欧州疾病予防管理センター(ECDC)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ecdc.europa.eu/en


基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)・プラスミド性AmpC型βラクタマーゼ・カルバペネマーゼ産生性サルモネラの抗菌剤感受性試験および検出に関する第4回外部精度評価(2018年)
Fourth external quality assessment on antimicrobial susceptibility testing and detection of ESBL-, acquired AmpC-, and carbapenemase-production of Salmonella, 2018
21 May 2021
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/Fourth-EQA-antimicriobal-susc-salmonella%202018.pdf(報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/fourth-external-quality-assessment-antimicrobial-susceptibility-testing-salmonella

(食品安全情報2021年24号(2021/11/24)収載)


報告書概要

 2008年以降、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟国は、サルモネラ症およびカンピロバクター症の通常サーベイランスの一環として欧州サーベイランスシステム(TESSy)に抗菌剤耐性(AMR)データを報告している。2014年、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、サルモネラおよびカンピロバクターの臨床分離株のAMRに関するEU統一モニタリングのプロトコルを発表した(2016年に更新)。また、ECDCは、EU/EEA加盟国によるEUプロトコル実施の支援およびECDCに報告されるAMRデータの精度の把握を目的として、サルモネラおよびカンピロバクターの抗菌剤感受性試験(AST:antimicrobial susceptibility testing)に関する外部精度評価(EQA:external quality assessment)プログラムを開始した。

 食品・水由来疾患および人獣共通感染症に関するネットワーク(FWD-Net)に参加している各国の公衆衛生検査機関が行うサルモネラのASTについて、今回、第4回外部精度評価が実施され、本報告書はその結果をまとめたものである。この評価の目的は以下の通りである。

  • 参加機関から報告される定量的AST結果の精度の評価
  • EUプロトコルの指針に関して検査機関に共通する問題の特定
  • 欧州各国の国立公衆衛生リファレンス検査機関(NPHRL:National Public Health Reference Laboratory)から規定により収集されるASTデータの全体での比較可能性の評価
 さらに外部精度評価のもう1つの目的として、表現型解析用のEUプロトコルおよび各検査機関内で使用されている遺伝子型解析法に従って、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)、プラスミド性AmpC(pAmpC)型βラクタマーゼおよびカルバペネマーゼの表現型と遺伝子型を特定する能力を評価することが挙げられる。

 今回の外部精度評価は、EU/EEA域内各国のNPHRLの25機関が参加して2018年3〜12月に行われた。EU加盟候補国および潜在的EU加盟候補国(拡大的解釈でのEU加盟国)の6か国も参加した。本報告書では、EU/EEA加盟国の結果および評価のみを収載している。

 今回の外部精度評価用テスト株として、欧州において現時点で公衆衛生上重要な株から8種類のサルモネラ株が選定された。外部精度評価では、アンピシリン、ペフロキサシン(ディスク拡散法(DD)の場合)/シプロフロキサシン(希釈法の場合)、セフォタキシムおよびテトラサイクリンの4種類の抗菌剤に関する試験と報告が求められた。また、EU統一プロトコルの対象であるすべての抗菌剤について試験結果を提出することも可能とされた。1検査機関が参加要件を満たさなかった。

 全体的にみて、外部精度評価主催者が正解として期待した結果と参加検査機関の報告結果は概ね一致した。試験を行ったすべての抗菌剤について、相対精度(正解として期待される許容範囲内に入るDDおよび最小発育阻止濃度(MIC)の結果の割合)は、DDでは86%(1,248/1,457)、濃度勾配ストリップによるMICでは83%(176/212)および微量液体希釈法では94%(1,073/1,145)であった。

 試験が義務付けられている抗菌剤について、DDの結果の96%(453/472)およびMICの結果の91%(353/386)が正しく、正解として期待される結果に一致していた。試験が義務付けられている抗菌剤について、MICで誤った結果が出た場合の多くが、濃度勾配ストリップによるシプロフロキサシンの試験であった。MICは正解として期待される濃度より低濃度であったが、欧州抗菌剤感受性試験検討委員会(EUCAST:European committee on Antimicrobial Susceptibility Test)による疫学的カットオフ(ECOFF)値で評価すると正解であった。任意追加実施の抗菌剤については、DDが81%(795/985)、MICが92%(896/971)で、正解として期待される結果に一致していた。報告された定量的結果をECOFF値で解釈すると、DDおよびMIC両方の結果の98%以上が正解であった。

 参加した25機関のうち23機関が、ESBL・プラスミド性AmpC・カルバペネマーゼ産生について、テスト株の表現型解析結果を計131件報告した。2件以外がすべて正解であった。22機関がカルバペネマーゼ産生性テスト株の遺伝子型解析結果を、12機関がESBLおよびプラスミド性AmpC産生性テスト株の一部またはすべての結果を報告した。総じて、検査機関はテスト株を遺伝子型CTX-M、OXA-48およびCMY-2に正しく分類することができ、部分塩基配列解析または全ゲノムシークエンシング(WGS)解析を行った検査機関は正しい遺伝子型を回答した。4検査機関がWGS法による遺伝子型解析結果を報告し、その結果はすべて正しかった。

 EU統一ASTプロトコルの指針に関連して検査機関に共通する問題はみられなかった。しかし、一部の検査機関はプロトコルを完全には守らず、EUCASTのECOFF値および臨床ブレイクポイント値の両方をカバーする推奨事項と異なる範囲の濃度を使用しており、その他にも、EUCAST推奨とは異なる薬剤含有ディスクを使用した検査機関があった(報告書では、後者の検査機関の結果は除外した)。

 TESSyの一環として実施されるサーベイランスシステムは、FWD-Netの検査機関が比較可能なAST結果を生み出す解析能力に依存する。今回のサルモネラに関する外部精度評価の結果全体は、ECOFF値を適用した場合には欧州のNPHRLのAST結果を比較することが可能であることを示した。しかし、一部の検査機関には改善の必要性が認められた。今回の外部精度評価の結果は、多くの検査機関がESBL・プラスミド性AmpC・カルバペネマーゼ産生性サルモネラ株の表現型および遺伝子型を正しく特定する能力を有していることを示した。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部