズMBTおよびジブチルスズDBTは、肝臓湿重量あたりそれぞれ、6以下より60、8.3から81ng cation/g であり、トリブチルスズTBTはいずれも検出限界以下であった。また水銀は0.08以下から1.49mg/g乾燥重量であった。
  有機塩素化合物の分析は未完であるが、これまでに終了した5検体の濃度範囲(ng/g湿重量)は、PCBs(320-2100)、DDTs(94-820)、CHLs(53-480)、HCHs(52-370)、HCBs(19-45)であった。

 

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