欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ecdc.europa.eu/en
https://www.efsa.europa.eu/en


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症に関するOne Healthの観点からの報告書(2019年)
The European Union One Health 2019 Zoonoses Report
25 February 2021
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/zoonoses-EU-one-health-2019-report.pdf(ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-one-health-2019-zoonoses-report(ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2021.6406(EFSA報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6406(EFSAサイト)

(食品安全情報2021年7号(2021/03/31)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による本報告書は、欧州の36カ国(欧州連合(EU)加盟28カ国、非加盟8カ国)により2019年に実施された人獣共通感染症モニタリングの結果を記載したものである。

 報告患者数が最も多かった人獣共通感染症はカンピロバクター症で、次がサルモネラ症であった。EUにおいてこれら2つの疾患の確定患者数は、2015〜2019年の期間に大きな変動はみられなかった。2019年のEU域内のサルモネラ症患者に占めるSalmonella Enteritidis感染患者の割合は2017〜2018年と同レベルであった。家禽のサルモネラ対策プログラムについて報告している加盟26カ国のうち、2019年は18カ国が汚染率低減目標を達成していたが、8カ国は少なくとも1つの家禽類で目標を達成できていなかった。繁殖鶏、産卵鶏、ブロイラーおよび肥育七面鳥での標的サルモネラ血清型の群汚染率はEUレベルで2015年以降にほぼ一定しているが、繁殖七面鳥では変動がみられる。ブタとたいおよび家禽のサルモネラ汚染について各国当局が国内管理プログラムにより行った検査の結果は、食品事業者による検査結果より陽性率が高い傾向にあった。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)は患者数が3番目に多く、2015年から2019年にかけて増加した。エルシニア症患者数は4番目に多く、2015〜2019年に大きく変動していない。リステリア症の確定患者数は長期間にわたって増加が続いた後、2015〜2019年には大きな変化がみられない。リステリアは、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品でEU食品安全基準を超えることがほとんどなかった。食品由来アウトブレイクは計5,175件が報告された。病因物質としてはサルモネラが依然として最も多く検出されたが、S. Enteritidisによるアウトブレイク件数は減少した。原因食品を示す強固なエビデンスがあるアウトブレイクのうち、「病因物質 - 食品」の組み合わせでは「ノロウイルス - 魚・魚製品」によるものが最も多かった。

 本報告書には、ウシ結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、ウエストナイル熱、Q熱、および野兎病についても最新情報が記載されている。

2019年の人獣共通感染症の概要

 本報告書に示された13種類の人獣共通感染症の確定患者数のデータが図にまとめられている。2019年に報告された人獣共通感染症では、カンピロバクター症が最も多く報告され、全報告患者の50%を占めていた。2005年以降、カンピロバクター症は毎年最も多く報告されている人獣共通感染症である。カンピロバクター症に続き、サルモネラ症、STEC感染症、エルシニア症などの細菌性疾患が高頻度に報告された。各疾患の重症度について、報告患者の入院率および転帰にもとづく分析が行われた(表)。入院率および致死率の高さから、リステリア症およびウエストナイル熱が最も重症度の高い人獣共通感染症であった。入院の有無に関する情報が得られた両疾患の確定患者のほぼ全員が入院していた。当該情報が得られた確定患者のうち、リステリア症患者の約5人に1人およびウエストナイル熱患者の約10人に1人が死亡した。

図:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2019年)

注)各棒グラフ右側のカッコ内の数値は確定患者数
1 例外としてウエストナイル熱については確定患者ではなく全患者の報告数


表:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2019年)

(a) ウエストナイル熱については確定患者ではなく全患者の報告数
(b) すべてのEU加盟国がすべての人獣共通感染症の入院患者数・死亡者数を報告したわけではない
(c) NAは当該の情報が収集されなかったことを示す


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25 Feb 2021
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/campylobacter-and-salmonella-cases-stable-eu



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部