欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
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欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2010年)
The European Union Summary Report on Trends and Sources of Zoonoses, Zoonotic Agents and Food-borne Outbreaks in 2010
EFSA Journal 2012; 10(3):2597
Published: 08 March 2012
Approved: 21 February 2012
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/media/en/publications/Publications/1203-ECDC-EFSA-zoonoses-food-borne-report.pdf(ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-summary-report-trends-and-sources-zoonoses-zoonotic-agents-and(ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2012.2597(EFSA報告書PDF)
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2597(EFSAサイト)

(食品安全情報2012年6号(2012/03/21)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州連合(EU)加盟国から提出された2010年の人獣共通感染症、その病原体、および食品由来アウトブレイクの発生に関するデータを解析し、年次要約報告書として発表した。その要旨の一部を紹介する。

 2010年は、EU加盟27カ国から欧州委員会(EC)およびEFSAにデータが提出され、また人獣共通感染症のヒト患者に関するデータがECDCから提供された。さらに、非加盟の欧州4カ国からもデータの提供があった。本報告書には15種類の人獣共通感染症に関するデータが収載されている。

 サルモネラ症は、2010年は2009年と比較して患者数が8.8 %減少し、EU域内では6年連続して統計学的に有意な減少傾向となっている。2010年に報告された確定患者数は全部で99,020人であった。サルモネラ症患者数の減少は、家禽群におけるサルモネラ管理プログラムの成功が主な要因であると考えられる。ほとんどの加盟国で家禽のサルモネラ低減目標値が達成され、家禽群のサルモネラ汚染は減少しつつある。食品では、ブロイラーおよび七面鳥の生鮮肉で最も頻繁にサルモネラが検出された。EUのサルモネラ基準を満たしていない食品は、生きた二枚貝の他にひき肉および加工肉(meat preparations)に多かった。

 カンピロバクター症は、2009年と比較して2010年はEU域内の届出率が上昇し、確定患者数が増加した。カンピロバクター症は、EU域内で2006年以降、5年連続で患者数の有意な増加傾向を示しており、2010年の確定患者数は212,064人で、引き続き最も報告患者数の多い人獣共通感染症であった。カンピロバクター陽性の食品検体および動物検体の割合は前年までとほぼ同レベルであり、EU全体ではブロイラー肉のカンピロバクター汚染率が依然として高かった。

 リステリア症は、2010年に患者数がわずかに減少し、報告された確定患者数は1,601人であった。患者の致死率は前年までと同様に高く17%であった。小売りレベルのそのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品からは、法的な安全基準を超える菌数のリステリア(Listeria monocytogenes)はほとんど検出されなかった。種々の食品のリステリア汚染レベルに2009年と比べて大きな変化は見られなかった。

 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染では、全部で4,000人の確定患者が2010年に報告され、そのほとんどがO157血清群によるものであった。EU域内で報告されるVTEC患者数は2008年以降増加が続いている。動物および食品でVTEC陽性であったのは、大部分がウシおよび牛肉であったが、その他の動物種や食品からもVTECが検出された。

 エルシニア症は、2009年以前の数年間、報告患者数が減少しており、2010年はEU全体で6,776人の確定患者が報告された。Yersinia enterocoliticaは主にブタおよび豚肉から検出されたが、その他の食品や動物種からも検出された。

 人獣共通感染寄生虫症では、2010年にEU全体でトリヒナ症確定患者223人およびエキノコックス症確定患者750人が報告された。前年までと比較すると、EU全体のトリヒナ症患者数は大幅に減少した。また、ブタでのトリヒナ検出報告数も前年より減少した。トリヒナの感染率は野生動物の方が高かった。エキノコックス症患者数は2010年にわずかに減少した。加盟数カ国で家畜からのエキノコックス属の検出が報告され、Echinococcus multilocularisが中欧の複数の加盟国でキツネから頻繁に検出された。

 食品由来アウトブレイクは、2010年にEU域内で計5,262件報告され、患者数は43,473人、入院患者数は4,695人、死亡者数は25人であった。報告されたアウトブレイクの大多数はサルモネラ、ウイルス、カンピロバクターおよび細菌毒素が原因で発生していた。感染源となった食品では、卵・卵製品、複合食品またはビュッフェ料理、および野菜・野菜製品が最も多かった。野菜・野菜製品によって発生したアウトブレイクの件数は前年までと比べて増加した。また、2010年は私有および公共の水源の汚染に関連した水由来アウトブレイクが14件報告された。


(関連記事)
欧州食品安全機関(EFSA)
EFSA and ECDC zoonoses report: Salmonella in humans continues to decrease, Campylobacter increasing
8 March 2012
https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/120308

欧州疾病予防管理センター(ECDC)
ECDC and EFSA publish their annual joint report on zoonoses and food-borne outbreaks in EU
08 Mar 2012
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/Lists/News/ECDC_DispForm.aspx?List=32e43ee8%2De230%2D4424%2Da783%2D85742124029a&ID=576&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部