オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)からのカンピロバクター関連情報
https://www.rivm.nl


オランダの腸管感染症および人獣共通感染症に関する2021年次報告書
Annual report 2021 on enteric infections and zoonoses
07-11-2022
https://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/2022-0128.pdf(報告書PDF)
https://www.rivm.nl/en/bibcite/reference/354981

(食品安全情報2023年2号(2023/01/18)収載)


 「腸管感染症(enteric infection)」は、主に糞口感染により伝播するヒトの多様な感染症の総称である。これらの腸管感染症の原因病原体には、様々な細菌、寄生虫およびウイルスがある。腸管感染症は、一般的に、嘔吐、腹痛、出血性・非出血性下痢などの胃腸症状を引き起こす。また、肝炎、敗血症、髄膜炎などの重篤な感染症につながる場合もある。腸管感染症には家畜やペットからヒトに伝播するものがあり、これらは人獣共通感染症として知られている。その他の腸管感染症はヒトのみが宿主であり、ヒトからヒトに伝播する。どちらの伝播も汚染食品を介して起こることが多いが、環境(土壌、空気、地表水)を介した伝播または動物や糞便との直接接触による伝播も起こる。腸管感染症の拡大状況をモニタリングするため、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、オランダにおけるこれらの感染症と原因病原体の発生状況を毎年図表で示している。

 サルモネラ、カンピロバクターおよびノロウイルスは、主に食品を介して伝播する病原体であり、2021年は2020年と比べるとより高頻度に検出されたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前ほど高頻度には検出されなかった。2020年に検出率が低下した原因は、新型コロナウイルスの拡散を抑えるための非薬物的な対策の副次効果であったと考えられる。総じて、2021年には2020年ほど多くの対策は講じられなかった。例えば、2021年は2020年より海外旅行の件数が多かったことで、これらの感染症が2020年より増加したと考えられる。リステリア(Listeria monocytogenes)感染患者数には変化は見られなかった。リステリア菌は主に、保存可能期間が比較的長い魚(燻製)・チーズ・食肉製品などから検出される。また、主に水や泥への接触によって感染するレプトスピラ症についてもこれと同じ傾向が見られた。

 ヒト−ヒト感染によって拡大するロタウイルス感染の患者数は、2021年は特に小児においてCOVID-19パンデミック前とほぼ同じ水準まで戻り、注目すべき状況であった。2021年は、2月頃に患者数の通常のピークが見られなかったが、次の季節的流行が同年の10月という異例の早い時期に始まった。これは、COVID-19パンデミックが始まって以降一時的に患者数が減少した後、小児においてロタウイルス感染への感受性が再び高まったためと考えられる。

 2021年は食品関連アウトブレイクとして注目すべき事例が多数発生した。これには、ホンジュラス由来のガリアメロンの喫食により複数国にわたり発生したサルモネラ感染アウトブレイク、およびオランダの産卵鶏農場由来の卵に関連して発生したサルモネラ感染アウトブレイクなどがあった。また、原因食品がサーモンである可能性が高いリステリア感染アウトブレイクも発生した。

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国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部