欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
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https://www.efsa.europa.eu/en


サルモネラおよびカンピロバクターの抗生物質耐性レベルは依然として高い
Salmonella and Campylobacter continue to show high levels of antibiotic resistance
29 Mar 2022
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/salmonella-and-campylobacter-continue-show-high-levels-antibiotic-resistance(ECDCサイト)
https://www.efsa.europa.eu/en/news/salmonella-and-campylobacter-continue-show-high-levels-antibiotic-resistance(EFSAサイト)

(食品安全情報2022年12号(2022/06/08)収載)


 欧州疾病予防管理センター(ECDC)および欧州食品安全機関(EFSA)が発表した「欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2019〜2020年)」から、サルモネラおよびカンピロバクターの抗生物質耐性レベルは依然として高いことが明らかになった。


 2020年にEU域内で報告された人獣共通感染症のうち最も多かったのはカンピロバクター症であり、食品由来疾患の原因としても最も高頻度に報告された。ヒトおよび家禽由来のカンピロバクター株はシプロフロキサシンへの耐性率が引き続き非常に高かった。シプロフロキサシンは、ヒトの特定の細菌感染の治療薬として一般的に使用されるフルオロキノロン系抗生物質の1つである。

 フルオロキノロン系抗生物質への耐性率は、ヒトおよびブロイラー由来のCampylobacter jejuni株で上昇傾向が認められた。また、ヒト由来のサルモネラ血清型としては最も一般的なSalmonella Enteritidis株では、キノロン/フルオロキノロン系抗生物質への耐性率の上昇傾向が認められた。動物由来株では、C. jejuni株およびS. Enteritidis株の全体的な抗生物質耐性レベルは中程度から高度であった。

 特定の抗生物質への耐性率が上昇傾向である一方で、ヒトおよび食料生産動物由来の大腸菌株、サルモネラ株およびカンピロバクター株については、2種類の極めて重要な抗生物質への複合耐性率は依然として低かった。

 ヒト由来サルモネラ株のテトラサイクリン耐性およびアンピシリン耐性は、2016〜2020年にそれぞれ加盟9カ国および10カ国で低下し、特にS. Typhimuriumではこの傾向が顕著であった。低下傾向はみられるものの、ヒト由来および動物由来のサルモネラ株におけるこれらの抗生物質への耐性率は依然として高い。

 また、EU加盟国の半数以上において、食料生産動物からの基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生性大腸菌の検出率に統計学的に有意な低下傾向が認められた。ESBL産生性大腸菌の特定の株はヒトの重度の感染症の原因となるため、この傾向は重要な知見である。

 食料生産動物由来の大腸菌株およびサルモネラ株でカルバペネム耐性がみられることは依然として極めてまれである。カルバペネム系抗生物質は最終選択薬とされる抗生物質クラスの1つであるため、人獣共通感染症細菌からこれらの抗生物質への耐性が検出された場合は重大な問題となる。

 2019〜2020年の結果および傾向は過去数年間に報告されたデータと一致しているが、特に公衆衛生などに関する報告データの量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受けている。

 2019年および2020年にヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌から検出された抗生物質耐性レベルの国別データは、対話型データ可視化ツール(以下Webページ参照)により閲覧可能である。
https://multimedia.efsa.europa.eu/dataviz-2020/index.htm

 ヒトの食品・水由来疾患(カンピロバクター症、サルモネラ症、赤痢など)に関する抗生物質耐性データは、ECDCの「感染症サーベイランスアトラス(Surveillance Atlas of Infectious Diseases)」(以下Webページ参照)から入手可能である。
https://atlas.ecdc.europa.eu/public/index.aspx?Dataset=1296


(関連報告書)

・欧州疾病予防管理センター(ECDC)
欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2019〜2020年)
The European Union Summary Report on Antimicrobial Resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2019-2020
29 Mar 2022
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/efs2_7209_Rev2.pdf(ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-summary-report-antimicrobial-resistance-zoonotic-and-indicator-6

・欧州食品安全機関(EFSA)
欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2019〜2020年)
The European Union Summary Report on Antimicrobial Resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2019-2020
EFSA Journal 2022;20(3):7209
Published: 29 March 2022
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2022.7209(EFSA報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7209



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部