(食品安全情報2012年16号(2012/08/08)収載)
集約型畜産農場の近隣住民において、動物からヒトへ伝播する人獣共通感染性疾患への罹患リスクの上昇は、現時点では確実には特定されていない。これは、農場からの距離、農場の種類および経営規模に関連した罹患リスクについてデータが十分に得られていないためである。近隣住民で罹患リスクの上昇が強く示されている唯一の疾患はQ熱である。畜産農家やその従業員は一部の人獣共通感染性疾患への罹患リスクが高いことも知られている。この場合、多くは家畜との直接接触がリスク因子となっている。
6種類の人獣共通感染性疾患に関する調査
オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、オランダ地方自治体公衆衛生局(GGD:Dutch Municipal Public Health Services)の要請で文献調査を行い、上述の結論を得た。RIVMはGGDから、2008年に出された1〜2 kmという安全距離の推奨の背景を明確にするよう依頼された。この推奨は農場間の距離に関するものと判断され、鳥インフルエンザなどの動物疾患の抑制を目的としたものである。今回RIVMは、鳥インフルエンザ、Q熱、オウム病、カンピロバクター症、家畜関連MRSA、および基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌の計6種類の人獣共通感染性疾患に関するデータを分析し、これらが畜産農場の近隣住民にリスクを及ぼすか否かを調べた結果を報告書(オランダ語)として発表した。