欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
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欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2010年)
The European Union Summary Report on antimicrobial resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2010
EFSA Journal 2012;10(3):2598 [233 pp.].
Approved: 21 February 2012
Published: 14 March 2012
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/media/en/publications/Publications/1203-SUR-ECDC-EFSA-report-antimicrobial-resistance.pdf(ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-summary-report-antimicrobial-resistance-zoonotic-and-indicator-0(ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2012.2598(EFSA報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2598(EFSAサイト)

(食品安全情報2012年7号(2012/04/04)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、英国動物衛生獣医学研究所(AHVLA)の支援のもとに、欧州連合(EU)加盟26カ国から提出された2010年の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関するデータを解析し、その結果を年次要約報告書として発表した。非加盟の欧州3カ国からもデータが提出された。報告されたデータは、ヒト患者・食品・動物由来のサルモネラ/カンピロバクター分離株、および動物・食品由来の指標大腸菌/指標腸球菌分離株の抗菌剤耐性に関するものであった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出状況についてもいくつかデータが報告された。ヒト患者由来分離株の抗菌剤耐性の判定には主に臨床ブレイクポイント値(clinical breakpoints)が用いられ、一方、食品および動物由来分離株の抗菌剤耐性に関する定量的データは、EU共通の疫学的カットオフ値(epidemiological cut-off values、抗菌剤耐性を微生物学的に定義)を用いて耐性が評価された。疫学的カットオフ値は、抗菌剤に感受性のある野生型の細菌集団と、特定の抗菌剤に対して感受性が低下している非野生型の細菌集団とを判別する。これにより、耐性の出現を早期に検出することが可能となる。しかし、臨床ブレイクポイント値と疫学的カットオフ値という異なる閾値を使用すると、多くの場合、ヒト由来分離株と動物・食品由来分離株の耐性データを直接比較できなくなる。

 EU域内において、ヒト患者由来のサルモネラ分離株では、アンピシリン、テトラサイクリンおよびスルホンアミドに対する耐性率が高く、一方、ヒトの治療用として極めて重要な抗菌剤であるセフォタキシム(第三世代セファロスポリン系)およびシプロフロキサシン(フルオロキノロン系)に対する耐性率は比較的低かった。耐性の判定に疫学的カットオフ値を用いた国では、臨床ブレイクポイント値を用いた国に比べこれら2種類の抗菌剤への耐性率がより高かった。ヒト患者由来のカンピロバクター分離株では、アンピシリン、シプロフロキサシン、ナリジクス酸およびテトラサイクリンに対する耐性率が高く、臨床的に最も重要な抗菌剤であるエリスロマイシンに対する耐性率は比較的低かった。

 EU域内の動物および食品由来のサルモネラ、カンピロバクター、指標大腸菌、指標腸球菌分離株には抗菌剤耐性が広く認められた。サルモネラ、カンピロバクター、指標大腸菌分離株ではシプロフロキサシンに対する高い耐性率が認められ、懸念すべき問題となっている。食品および動物由来分離株のシプロフロキサシンに対する耐性率は七面鳥由来サルモネラ分離株で28%と最も高く、家禽(ニワトリ)およびブロイラー肉由来の株では24%であった。指標大腸菌分離株のシプロフロキサシン耐性率はニワトリ由来株(29%)で高く、ブタ由来株(2%)では低かった。また、カンピロバクター分離株では、ブタおよびウシ由来株だけでなくニワトリ由来株でもシプロフロキサシン耐性が広くみられ、これらの株の耐性率は37〜84 %であった。

 第三世代セファロスポリンへの耐性は、ニワトリ、ブタおよびウシ由来のサルモネラ分離株と指標大腸菌分離株、ブロイラー肉およびブタ肉由来のサルモネラ分離株で、極めて低レベルまたは低レベルで認められた(耐性率は0.2〜7 %)。ニワトリ、家禽肉およびブタ由来のカンピロバクター分離株では、0.5〜25 %がエリスロマイシン耐性を示した。

 アンピシリン、スルホンアミドおよびテトラサイクリンに対する耐性は、食肉および動物由来サルモネラ分離株の13〜75 %で報告され、ニワトリ由来株より七面鳥、ブタおよびウシ由来株で高かった。シプロフロキサシンおよびナリジクス酸への耐性は、七面鳥、ニワトリおよびブロイラー肉由来のサルモネラ分離株でより高かった。

 食肉および動物由来のカンピロバクター分離株ではシプロフロキサシン、ナリジクス酸およびテトラサイクリンへの耐性が広範に認められたが(耐性率は21〜84 %)、エリスロマイシンおよびゲンタマイシンに対する耐性は概してかなり低レベルであった。

 動物由来指標大腸菌では、アンピシリン、スルホンアミドおよびテトラサイクリンへの耐性が広く認められ、これらの耐性率は21〜48 %であった。シプロフロキサシンおよびナリジクス酸への耐性はニワトリ由来分離株で最も高かった。指標腸球菌については、ニワトリ、ブタおよびウシ由来分離株でエリスロマイシンおよびテトラサイクリンへの耐性が広く認められ(耐性率は13〜71 %)、このうち耐性率が最も低かったのはウシ由来株であった。バンコマイシン耐性は動物由来の腸球菌分離株で引き続き認められたが、耐性率は非常に低レベルもしくは低レベル(0.3〜0.9 %)であった。

 2010年は、各食品および動物検体の0〜79 %でMRSAの検出が報告され、最も検出率が高かったのは七面鳥および七面鳥肉であった。これらのMRSA分離株は、繁殖ブタに関するEU全域のベースライン調査において以前に検出されたことがあるクローン集団(clonal complex)398のspa(staphylococcal protein A)タイプを示した。


(関連記事)
欧州食品安全機関(EFSA)
EFSA and ECDC joint report on antimicrobial resistance in zoonotic bacteria affecting humans, animals and food
14 March 2012
https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/120314

欧州疾病予防管理センター(ECDC)
ECDC and EFSA release joint annual report on antimicrobial resistance in zoonotic bacteria affecting humans, animals and food
14 Mar 2012
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/Lists/News/ECDC_DispForm.aspx?List=32e43ee8%2De230%2D4424%2Da783%2D85742124029a&ID=581&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部