平成10年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

超臨界流体抽出による一斉分析法に関する研究

分担研究者  佐々木 久美子 (国立医薬品食品衛生研究所 食品部 第一室長)
研究協力者  根本 了 (国立医薬品食品衛生研究所 食品部)

研究要旨

  超臨界流体抽出(SFE:Supercritical Fluid Extraction)を用いた穀類中の残留農薬の一斉分析法を確立した。玄米に87農薬を添加して、各種SFE条件が抽出の効率に与える影響について検討し最適な条件を選択した。メタノールなどのモディファイヤーの効果についても検討したが、添加物より回収率がむしろ減少したためモディファイヤーは添加しない方がよいことがわかった。最適化したPFE条件を用いて、小麦、玄米、そば及びトウモロコシからの添加回収実験を行ったところ概ね80%以上の良好な回収率が得られた。また、試験溶液の調整時間は溶媒抽出法より大幅に短縮されかつ操作も簡略化された。更に、穀類試料に対するSFE法の実用性を検証するために従来の溶媒抽出法との比較を行った。比較は、128農薬(有機塩素系農薬16、ピレスロイド系農薬12、カーバメート系農薬15、有機リン系農薬43、その他42)を用いた添加回収実験のほか、実際の検体(玄米、小麦、大麦及びトウモロコシ)中の残留農薬に対してはSFE法と溶媒抽出法で求め両者の測定値を比較した。その結果、極性の高い一部の農薬に対してはSFE法は低い測定値を与えるものの、検出された多くの農薬に対しては溶媒抽出法と同等の結果となったことから、SFE法は穀類中の残留農薬分析において実用性のある方法であると考えられる。

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