世界保健機関(WHO)からのカンピロバクター関連情報
https://www.who.int/en/


国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)第3四半期報告(2020年7〜9月)
INFOSAN Quarterly Summary, 2020 #3, July-September 2020
https://www.who.int/news/item/21-10-2020-infosan-quarterly-summary-2020-3

(食品安全情報2021年4号(2021/02/17)収載)


食品安全事例

 国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局は、2020年の第3四半期に、世界保健機関(WHO)加盟の延べ78カ国および領土5カ所が関連した食品安全事例37件に対応した。このうち生物的ハザード関連の事例は18件で、内訳はサルモネラが10件、リステリア(Listeria monocytogenes)が2件、大腸菌が2件、およびノロウイルス、シュードモナス属菌、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、セレウス菌(Bacillus cereus)、カンピロバクター属菌および腸球菌(Enterococcus faecalis)が各1件であった。また、非表示のアレルゲンは6件(ピーナッツ2件、乳2件、卵1件、大豆1件、クルミ1件、ヘーゼルナッツ1件)、物理的ハザードは5件(プラスチック2件、ガラス2件、異物1件)、化学的ハザードは5件(ヒスタミン3件、クレンブテロール1件、フィトヘマグルチニン1件)、および詳細不明のハザードは3件であった。

 これら37件に関連した食品カテゴリーは、多い順に、ナッツ・油糧種子(5件)、スナック・デザート・その他の食品(5)、魚・水産食品(4)、食肉・食肉製品(4)、野菜・野菜加工品(4)、乳・乳製品(3)、ハーブ・香辛料・調味料(2)、豆類(2)、複合食品(2)、果物・果物製品(2)、果物・野菜ジュース(1)、乳幼児用食品(1)、卵・卵製品(1)、シリアル・シリアル関連製品(1)であった。

 これらの国際的な食品安全事例が発生した際の情報収集については、INFOSAN事務局は各国のINFOSAN緊急連絡窓口(ECP:Emergency Contact Point)による迅速な対応に依存している。INFOSANを介した迅速な情報共有により、加盟各国は自国での患者発生を防止するための適切なリスク管理対策を実施することが可能となる。


地理的側面

 上記の食品安全事例には、WHOが区分しているすべての地域の加盟国および領土が関連しており、関連加盟国数の地域別内訳は、多い順に、欧州(37カ国)、西太平洋(16)、米州(11)、アフリカ(9)、東地中海(9)、南東アジア(1)であった。

〇 米国産の生鮮桃製品に関連して複数国にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイク

 この第3四半期中に、米国産の生鮮桃製品の喫食に関連して米国とカナダ両国にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイクがINFOSAN事務局に報告された。米国では、2020年8月27日までに、アウトブレイク株感染患者が78人報告された。死亡者の報告はなかった。カナダでは、2020年9月2日までに本アウトブレイクに関連して確定患者48人が報告された。死亡者の報告はなかった。調査は現在【2020年10月21日時点】も継続されている。

 当該製品は、米国からオーストラリア、中国、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポールおよび台湾に輸出されていた。また、ニュージーランドにも当該製品が輸出されていたことがニュージーランドのECPを介してINFOSAN事務局に報告され、同国の当局が回収を開始した。当該製品は、ニュージーランドからクック諸島、フランス領ポリネシア、サモアおよびトンガに再輸出されていた。

 本件ではリスク管理対策を円滑に実施するため、当該製品に関する詳細な情報がネットワーク参加国に提供された。輸入国において本アウトブレイク株に感染した可能性のある患者を特定するため、米国のECPとの協力により、アウトブレイク株の全ゲノムシークエンシング(WGS)解析結果の詳細が提供された。当該製品の流通に対応して実施されたリスク管理対策の詳細について、複数の輸入国がINFOSAN事務局と情報を共有した。患者の発生は米国およびカナダのみであり、他の輸入国からINFOSAN事務局に患者の報告はなかった。


ニュースおよびその他の活動

〇 INFOSANで進行中の研究

 INFOSANが現在行っている研究の第二段階の結果が、「Journal of Food Protection」にまもなく発表される予定である。これは、Web上では既に「Exploring the International Food Safety Authorities Network as a Community of Practice: Results from a global survey of network members(実践共同体としての国際食品安全当局ネットワークの役割の調査:ネットワーク加盟国を対象とした国際的な調査の結果)」という標題で発表されている(以下Webページ参照)。
https://meridian.allenpress.com/jfp/article/84/2/262/444322/Exploring-the-International-Food-Safety

これは、世界の食品安全の向上および食品由来疾患の予防のためのネットワーク活動において加盟国がこれまでに行ってきた協力について調べて紹介し、実践共同体としてのINFOSANの役割を検討した初めての研究である。この研究結果により、食品由来疾患の被害を減らして命を救うためにINFOSANは有効で、世界的に活用されていることが示唆されている。また、この結果により、ネットワークをさらに強化して加盟国の参加を支援するための今後の活動について、その優先順位決定に役立つ情報が得られる。第一段階の結果は、以下のWebページで既に発表されている。
https://meridian.allenpress.com/jfp/article/83/11/1889/438401/Looking-Inside-the-International-Food-Safety

第三段階および最終段階の研究は進行中で、その結果はいずれ報告される予定である。また、研究全体の詳細は以下のWebページから入手可能である。
https://bmjopen.bmj.com/content/9/5/e027091



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部