(食品安全情報2023年13号(2023/06/21)収載)
食品安全事例
2023年の第1四半期に国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局は、世界保健機関(WHO)加盟の全ての地域の計53の国・領土が関連した計47件の食品安全事例に対応した。このうち生物的ハザード関連の事例は28件で、その内訳は、サルモネラ属菌(9件)、リステリア(Listeria monocytogenes)(6件)、大腸菌(3件)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(2件)、A型肝炎ウイルス(2件)、アニサキス(1件)、クロノバクター(1件)、赤痢アメーバ原虫(Entamoeba histolytica)(1件)、レプトスピラ(1件)、ノロウイルス(1件)および赤痢菌(Shigella)(1件)であった。また、化学的ハザード関連の事例は9件(メタノール(2件)、アフラトキシン(1件)、クロロタロニル(1件)、麦角アルカロイド(1件)、ヒスタミン(1件)、鉛(1件)、窒素(1件)、パツリン(1件))、非表示のアレルゲン/成分に関連した事例は6件(ピーナッツ(2件)、卵(1件)、グルテン(1件)、乳(1件)、大豆(1件))、物理的ハザード関連の事例は3件(ガラス(1件)、金属(1件)、石(1件))であり、残りの1件については関連したハザードが不明であった。
本四半期にINFOSAN事務局が対応した上記47件の事例に関連した食品カテゴリーは、魚・水産食品(6件)、食肉・食肉製品(6件)、複合食品(5件)、ナッツ・油糧種子(5件)、シリアル・シリアルベース製品(3件)、果物・果物製品(3件)、乳・乳製品(3件)、スナック・デザート・その他の食品(3件)、野菜・野菜加工品(3件)、アルコール飲料(2件)、乳幼児用食品(2件)、ハーブ・香辛料・調味料(2件)、豆類(1件)、ノンアルコール飲料(1件)の順に多く、2件については原因食品が不明であった。
INFOSANのメンバーおよび協力機関の積極的な関与により、これらの食品安全事例の53%がINFOSAN加盟各国の緊急連絡窓口(ECP)および情報連絡窓口(FP)を介して、28%が欧州委員会(EC)の「食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)」を介して、また19%がWHOの様々な経路を介してINFOSAN事務局に報告された。
上記の食品安全事例には、WHOの全ての地域の計53の加盟国・領土が関連した。本四半期に事例を報告した加盟国の地域別内訳は、欧州(23/53カ国)、西太平洋(9/27カ国)、米州(8/35カ国)、アフリカ(7/47カ国)、南東アジア(4/11カ国)、および東地中海(2/21カ国)であった。
〇 ウクライナ産鶏肉製品に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Mbandaka)感染アウトブレイク
INFOSAN事務局は、ウクライナ産鶏肉に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Mbandakaシークエンスタイプ(ST)413)感染アウトブレイク(患者数計247人)の追跡調査を行っている。欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、最新の国別報告患者数は、チェコ(5人)、エストニア(3)、フィンランド(89)、フランス(10)ドイツ(2)、アイルランド(1)、イスラエル(4)、オランダ(1)および英国(132)である。直近の患者は2023年3月に英国で検知され、WGS(全ゲノムシークエンシング)解析により関連が特定された。
RASFFを介して情報が共有され、本アウトブレイクに関連した製品は計9カ国に出荷されたことが通知された。INFOSAN事務局は、RASFFに加盟していないWHO加盟国に対し、当該製品の出荷について速やかに通知し、当該製品の国際的な流通に関する追加情報を求め、また当該製品の喫食に関連した可能性がある全ての患者に関する情報の提供を要請した。
ウクライナにおけるINFOSAN ECPおよび国際保健規則(IHR)情報連絡窓口(FP)との緊密な連携により、INFOSAN事務局は、これまでにウクライナからWHO加盟各国に輸出された製品は既にRASFFに通知された製品以外にはないことが確認されたとの報告を受けた。ウクライナ当局は調査を開始し、関連製造業者の施設で実施されたリスク管理対策についてINFOSANに連絡した。
INFOSAN事務局はWHO加盟各国への支援を継続し、調査および追加のリスク管理対策の実施を進めるため情報共有を促している。さらなる情報が得られた際は、INFOSANを介して共有される予定である。
INFOSANの能力開発活動
2022年に「世界保健機関(WHO)の食品安全のための世界戦略(WHO Global Strategy for Food Safety)」が導入され、加盟各国による食品安全のための世界的な目標の達成を支援するINFOSANの役割が極めて重要になっている。INFOSAN事務局は、食品安全機関の相互間の分野横断的な連携を適正な水準で促進するため、ワークショップ、シミュレーション演習およびその他の個別活動の推進により、加盟各国を支援する取り組みを継続・強化してきた。これらの取り組みは、各国が食品安全システムを強化するために必要な支援を確実に受けられるよう、各国の固有の状況に合わせて調整されている。加盟各国は、INFOSAN事務局との緊密な協力により、食品安全事例の予防・探知・対応能力を向上させることができる。
〇 INFOSANの入門ワークショップ
2023年の第1四半期にINFOSAN事務局は、コンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo)、コンゴ共和国(Congo)およびペルーにおいて計3件の入門ワークショップを企画・開催した。これらのワークショップは、新たなメンバーが食品安全緊急時対応におけるINFOSANの役割について理解するための支援として行われた。これらのワークショップでは、INFOSANの目的および原則のほか、安全が確保されたコミュニティプラットフォーム「INFOSANコミュニティウェブサイト」の使用を含め、INFOSANの運用体制についても概要が示された。参加者は、情報共有の重要性、他の食品安全当局との協力、および緊急時の効果的な情報伝達経路の構築の重要性について学んだ。INFOSANのこの入門ワークショップは、INFOSANへの参加および公衆衛生保護能力の強化を目指すすべての食品安全当局・機関にとって必要不可欠な第一歩である。
〇 2023年第2四半期(4〜6月)に実施が確定しているワークショップ、オンラインセミナーおよび地域会議
2023年の第2四半期にINFOSAN事務局は、各国・地域の食品安全事例への対応強化を支援するための取り組みとして、国連食糧農業機関(FAO)/WHOの地域事務局および加盟国事務所との協力により、各国の複数機関向けワークショップおよび地域会議を以下の日程で開催する。