平成10年度 厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

分担報告書

ダイオキシンのリスク評価における不確実性の検討に関する研究

分担研究者 今井 清 (食品薬品安全センター秦野研究所)

 

研究要旨

  ダイオキシン類が動物間で大きな種差を生ずる要因について、体内動態、作用機序、生理的状態の寄与について、検討した。ラット、マウス、モルモット、サルなどで体内動態に著しい差が認められており、このことが四塩基ダイオキシン(TCDD)の毒性に著しい種族差を生む大きな要因即ちリスク評価の不確実性要因のひとつとなっている。今年度収集可能であったTCDDに関する51編の公表された論文の中から主として急性毒性、体内動態に関する成績を整理して、50%致死量、作用機序、TCDDの吸収、分布、代謝、排泄などに関する実験動物相互あるいは人と実験動物の間の種差を比較し、リスク評価に際しての、不確実性の要因を明らかにするための検討を行った。TCDDの毒性発現はTCDDの体内分布とほぼ一致しており、移行率の高い組織ほど毒性も強く現れる傾向にある。ラットよりTCDDの体内に対する50%致死量が低いモルモットでは、正常肝においてもラットに比較して薬物代謝酵素活性が低く、TCDD投与による薬物代謝酵素の誘導は認められていない。TCDDに感受性の高い幼若ラットあるいは雌ラットでは、感受性の低い雄ラットに比較して、肝臓における薬物代謝酵素活性は低く、さらに、雄の幼若ラットを用いてフェノバビタールあるいはメチルコラントレンにより肝臓の薬物代謝酵素を誘導した後、TCDDを投与すると50%致死量が上昇することが明らかにされている。このように薬物動態のパターンが毒性反応を質的あるいは量的に左右する大きな要因になっており、TCDDの場合においてもラット、マウス、モルモット、サルなどでその体内動態に著しい差が認められており、このことがTCDDの毒性に著しい種族差を生む大きな要因即ちリスク評価の不確実性の要因の1つとなっている。

 

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