平成10年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

ビスフェノールA、ゲニステイン等の繁殖影響及び体内動態に関する調査研究

主任研究者  福島 昭治 (大阪市立大学医学部 教授)

研究要旨

   現在までに得られた研究成果は次の如くである。1)スチレンモノマーはラット肝発がんを抑制し、ビスフェノールAは肝発がん性に影響を及ぼさないことが強く示唆された。ディルドリンの肝発がん性に無作用量の存在が示唆された(福島)。2)実験継続中の2世代繁殖毒性試験において、親世代(F0世代)と第一世代(F1世代)の5週までの成績ではビスフェノールAおよびゲニステインによると考えられる変化は認められていない(川島)。3)ラットにおいてビスフェノールAの血漿中濃度は投与量に相関してほぼ線形に増加し、雄の方が雌より高値を示した。また、経口投与で腸肝循環が認められた。サルにおいては明瞭な腸肝循環は認められなかった(大野)。4)ビスフェノールAの単回投与は自発運動に影響を及ぼさなかったが、28日間経口投与後、ビスフェノールA投与では有意な自発運動の増加が示された(鈴木)。5)大豆イソフラボンを妊娠、授乳ラットに投与すると胎児数や乳児数の低下がみられ、またその胎児、乳児への移行が認められた(池上)。6)ビスフェノールAの経口投与1時間後には母親血漿中の濃度の1/3が胎児に移行することが明らかとなった。さらに時間が経過しても高い濃度を維持した(武田)。7)ビスフェノールA、ゲニステインはラットの生殖関連行動や生殖機能、および鶏胚の孵化等に影響を及ぼさなかった。しかし、ヒト免疫系培養細胞に対しては両物質ともエトポシド誘導アポトーシスを増強した(別府)。

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