ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
https://www.bfr.bund.de/


カンピロバクター感染予防のためのリーフレットを発行
For that fondue meat doesn't make you sick
50/2021, 17.12.2021
https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2021/50/for_that_fondue_meat_doesnt_make_you_sick-291159.html

(食品安全情報2022年8号(2022/04/13)収載)


 生肉、生鮮野菜および種々のソースを同時に調理するミートフォンデュやラクレット料理は、寒い季節に人気がある。しかし、そのまま喫食する(ready-to-eat)食品と生肉に同じ食器や器具を使用すると、生肉に存在する可能性がある病原体が、そのまま喫食する食品に移行する場合がある。食卓や台所で動物由来の生の食品を取り扱う際には、台所の適切な衛生状態を保つべきである。このため、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、カンピロバクターおよびその他の食品由来細菌への感染予防について消費者に助言を提供するリーフレットを発行した。BfRはこのリーフレットで、感染予防への食品衛生管理の必要性を説明している。BfRのHensel所長は、「カンピロバクター感染は、加熱せずに喫食する食品と生肉(特に家禽肉)とを分けて取り扱うことで予防できる。また、台所の適切な衛生管理として、たとえば動物由来の生の食品に触れた後で他の食材を調理する前に、手指、台所用品、台所設備の表面を必ず洗浄することが挙げられる。」と述べている。カンピロバクター症は、ドイツおよび欧州連合(EU)において最も頻繁に報告される食品由来細菌感染症である。ドイツでは2020年に患者46,519人が登録された。特に、小児や若年成人の患者が増えている。感染すると下痢を呈し、重篤な神経疾患や反応性関節炎を発症する場合がある。

 欧州の各当局はカンピロバクター症患者の発生に特に注意しており、EU域内の人獣共通感染症の状況に関する2019年の報告書でも注目している(食品安全情報(微生物)No.7 / 2021(2021.03.31)ECDC/EFSA記事参照)。カンピロバクター症は、欧州およびドイツにおいて長年にわたり最も多く報告されている食品由来細菌感染症である。カンピロバクター症患者数は、2015〜2019年にはあまり変動がなかった。患者は夏季に多く発生し、ドイツでは2019年までと同様に2020年も6〜9月が季節的なピークであった。また、毎年の年始の時期にも患者が短期的に増加する。ロベルト・コッホ研究所(RKI)は、最近の研究で、クリスマス・大晦日後のカンピロバクター腸炎患者の発生と、この時期のミートフォンデュやラクレット料理(特に鶏肉が含まれている場合)の喫食との間に相関関係が認められることを報告した。

 カンピロバクターは、世界各地においてペットや家畜およびその飼育環境に存在しており、家畜が保有しているカンピロバクターは搾乳時やとさつ時に食品に移行することが多い。カンピロバクターは、生の家禽肉から特に高頻度に検出される。また、鶏卵、生乳および生肉製品(例:タルタルステーキ)などの生または加熱不十分な動物由来食品にも存在することがある。衛生管理が不適切な場合には、このような食品に存在しているカンピロバクターが調理中に他の食品に移行し、その食品を喫食することでも感染する可能性がある。カンピロバクターは菌数が非常に少なくてもヒトの腸管感染症の原因となり、その症状は主に腹痛と下痢である。稀ではあるが、合併症として神経疾患(ギラン・バレー症候群など)や反応性関節炎を発症する場合がある。

 カンピロバクターに汚染された食品の喫食を防ぐため、様々な食品の間での交差汚染が台所で起こらないように注意を払うべきである。交差汚染とは、主に生の食品から他の食品に細菌が移行することである。細菌は、未包装の食品から他の食品に直接移行する場合もあれば、手指、台所設備、調理台表面、包丁などの器具を介して間接的に移行する場合もある。たとえば、調理器具や食器を分けて使用しない場合には、未加熱のフォンデュ用肉から加熱済み肉やそのまま喫食可能なサラダなどに細菌が移行する可能性がある。

 カンピロバクターは食品を腐敗させないため、腐敗臭によって汚染を認識することはできない。ほとんどの食品由来細菌と同じようにカンピロバクターも、煮る、炒める、揚げる、焼くなどの加熱調理または殺菌処理によって死滅する。加熱調理で細菌を死滅させるには、食品の中心が70℃に達してから2分以上加熱する必要がある。カンピロバクターは、冷凍では完全には死滅せず、数が減るだけである。

 今回発表されたリーフレット「食品由来のカンピロバクター感染の予防(Protection against foodborne infections with Campylobacter)」は、BfRの以下のWebページからダウンロードおよび冊子体の申し込みが可能で、いずれも無料である。
https://www.bfr.bund.de/cm/350/verbrauchertipps-schutz-vor-lebensmittelbedingten-infektionen-mit-campylobacter.pdf(リーフレットPDF、ドイツ語)

 また、BfRは、台所の衛生管理について2本の動画を公開している。

・鶏肉をどのように取り扱い、調理すべきか(What to do with the chicken)
https://www.bfr.bund.de/en/what_to_do_with_the_chicken_-192793.html

・細菌を追い詰める(Tracking down germs)
https://www.bfr.bund.de/de/dem_keim_auf_der_spur-202987.html


(関連記事)
欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)
欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症に関する One Health の観点からの報告書(2019 年)
The European Union One Health 2019 Zoonoses Report
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/zoonoses-EU-one-health-2019-report.pdf

ロベルト・コッホ研究所(RKI)
クリスマス・大晦日後のカンピロバクター腸炎患者の発生に関するロベルト・コッホ研究所(RKI)の研究結果のプレスリリース(ドイツ語)
RKI-Studie zu Campylobacter-Enteritis-Erkrankungen nach Weihnachten und Silvester
https://www.rki.de/DE/Content/InfAZ/C/Campylobacter/Presseinfo_2021_11_26.htm



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部