平成10年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担究報告書

11 ゲニステイン、ノニルフェノールおよびブチルベンジルフタレートの
サルまたはラットを用いた体内動態試験報告書

分担研究者  伊賀 達也 ((財)食品農医薬品安全性評価センター 代謝分析室)

研究要旨

   プラスチック可塑剤として用いられているn-ブチルベンジルフタレート(以下、BBP)、プラスチック添加剤または界面活性剤として用いられているp-ノニルフェノール(以下、NP)および大豆種子中に含まれているイソフラボンの一種であるゲニステイン(以下、GE)について、ラットを用いて体内分布、蓄積性、乳汁移行および胎児への移行等の確認を行った。その結果、ラットにおける体内動態においてBBP、NPともに類似した挙動を示した。つまり、BBPおよびNPは体内に入った後、肝臓による初回通過効果を受けるとともに、組織に分布する前に投与量のほとんどが尿として排泄された。主要分布臓器は腎臓および肝臓となり、生殖器をはじめとしたその他の組織には特異的な分布は認められなかった。また、BBPおよびNPの乳汁移行性、胎児移行性は極く僅かであり、移行後の消失も速やかであった。一方、GEは投与後、腎臓より尿として排泄されたが、その排泄量は投与量の3割から5割に留まり、投与直後において腎臓および肝臓に主に分布していたGEが経時的に組織全体に移行し、特に肝臓、腎臓以外では副腎、骨髄、生殖器等への高濃度での分布が認められた。また、腸管内容物における残存放射能が投与後24時間においても高値で認められたことから、GEは投与後、主にグルクロン酸抱合を受け胆汁中に排泄された後、腸管循環により体内へ再吸収され各組織に分布したことが示唆された。乳汁および胎児へも投与後24時間において高濃度の暴露ではないが、他組織と同様にGEが移行することが確認された。また、GEについては、サル(カニクイザル)における経口(以下、po)投与後および静脈内(以下、iv)投与後の血漿中濃度推移について確認を行った。その結果、ほぼラットと同様の経時的推移を辿ったことから、ラットと類似の体内挙動をすることが推察された。一方、サルへのpo投与後の血漿中濃度測定結果から用量依存性のないGEの血漿中暴露が認められたことから、サルでは5mg/kgの用量でpo投与した場合、吸収に飽和の傾向が認められた。

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