欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.efsa.europa.eu/en


2004〜2009年の欧州連合(EU)域内の食品の微生物汚染
Microbiological contaminants in food in the European Union in 2004-2009
Published: 31 May 2012
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/sp.efsa.2012.EN-249(報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-249

(食品安全情報2012年12号(2012/06/13)収載)


 2004〜2009年の間、欧州連合(EU)加盟国および非加盟のノルウェー、スイスは、人獣共通感染微生物(サルモネラ、カンピロバクター、リステリア、エルシニア、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)、ブルセラ菌)および非人獣共通感染微生物・毒素(ヒスタミン、EnterobacterCronobactersakazakii、ブドウ球菌エンテロトキシン)による食品汚染に関して、データを欧州食品安全機関(EFSA)の人獣共通感染症データベースに報告した。

 本報告書は、複数年にわたって実施されたサンプリング活動、上記報告データの質、および国内生産の食品への微生物汚染の状況の詳細な分析について記載するものである。2004〜2009年にかけて、EU加盟国から550万検体以上、および非加盟国から20万検体以上の様々な食品検体の検査結果が報告された。

 いくつかの種類の食品では、食品生産チェーンの各段階を経るに従って微生物による汚染率が上昇しており、これより製造過程での交差汚染または品質保持期間(shelf-life)中の微生物の増殖が示唆された。一方、他の食品では、食品生産チェーンの各段階を経るに従って微生物による汚染率が低下していた。これは、微生物数を低減させる加熱処理などの工程によるものと考えられ、そのまま喫食可能な食品(RTE food)はそれ以外の食品(non-RTE food)と比べてほとんどの場合サルモネラ汚染率が低いという例で説明される。

 サルモネラについては、大量の報告データにもかかわらず、明確な時間的傾向はほとんど示されなかった。2008および2009年には、小売りレベルで検査された肉製品のサルモネラ陽性率が、1.3%を超えていたそれまでの年と比べて低レベルの約1%に落ち着いたようにみえた。これは、2006年に施行された微生物基準の効果とも考えられた。しかし、家禽、ブタ、ウシなどの肉および卵はEU全域で広く喫食されているため、これらの食品へのサルモネラの持続的な汚染はヒトのサルモネラへの暴露に大きく寄与すると推定された。

 サルモネラに関する食品安全基準の遵守率が最も低かったのは、加熱用の家禽ひき肉・加工肉であった。一方、2006〜2009年の間、加熱用の家禽のひき肉、加工肉および肉製品で食品安全基準を遵守する検体の数が増加した(バッチ単位のデータ)。同期間にその他の食品カテゴリーでは明らかな時間的傾向は見られなかった。

 カンピロバクターについては、全ての年で家禽肉の陽性率が豚肉・牛肉より高かった。non-RTE食品に比べRTE食品の方が概して報告データが少なかった。RTE食品では、カンピロバクター汚染の報告は少なく陽性率も低かった。

 リステリア(Listeria monocytogenes)については多数のデータが加盟国から報告され、特に小売りレベルのデータが多かった。検体の大部分は様々なタイプのRTE肉製品から採集されていた。リステリアは豚肉・家禽肉製品より牛肉製品からの方がより高頻度に検出された。

 リステリアに関する食品安全基準の遵守率が最も低かった食品カテゴリーは、水産製品、ソフトチーズおよび肉製品であった。同様に、加工段階で検査された「その他のRTE食品」も遵守率が比較的低かった。2006〜2009年の間、加工・小売段階で検査された魚・水産製品および加工段階で検査されたソフトチーズで安全基準非遵守の検体の数が減少した。

 エルシニアに関するデータは豚肉で最も多く報告された。Yersinia enterocoliticaを対象としたデータは非常に少なく、そのようなデータのほとんどは小売りレベルのnon-RTE豚肉・牛肉についてであった。ヒトへの病原性を有するバイオタイプの存在を調べた調査はごくわずかであった。

 VTECは数種類の食品から報告されたが、全体としては、VTEC、特にVTEC O157の陽性率は低かった。血清群に関するデータは少なかったが、ヒト病原性の点で最も重要である6血清群のうち5血清群(O26、O91、O103、O111、O157)のVTECが報告された。果物・野菜のVTEC汚染に関するデータは非常に限定的であったが、いくつかの調査結果は、野菜がVTEC O157のヒトへの感染源であることを示した。

 Enterobacter sakazakiiについては、乳児用調製粉乳および6カ月未満の乳児の特定の医療目的の乾燥健康食品(dried dietary food)から得られたデータが大部分であった。加盟数カ国はこれらの製品での陽性例を報告した。これは微生物基準非遵守に相当する。

 ブドウ球菌エンテロトキシンの陽性例は、乳、チーズおよびその他の乳製品検体で報告された。チーズ、粉乳およびホエイ粉末検体での陽性例は微生物基準非遵守に相当する。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部