欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.efsa.europa.eu/en


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2009年版および2010年版)についてのレビュー(科学的意見):特にサルモネラ、カンピロバクター、ベロ毒素産生性大腸菌、リステリア(Listeria monocytogenes)および食品由来アウトブレイクのデータについて
Scientific Opinion on a review on the European Union Summary Reports on trends and sources of zoonoses, zoonotic agents and food-borne outbreaks in 2009 and 2010 - specifically for the data on Salmonella, Campylobacter, verotoxigenic Escherichia coli, Listeria monocytogenes and foodborne outbreaks
EFSA Journal 2012;10(6):2726
Published: 14 June 2012, Adopted: 24 May 2012
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2012.2726(報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2726

(食品安全情報2012年13号(2012/06/27)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)は、生物学的ハザード(BIOHAZ)パネルに対し、「欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書」(2009年版および2010年版)についてレビュー(科学的意見)を要請した。報告書中の、サルモネラ、カンピロバクター、ベロ毒素産生性大腸菌、リステリア(Listeria monocytogenes)および食品由来アウトブレイクのデータがレビューの対象であった。

 検査方法、サンプリング制度、および報告システムがEU加盟国(MS)ごとに異なり、MS間での比較が困難であるため、MS間で統一されるべきである。

 ヒト患者に関するデータは、欧州サーベイランスシステム(TESSy)を通じて、MSの27カ国および欧州経済領域(EEA)/ 欧州自由貿易連合(EFTA)加盟の3カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)より欧州疾病予防管理センター(ECDC)に報告された。スイスは直接EFSAにヒト患者に関するデータを報告した。報告データの完全性はMSおよび病原体ごとに異なっていた。

 ECDCに報告されたデータは、未報告率(underreporting)や未検査率(under-ascertainment)を考慮していないため、EUの正確な疫学的状況を示していなかった。報告患者数の実際の患者数に対する割合はMSおよび病原体ごとに大きく異なるため、これらの間での患者数の比較は極めて複雑なものになる。これらの制約はリスク評価や感染源調査の精度に影響を及ぼし、また各種対策の費用対効果比の不適切な推定の原因ともなっている。

 罹患率のデータのみでは人獣共通感染症による公衆衛生上の被害の全体像を明らかにすることはできず、致死率のデータにより別の視点からの重要な知見を得ることができる。究極的には、障害調整生存年(DALY)や疾病コスト(cost-of-illness)推定などの公衆衛生に関する要約尺度で示されるべきである。

 報告患者数の経年傾向は、疾病罹患率の変化、従って疾病管理プログラムの成否の評価に手掛かりを与えると考えられる。しかしサーベイランスシステムの検出感度が長年にわたり変化しないという仮定を支持するエビデンスは得られていない。リスク因子に関する情報の欠如も食品安全プログラムが公衆衛生に及ぼす効果の評価の妨げとなっている。

 旅行に関するデータは、依然として多くのMSで不完全である。このため、多くの病原体で感染源推定が困難になっている。EU域内の食品および動物由来の感染源の公衆衛生上の問題をさらに深く理解するためには、EU域内での旅行とEU域外への旅行とを区別することが望ましい。このことは、EU規模の食品安全対策が公衆衛生にもたらす効果をより正確に評価することにも役立つ。

 データや結果は、可能な限り、適切な統計手法を用いて解析すべきである。このような解析が不可能な場合は、報告書中では単にデータを示すのみにとどめて、データのパターンや傾向を示唆することは避けるべきである。関連したこととして、「そのまま喫食可能な(RTE)七面鳥肉に“のみ”汚染」や「RTE牛肉での“極めて低い”レベルの汚染」といった時の「〜のみ(only)」および「極めて低い(very low)」という語句の使用の問題がある。これらの語句は汚染レベルの容認を示唆しており、これは報告書の目的からはずれている。対前年などの傾向比較の際に「より低い」または「より高い」のような表現を使用することは、統計解析による裏付けがあれば、適切であると考えられる。

 MSが示す経年傾向を相互に比較する場合は、結果の解釈を誤らないよう、サンプル数、サンプルの重み、方法論などの違いの影響を検討すべきである。MSがサンプルの単位や数を特定していない追加データを提出した場合、それらは報告書の付属文書(annex)に収載可能としている。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部