デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ssi.dk


デンマークの人獣共通腸管感染症(2011年)
Zoonotic intestinal infections 2011
EPI-NEWS, No 13 - 2012
11 April (28 March) 2012
https://en.ssi.dk/news/epi-news/2012/no-13---2012

(食品安全情報2012年10号(2012/05/16)収載)


全体の概要

 デンマークで2011年に報告されたサルモネラ症患者数は1,167人(人口10万人あたり21人)で、2010年の1,600人より減少した(図)。患者数の最も多い血清型はSalmonella EnteritidisおよびS. Typhimuriumであった(表1)。この2つの血清型の患者数は、2010年と比較してそれぞれ24%および53%減少した。その他の血清型(99種類の血清型を含む)の合計患者数は628人で2010年の691人より9%減少した。単相性のS. Typhimuriumとは抗原型1,4,[5],12:i:-を有するサルモネラ株である。

 2011年のカンピロバクター(Campylobacter jejunicoli)症患者数は4,068人(10万人あたり73人)で、2010年とほぼ同数であった(図)。

 エルシニア(Yersinia enterocolitica)症患者数は224人(10万人あたり4.0人)で、2010年より16%増加した(図)。

図:サルモネラ、カンピロバクター、エルシニア(Yersinia enterocolitica)およびVTEC感染の報告患者数(デンマーク、1980〜2011年)

表1:血清型別のサルモネラ症患者数(デンマーク、2011年)


 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染症患者数は224人(10万人あたり4.0人)で、2010年から21%増加した。このうち、臨床届出システムおよび検査機関届出システムを介して報告された患者数はそれぞれ169人、215人であった。患者207人からVTEC分離株が得られ、最も多い血清群はO157およびO104で、患者数はそれぞれ27人(13%)および25人(12%)であった。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)患者は13人で、このうち10人のVTEC感染が確認された。 

 各疾患について年齢層別の罹患率を表2に示す。

表2:人獣共通腸管感染症の年齢層別の人口10万人あたりの罹患率(デンマーク、2011年)


国外感染

 デンマーク国立血清学研究所(SSI)は、OdenseおよびAalborgの臨床微生物検査機関を介して報告された全てのサルモネラ症患者およびカンピロバクター症患者に電話で聞き取り調査を行い、発症前7日間の国外旅行の有無および発症日について質問した。サルモネラ症患者の79%およびカンピロバクター症患者の74%から情報が得られた。その結果、カンピロバクター症患者の32%、S. Enteritidis患者の71%、S. Typhimurium患者の20%、単相性S. Typhimurium患者の35%、サルモネラのその他の血清型の患者の49%が国外で感染していた。感染した国は、サルモネラについてはほとんどがタイで、次いでトルコおよびエジプトであった。カンピロバクターではトルコが一番多く、次いでスペインおよびタイであった。


考察

 サルモネラ症患者数は減少傾向が続いており、2011年の罹患率は広範な流行が始まる前の1980年代初期のレベルに戻った。患者の約半数は国外感染で、2011年の全国規模のサルモネラアウトブレイクは2件のみであった。S. Typhimuriumのアウトブレイクでは豚肉テンダーロインの燻製が、S. Strathconaのアウトブレイクでは輸入トマトが感染源であった。

 これに対し、カンピロバクター症患者数は依然として多く、患者数はサルモネラ症の約3倍である。主要な感染源は鶏肉で、患者の約1/3が国外感染である。

 2011年はVTEC患者数およびVTECに関連するHUS患者数が増えたが、これは春季に北ドイツで発生したVTEC O104大規模アウトブレイクに主に関連している。このアウトブレイクは、ドイツの単一の業者が栽培した生鮮フェヌグリーク発芽野菜が感染源であったことが判明している。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部