新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインについて


医薬品の製造(輸入)承認申請に際して検討される医薬品中の不純物の規格及び試験方法上の取扱いに関し、新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関する取扱いについては、平成7年9月25日薬審第877号審査課長通知(以下「原薬不純物通知」という。)により通知されているところであるが、新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関する取扱いについては、下記により取り扱うこととしたので、御了知の上、貴管下関係業者に対し周知徹底方御配慮願いたい。
 

 
  1. 別紙の「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」は、日米EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)の 課題の1つとして検討されたものであること。

  2. 本ガイドラインは、平成6年9月1日薬審第586号審査課長通知「新医薬品の規格及び試験方法の設定に関するガイドラインについて」(以下「規格試 験通知」という。)の別添の4(9)純度試験及び同別紙「新医薬品の承認申請に際して添付すべき資料のうち区分ロ(構造決定、物理的化学的性質並びに規格及び試験方法等に関する資料)の資料の作成に関するガイドライン」の2(3)の3)E純度試験を補完するものであること。

  3. 本ガイドラインの適用対象は、平成11年4月1日以降に承認申請される新有効成分含有医薬品のうち製剤であること。

  4. 通知の改正
  (1) 原薬不純物通知 記の1中「物理化学的」を「物理的化学的」に改め、記の4を削り、記の2を次のように改める。
2 平成9年4月1日以降に申請される新有効成分含有医薬品のうち原薬については、別添「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン」に基づいた資料を添付されたい。
  (2) 規格試験通知 記中ただし書を次のように改める。  ただし、別添「新医薬品の規格及び試験方法の設定に関するガイドライン」の4(9)純度試験及び別紙「新医薬品の承認申請に際して添付すべき資料のうち区分ロ(構造決定、物理的化学的性質並びに規格及び試験方法等に関する資料)の資料の作成に関するガイドライン」の2(2)の11)類縁物質及び2(3)の3)E純度試験に係る取扱いに関しては、原薬の場合は平成9年3月31日までに、製剤の場合は平成11年3月31日までに承認申請されるものについては、従前の例によることができるものであること。
別紙
新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン

1 はじめに
 (1) ガイドラインの目的  本ガイドラインは、新有効成分含有医薬品のうち、化学的合成法により製造される原薬(以下「新原薬」という。)を用いて製造される製剤(以下新製剤」という。)中の不純物の量及びその安全性の確認に関する承認申請に際しての指針を示している。  (2) 背景
 本ガイドラインは、「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン(原薬不純物通知)」の追補に相当するものであり、基本的な考え方に関しては原薬不純物通知のガイドラインを参照すること。  (3) ガイドラインの適用範囲  本ガイドラインは、製剤中の不純物のうち有効成分の分解生成物又は有効成分と医薬品添加物若しくは直接容器/施栓との反応による生成物(以下、両者をあわせて「分解生成物」という。)のみを対象としている。医薬品添加物由来の不純物は、製剤中に含まれていても本ガイドラインの対象とはしない。また、本ガイドラインは、臨床試験段階で使用する製剤の規制に適用することを意図したものではない。生物学的製剤、バイオテクノロジー応用医薬品、ペプチド、オリゴヌクレオチド、放射性医薬品、醗酵生成物、醗酵生成物を原料とした半合成医薬品、生薬及び動植物抽出物も対象としていない。更に、製剤中に本来含まれるはずのない外部からの混入物質でGMPの問題として扱う方がより適切なもの、固体状態において現れる性質の一つである結晶多形及び原薬の対掌体(エナンチオマー)である不純物も本ガイドラインの対象としていない。新原薬に由来する不純物については、その不純物が分解生成物でなければ対象とする必要はない。
2 分析法
用いた分析法がバリデートされたものであり、分解生成物の検出や定量に適切であることを示すデータを承認申請用の添付資料(以下「添付資料」という。)に記載する。分析法のバリデーションにおいては、新原薬由来の不純物が、製剤中の分解生成物の分析を、個別に規格が設定されるもの及び個別には規格が設定されないもののいずれについても妨害しないこと、また、これらの分解生成物から分離され得ることを示す。
 分解生成物の含量は、種々の方法で測定することができるが、その一つとして、ある分析法における分解生成物のレスポンスを適切な標準物質又は新原薬そのもののレスポンスと比較する方法がある。分解生成物の分析に用いる標準物質には、その使用目的に適した規格を設定する。分解生成物の含量を見積もるために原薬を標準として用いてもよい。分解生成物の感度係数が原薬の感度係数に近い値を示さない場合であっても、補正係数が適用できるか、あるいは分解生成物が実際に存在する量よりも多めに見積もられるようであれば、原薬を標準として用いて分解生成物の含量を見積もってもよい。構造既知又は未知の分解生成物の規格及び分析法では、感度係数が等しい等の仮定をする場合が少なくないが、その場合にはそうした仮定の妥当性に関する考察を添付資料に記載する。開発段階で用いた分析法と承認申請書に記載される分析法とが異なる場合は、その相違点について考察し、記載する。
3 不純物に関する検討事項について
製剤の安定性試験中に認められた分解生成物に関する要約を添付資料に記載する。記載に際しては、製剤中での原薬の推定される分解経路及び医薬品添加物や直接容器/施栓との相互作用から生じる不純物についての科学的な評価に基づいて要約を行う。更に、製剤中の分解生成物を検出するために実施した試験研究の要約を添付資料に記載する。この要約には、開発段階で製造されたロット及び実生産工程を反映したロットの試験結果を含むものとする。分解生成物でない不純物、例えば、原薬及び医薬品添加物に由来する不純物並びにそれらに関連する不純物をこの報告の対象から除外する場合は、その根拠を記載する。開発段階のロットの不純物プロファイルと実生産を反映したロットのプロファイルとを比較し、それらの相違について考察する。
 承認申請書に貯蔵方法として記載される保存条件で行われた安定性試験において認められた分解生成物が、別紙1に示された構造決定が必要な閾値以上に存在する場合は、その構造決定を行う(0.05 〜 0.09%の分析結果は、通例、0.1%にまるめるが、本ガイドラインの目的からは0.1%に切り上げる必要はない。)。構造決定ができなかった分解生成物については、不成功に終わった研究の要約を添付資料に記載する。
 別紙1に示された構造決定が必要な閾値未満のレベルの分解生成物については、通例、構造決定する必要はない。しかし、作用が強く、別紙1に示された閾値未満のレベルでも毒性又は薬理作用を示すと予測される不純物については、構造決定を試みる必要がある。

4 ロット中の不純物量の報告
臨床試験、安全性試験及び安定性試験に使用された新製剤の関連するすべてのロット及び実生産工程を反映した代表的なロットについての分析結果を表形式で添付資料に記載する。分解生成物の試験法は、製剤の有効期間を決める上でも、また、製品の品質を管理する上でも重要な手段であるので、報告すべき最小のレベルは、構造決定が必要な閾値よりも低く設定される必要がある。本ガイドラインにおける報告の閾値を原薬中の分解生成物の百分率として別紙1に示した。これより高い閾値については、別紙1の閾値が達成できない場合で正当化しうる理由がある場合にのみ提案すべきである。
 更に、分解生成物以外の不純物(例えば、原薬由来の不純物)が認められた場合は、それらの不純物の由来を記載する。長期保存条件及び加速条件での安定性試験に用いたロットを含む代表的なロットのクロマトグラム又はそれと同様のデータ(クロマトグラフ法以外の方法を用いた場合)を添付する必要がある。分析法は、少なくとも報告の閾値のレベルまで定量しうるものである必要があり、また、クロマトグラムは、分解生成物及び原薬由来の不純物が溶離する位置が分かるものである必要がある。
 添付資料にはロットごとに次の項目を記載する。
 ア ロット番号、成分の表示含量及びその製造スケール
 イ 製造年月日
 ウ 製造場所
 エ 製造工程(必要に応じて)
 オ 直接容器/施栓
 カ 分解生成物含量(個々の分解生成物含量及び分解生成物の総量)
 キ ロットの用途
 ク 使用した分析法
 ケ その製剤の製造に用いた原薬のロット番号
 コ 保存条件

5 不純物の規格限度値
 新製剤の規格には、承認申請書に貯蔵方法として記載される保存条件において生成すると予測される分解生成物の限度値を設定する。安定性試験、分解経路に関する知識、製剤の開発研究及び研究室レベルでの研究から、分解生成物のプロファイルを明らかにする。規格値は、分解生成物に関する安全性の確認の結果、安定性試験の成績、申請予定の有効期限及び承認申請書に貯蔵方法として記載される製剤の保存条件に基づいて、通常の製造上及び分析上の変動並びに保存中における変化に対応し得るような幅で設定する。
製剤の規格には、必要に応じて
 ア 個別に規格に設定された各分解生成物
 イ 個別には規格に設定されない分解生成物を一まとめにしたもの
 ウ 分解生成物の総量
 の限度値が含まれる必要がある。
 製造工程においても、通常、一定の変動は起こり得るが、ロット間で分解生成物のプロファイルにかなり大きな変動が起こる場合には、新製剤の製造工程が適切に管理運用されておらず、バリデートされていない可能性がある。各分解生成物を規格に設定するか否かの判断根拠を示す。この根拠には、安全性試験及び臨床試験に用いられた開発段階のロットの不純物プロファイルについての考察とともに、実生産工程を反映したロットの不純物プロファイルについての考察も含める。

6 不純物の安全性の確認
 安全性の確認とは、規格に設定された限度値のレベルでの個々の分解生成物又は分解生成物全体の安全性を立証するために必要なデータを集めて評価する作業のことである。分解生成物の限度値の妥当性に関する安全性の側面からの考察を添付資料に記載する。既に安全性試験や臨床試験で十分安全であることが確かめられている新製剤に関しては、その中に存在しているすべての分解生成物について、試験に用いられた試料中に存在するレベルまでは安全性が確認されたものと考えることができる。そのため、安全性試験や臨床試験に用いられたロットについて、各試験に用いられた時点での分解生成物の実際の含量に関する情報を記載することが有用である。分解生成物が、動物やヒトの試験で認められた主要な代謝物と同一である場合には、さらに安全性の確認をする必要はない。安全性試験や臨床試験に用いられた製剤のロット中に存在するよりも高いレベルの分解生成物を含む場合についても、安全性の確認が可能な場合がある。このような場合の安全性の確認は、既に行った安全性試験や臨床試験において実際に投与されて安全であるとの結果が得られた分解生成物の量、分解生成物の生成量の変動及びその他の安全性に関わる要因について考察することにより行うべきである。
 ある分解生成物について、規格に設定しようとする限度値のレベルにおける安全性を確認できるデータがなく、かつ、その限度値が別紙1に示された安全性の確認が必要な閾値以上の場合には、安全性を確認するための試験が必要である(別紙2参照)。製剤によっては、薬効分類別の薬理作用に関する知識や臨床経験を含む科学的根拠や安全性に関する懸念の度合いに基づいて、安全性の確認が必要な閾値をより高くしたり低くしたりするのが適当な場合もある。例えば、ある医薬品群あるいは薬効群の製剤中に含まれる分解生成物がこれまでに患者に副作用を引き起こしたことがある場合には、安全性の確認は特に重要であり、安全性の確認が必要な閾値をもっと低くするのが適当である。逆に、同様な考察(例えば、投薬の対象となる患者群(patient population)、薬効分類別の薬理作用に関する知識、臨床経験)から安全性に関する懸念の度合いが通常の医薬品より低い場合には、安全性の確認が必要な閾値はもっと高くてもよい。技術的な要因(製造工程の性能、医薬品添加物に比して原薬量が低い場合、又は動物若しくは植物基原の未精製の物質を医薬品添加物として使用している場合など)が別紙1と異なる閾値を用いる理由となる場合もあり得る。別紙1と異なる閾値が用いられる場合には、その妥当性はケースバイケースで判断される。
 「分解生成物の安全性確認のためのフローチャート」(別紙2)は、分解生成物が別紙1の閾値以上の場合に、その分解生成物の安全性の確認をどう行うかを示している。また、科学文献からデータが得られる場合には、そうしたデータも分解生成物の安全性を確認する際の考慮の対象にしてもよい。いずれの方法によっても安全性の確認ができない場合は、安全性試験を追加して行うことを考慮する。分解生成物の安全性を確認するのにどのような試験が必要かは、投薬の対象となる患者群、一日当たりの投薬量、投与経路及び投与期間など、多くの要因に依存する。試験は、通常、対象となる分解生成物を含む製剤又は原薬を用いて行うが、単離した分解生成物を用いて行ってもよい。

7 新たな不純物
 医薬品の開発過程においては、製剤中の分解生成物のプロファイルが変化して、構造決定や安全性の確認が必要な閾値を超える新たな分解生成物が出現することがある。このような場合、これらの新しい分解生成物について構造決定や安全性の確認を行う必要がある。分解生成物のレベルが別紙1に示した安全性の確認が必要な閾値以上になる場合には、その存在レベルでの分解生成物の安全性の確認を行う。
 新たな分解生成物が出現し、その量が安全性の確認が必要な閾値以上の場合(数値のまるめ方については、「3 不純物に関する検討事項について」参照)、「分解生成物の安全性確認のためのフローチャート」(別紙2)に従って安全性の確認を行う。安全性試験では、単離した分解生成物を用いる試験を行ってもよいが、通常は代表的なレベルの新たな分解生成物を含んだ製剤又は原薬のロットを用いて試験を行い、その結果を既に安全性が確認されたロットの結果と比較する(このような試験がいつも臨床的に意義があるわけではない。)。

8 用語の定義
(1) 分解生成物(Degradation Product)
時間経過、又は光、熱、pH及び水などの作用、あるいは医薬品添加物や直接容器/施栓との反応により、医薬品の有効成分が化学変化を起こして生成した分子。Decomposition Productともいう。
(2) 分解生成物のプロファイル(Degradation Profile)
原薬又は製剤中に認められる分解生成物の全体像
(3) 製剤の開発研究(Development Studies)
製剤の製造工程をスケールアップし、最適化し、バリデートするために行われる研究
(4) 構造既知の不純物(Identified Impurity)
構造決定された不純物
(5) 不純物(Impurity)
製剤に含まれる物質のうち、原薬又は医薬品添加物として定義される化学物質以外の物質
(6) 不純物プロファイル(Impurity Profile)
製剤中に存在する構造既知又は未知の不純物の全体像
(7) 新原薬(New Drug Substance)
ある地域又は国において以前に承認されたことがない医療用の物質。new molecular entity 又は new chemical entityともいう。以前に承認された原薬の錯体、簡単なエステル体又は塩類であることもある。
(8) 存在する可能性のある分解生成物(Potential Degradation Product)
理論的に考えて、製剤の製造中、製造後又は保存中に生成する可能性のある不純物。これらは、実際に原薬又は製剤中に現れることもあるし、現れないこともある。
(9) 安全性の確認(Qualification)
規格に設定された限度値のレベルでの個々の不純物又は不純物全体の安全性を立証するために必要なデータを集めて評価する作業
(10)反応生成物(Reaction Product)
原薬と製剤中の医薬品添加物又は直接容器/施栓との反応によって生成する物質
(11)安全性情報(Safety Information)
規格に設定された限度値のレベルでの個々の不純物又は不純物全体の安全性を立証するために必要な情報
(12)個別に規格に設定された分解生成物(Specified Degradation Product)
新製剤の安全性及び品質を確保するために、その規格中に個別に限度値を設定された構造既知又は未知の分解生成物
(13)有毒な不純物(Toxic Impurity)
重大な好ましくない生物学的活性を有する不純物
(14)構造未知の分解生成物(Unidentified Degradation Product)
構造決定できず、クロマトグラフ法の相対保持時間のような定性的特性によってのみ特定される分解生成物
(15)個別には規格に設定されない分解生成物(Unspecified Degradation Product)
   製剤のロットによって見出されたり、見出されなかったりする分解生成物


別紙1

新製剤中に含まれる分解生成物について、報告が必要とされる閾値
最大一日投与量1)  報告が必要な閾値3)
≦1g 0.1%
>1g 0.05%

新製剤中に含まれる分解生成物について、構造決定が必要とされる閾値
最大一日投与量1)構造決定が必要な閾値3)
<1mg1.0%あるいは一日総摂取量2)5μgのいずれか低い方
1mg〜10mg 0.5%あるいは一日総摂取量20μgのいずれか低い方
>10mg〜2g 0.2%あるいは一日総摂取量2mgのいずれか低い方
>2g 0.1%

新製剤中に含まれる分解生成物について、安全性の確認が必要とされる閾値
最大一日投与量1)安全性の確認が必要な閾値3)
<10mg1.0%あるいは一日総摂取量2)50μgのいずれか低い方
10mg〜100mg0.5%あるいは一日総摂取量 200μgのいずれか低い方
>100mg〜2g0.2%あるいは一日総摂取量2mgのいずれか低い方
>2g 0.1%
 
注1)一日に投与される原薬の量
注2)一日に摂取される分解生成物の総量
注3)これらの閾値は原薬中に含まれる分解生成物の百分率に基づくものである。
 

別紙2