Gastrointestinal and Zoonoses, Biennial report 2020 to 2021
07 February 2023(REVISED: 8 March 2023)
https://publichealthscotland.scot/media/18212/giz-annual-report-2020-2021_final_revisions.pdf(報告書PDF)
https://publichealthscotland.scot/publications/gastrointestinal-and-zoonoses/gastrointestinal-and-zoonoses-biennial-report-2020-to-2021/
(食品安全情報2023年15号(2023/07/19)収載)
スコットランド公衆衛生局(PHS)は、スコットランドの胃腸病原体および人獣共通感染病原体に関する2020〜2021年次の報告書を発表した。本報告書から各病原体の要点(Main Points)の部分を以下に紹介する。
1.カンピロバクター
- 2020年はカンピロバクター症患者5,392人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は5,890人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された5,977人より減少した。
- カンピロバクター症患者の検査機関報告数のピークは、通常は春季から夏季にかけて見られるが、2020年は遅れ、最も報告が多かったのは第29〜32週であった。2021年は2019年までと同様に、検査機関からの報告は第21〜24週に最も多かった。
- 性別罹患率は2019年までと同様の傾向が見られ、2020年および2021年も引き続き男性の方が女性より高かった。
- 罹患率が最も高かった年齢層は依然として乳幼児(0〜4歳)および高齢者(65歳以上)であった。
- スコットランドの全体的なカンピロバクター症罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は98.6であったのに対し、2021年は107.8であった。
2.クリプトスポリジウム
- 2020年はクリプトスポリジウム症患者252人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は369人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された502人より減少した。
- 2021年に検査機関から報告された患者数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前の水準には戻っていない。
- クリプトスポリジウム症患者の検査機関報告数のピークは、通常は春季および秋季に見られるが、2020年には見られなかった。2021年は秋季に予測されたピークが観察されなかった。
- 性別罹患率は、2020年および2021年は女性の方が男性より高かった。
- 年齢層別罹患率は依然として乳幼児(0〜4歳)で最も高かった。
- スコットランドの全体的なクリプトスポリジウム症罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は4.6であり、2021年は6.8であった。
3.サイクロスポラ
- 2020年はサイクロスポラ症患者4人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は1人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された16人より減少した。
4.大腸菌O157
- 2020年は大腸菌O157感染患者113人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は137人が報告された。
- 2020年および2021年とも、2019年に報告された149人より減少した。患者数のこの軽度の減少傾向は、直近5年間とそれ以前の5年間の患者数の比較においても同様に認められた。
- 報告数が最も多かったのは夏の数カ月間(2020年は第29〜32週、2021年は第33〜36週と第41〜44週)であった。
- 性別罹患率は、2020年は男女が同程度であり、2021年は男性の方がわずかに高かった。
- 年齢層別罹患率は依然として乳幼児(0〜4歳)で最も高かった。
- スコットランドの全体的な大腸菌O157感染罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は2.1であり、2021年は2.5であった。
5.O157以外の志賀毒素産生性大腸菌(STEC)
- 2020年は大腸菌O157以外のSTEC(non-O157 STEC)感染患者100人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は122人、2019年は109人であった。
- 報告数が最も多かったのは夏の数カ月間(2020年は第37〜40週、2021年は第29〜32週)であった。
- 性別罹患率は、2020年および2021年とも女性の方が男性よりわずかに高かった。
- 年齢層別罹患率は依然として乳幼児(0〜4歳)および高齢者(65歳以上)で最も高かった。
- スコットランドにおけるO157以外のSTEC感染の全体的な罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は1.8であり、2021年は2.1であった。
6.ジアルジア
- 2020年はジアルジア症患者117人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は67人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された210人より減少した。
- ジアルジア症患者の報告数に季節的なパターンは見られない。2020年および2021年は検査機関からのPHSへの報告数が年間を通じて少ない傾向にあった。
- 性別罹患率は、2020年および2021年とも男性の方が女性より高かった。
7.A型肝炎
- 2020年はA型肝炎患者11人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は10人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された50人より減少し、COVID-19パンデミック前の水準より減少した。
8.E型肝炎
- 2020年はE型肝炎患者127人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は96人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された158人より減少した。
- 2020年は、高齢者(65歳以上)の男性で罹患率が最も高かった。2021年は50〜64歳の男性で罹患率が最も高かった。
9.リステリア
- 2020年はリステリア症患者13人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は17人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された7人より増加した。
- リステリア症は年間を通じて検査機関から報告され、顕著な季節性は見られない。
- 検査機関報告数は依然として高齢者(65歳以上)で最も多かった。
10.ノロウイルス
- 2020年はノロウイルス感染患者211人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は349人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された885人より減少した。
- 2020年および2021年はノロウイルスの通常の季節的流行は見られなかった。
- 性別罹患率は、2020年および2021年とも女性の方が男性より高かった。
- 年齢層別罹患率は、依然として乳幼児(0〜4歳)で最も高かった。
- スコットランドの全体的なノロウイルス感染罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は3.9であったのに対し、2021年は6.4であった。
11.ロタウイルス
- 2020年はロタウイルス感染患者112人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は102人が報告され、過去10年間で最も少なかった。
- 2020年および2021年とも、2019年に報告された257人より減少した。
- 性別罹患率は、2020年および2021年とも男性の方が女性より高かった。
- 年齢層別罹患率は、2020年および2021年とも乳幼児(0〜4歳)で最も高かった。
12.サルモネラ
- 2020年は非チフス性サルモネラ症患者342人が検査機関からPHSに報告された。
- 2021年は330人が報告された。2020年および2021年とも、2019年に報告された757人より減少した。
- 通常は夏の数カ月間に報告数が最も多くなる。その後、学校の中間休暇の時期と重なる10月に再びピークが見られる。2020年および2021年にはこの傾向が見られなかった。
- 非チフス性サルモネラ感染の罹患率は年齢層によって異なり、概して5歳未満の乳幼児の方が5歳以上の小児より高い。
- スコットランドの非チフス性サルモネラ症の全体的な罹患率(人口10万人あたりの検査機関報告数)は、2020年は6.3であり、2021年は6.0であった。
- 最も多く報告された上位2種類の血清型は引き続きSalmonella EnteritidisおよびS. Typhimuriumであった。
13.赤痢
- 2020年は赤痢患者38人が検査機関からPHSに報告され、このうち36人について感染菌種が特定された。
- 2021年は27人が報告され、このうち26人について感染菌種が特定された。
- 2020年および2021年はともに、2019年に報告された105人より減少し、2019年は患者105人のうち102人について感染菌種が特定された。
- スコットランドにおいて2020年および2021年に患者数が減少した主な赤痢菌種はShigella sonneiであった。
- 最も多く報告された上位2種類の菌種は引き続きShigella sonneiおよびShigella flexneriであった。
14.ライム病(Lyme Borreliosis)
- 2020年はライム病患者293人が検査機関からPHSに報告され、2019年に報告された308人より減少した。
- 2021年は529人が報告された。
- ライム病の検査機関確定患者は罹患率が過小評価されていると考えられる。これは、臨床ガイダンスにより、ライム病に特異的な症状を強く呈している患者には迅速な抗生物質治療が推奨されているためである。ほとんどの場合、検査で検出されるはずの抗体反応が抗生物質治療によって解消されてしまうため、臨床検体の検査結果は陽性にならないと考えられる。
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部