新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドライン

目次

1 一般的事項

2 原薬の光安定性試験

3 製剤の光安定性試験

4 用語の定義

別添2 キニーネ化学光量測定システム



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1 一般的事項
(1) 目的
 新原薬及び新製剤については、曝光によって許容できない変化が起こらないことを示すために、新原薬及び新製剤が本来有する光に対する特性を評価しなければならない。通例、親ガイドライン通知のロットの選定の項に記されたとおりに選ばれた1ロットについて光安定性試験を行う。何らかの事情で処方や容器包装等を変更した場合には、光安定性試験を再度実施しなければならないこともある。試験を繰り返すかどうかは最初の資料作成時に明らかにされた光安定性の特性及び変更した内容による。
 本ガイドラインは本来、新原薬及び新製剤を承認申請する際に必要とされる光安定性に関する情報を得ることを目的としている。投薬後(使用時)の光安定性及び親ガイドライン通知の適用対象外である承認申請のための光安定性については、本ガイドラインは適用されない。また、科学的根拠により、その妥当性が明示される場合には他の方法を採用してもよい。
 光安定性試験は、次に示すような試験を必要に応じて系統的に行うことが望ましい。
 ア 原薬についての試験
 イ 直接包装を除いたむき出しの製剤についての試験
必要な場合には
 ウ 直接包装に入れた製剤についての試験
更に必要な場合には
 エ 市販包装形態の製剤についての試験

 製剤の試験をどこまで行うかは、別添1の「製剤の光安定性試験結果の判定フローチャート」にそって、曝光試験による変化が許容できるかどうかを評価して決める。許容できる変化とは、承認申請者によって妥当性が示された限度内の変化をいう。光によって変化しやすい原薬及び製剤の表示については、各国又は各地域の規定にしたがう必要がある。

(2) 使用する光源
 光安定性試験には、次に示す2つのオプションの光源のいずれかを用いることができる。承認申請者は、局所的な温度変化の影響を最小にするように適切な温度制御を行うか、又は同じ条件下に遮光した対照試料を置いた試験を行わなければならない。正当な理由がある場合には、この限りでない。承認申請者は、オプション1及び2のいずれの光源も、その波長分布特性の規格は、光源の製造者が示すものを受け入れてよい。
 ア オプション1
   D65又はID65の放射基準に類似の出力を示すように設計された光源。例えば、可視光と紫外放射の両方の出力を示す昼光色蛍光ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等がある。
   D65は、ISO10977(1993)に規定されている屋外の昼光の標準として国際的に認められたものである。
   ID65は、それと同等の室内の間接的な昼光の標準である。320nm以下に放射エネルギーを有意に持つ光源については、適切なフィルターを付けてそのような放射エネルギーを除去してもよい。
 イ オプション2
  このオプションを採用する場合には、次の白色蛍光ランプと近紫外蛍光ランプによる照射を同一の試料を用いて行わなければならない。
 @ISO10977 (1993)に類似の出力を示す白色蛍光ランプ
 A320〜400nmにスペクトル分布をもち、350〜370nmに放射エネルギーの極大を示す近紫外蛍光ランプ。320〜360nm及び360〜400nmの波長域のそれぞれに有意な量の放射エネルギーを示すものであること。

(3) 試験の実施方法
 光安定性を確証するための試験(以下「確証試験」という。)では、原薬と製剤の結果を直接比較できるように、試料は、総照度として120万lux・hr以上及び総近紫外放射エネルギーとして200W・h/m2以上の光に曝されなければならない。
 規定された曝光量が得られていることを確認するために、試料はバリデートされた化学光量測定システムと並べて曝光するか、又はキャリブレート済みの放射計又は照度計を用いた曝光量測定結果により設定された適切な期間、曝光してもよい。化学光量測定システムの一例である「キニーネ化学光量測定システム」を別添2に示す。
 なお、観察された変化の全体に対して熱に起因する変化がどの程度寄与しているかを評価する目的で、遮光した試料(例えば、アルミホイルで包んだ試料)を対照として用いる場合には、それらの対照試料を測定する試料と並べて置くべきである。




2 原薬の光安定性試験
 原薬の光安定性試験は、強制分解試験と確証試験の二つからなる。
 強制分解試験の目的は、分析法を開発したり、分解経路を解明するためにその物質の全般的な光感受性を評価することである。分析法のバリデーションのためには、原薬自体のほか、単純な溶液又は懸濁液を用いて強制分解試験を行う。これらの試験では、化学的に不活性で透明な容器に試料を入れるべきである。強制分解試験では、原薬の光感受性や使用する光源の強度に応じた曝光条件を用いることができる。分析法の開発やバリデーションが目的であるなら、分解がかなり認められたときには曝光を打ち切って、試験を終了してもよい。光に対して安定な物質については、適切な量の曝光を行ったらその時点で試験を終了してもよい。これらの実験計画は、承認申請者の判断に任せられるが、曝光量の妥当性が明示される必要がある。
 強制分解試験の条件においては、確証試験の条件では生成する可能性の少ない分解物が観察されることがある。この情報は適切な分析法を開発し、バリデートするのに役立つ。もし、確証試験においてこれらの分解物が生成されないことが実際に示されている場合には、それ以上の検討は必要ない。
 確証試験は、取扱い、包装及び表示に必要な情報を得るために行われる(これらの試験計画については、1(3)試験の実施方法及び2(1)試料の配置を参照すること。)。
 通例、開発段階の間に1ロットの原薬を試験し、その後、その医薬品が光に対して明らかに安定であるか、又は明らかに不安定である場合には、親ガイドライン通知にしたがって選定した1ロットについて光に対する安定性を確認する。確証試験の結果が明確でない場合には、更に最大2ロットまで追加して試験を行うべきである。試料は、親ガイドライン通知にしたがって選定する。

(1) 試料の配置
 試験される試料の物理的な特性を考慮して試験をするように注意を払い、昇華、蒸発、融解等の物理的状態の変化による影響が最小になるように試料を冷却したり、密封した容器に入れるなどの努力をしなければならない。試験試料の曝光をできるだけ妨げないように注意しなければならない。
 容器として用いられる物質や試料保護のために用いる物質などと試料との間に起こりうる相互作用についても考察し、試験に適しない場合には原因となるものを除去しなければならない。
 試料が固体原薬の場合には、適切な量の試料を採り、適切なガラス又はプラスチック製の皿状容器に入れ、必要な場合には適切な透明なカバーで覆う。固体原薬は、一般的には3mm以下の厚さになるように容器中に広げる。液状の原薬は、化学的に不活性で透明な容器に入れて曝光する。

(2) 試料の分析
 曝光終了時に、試料の物理的な性質(例えば、外観、溶状等)の変化を検討するとともに、光分解過程で生じうる分解物について適切にバリデートされた方法を用いて含量及び分解物の量を測定する。
 固体原薬の場合には、サンプリングは、それぞれの試験の試料として全体を反映する部分が用いられるように行う。固体以外の原薬についても、曝光後の試料が均一でない可能性がある場合には、同様に試料全体を均一化した後、サンプリングを行う。対照として遮光した試料を用いる場合には、それを曝光した試料と同時に分析すべきである。

(3) 結果の判定
 強制分解試験は、確証試験で用いられる分析法を開発し、バリデートするための適切な情報が得られるように計画されなければならない。これらの分析法は、確証試験において生成される光分解物を分離して検出できるものでなければならない。強制分解試験の結果を評価するときには、これらが苛酷試験の一部であり、光による変化について定性的又は定量的な限度値を設定するためのものではないことを念頭に置くことが重要である。
 確証試験は、原薬の製造や製剤化において必要な注意事項を確認でき、また、遮光包装の必要性を確認できるものでなければならない。確証試験の結果から、曝光による変化が許容できるかどうかを判定するときには、使用時点において原薬が規格に適合する品質であることを保証できるように、光安定性試験以外の通常行われる安定性試験の結果を合わせて考察する必要がある。




3 製剤の光安定性試験
 製剤についての試験は、通例、まず完全にむき出しにした製剤での試験から始め、次に必要に応じて直接包装の製剤、さらには市販される包装(市販包装)の製剤での試験を行うように逐次的に進めるべきである。その製剤が曝光の影響を受けないことを実証できるまで試験を進めなければならない。製剤は、1(3)試験の実施方法に記載されている条件で曝光しなければならない。
 通例、開発段階の間に1ロットの製剤を試験し、その後、その医薬品が光に対して明らかに安定であるか、又は明らかに不安定である場合には、親ガイドライン通知にしたがって選定した1ロットについて光に対する安定性を確認する。確証試験の結果が明確でない場合には、更に最大2ロットまで追加して試験を行うべきである。
 直接包装がアルミニウムチューブや缶のように光を完全に通さないことが示されている場合には、通例、包装なしのむき出しの製剤についてのみ試験を行えばよい。
 輸液や皮膚用クリームなどの製剤については、使用時の光安定性を保証するための試験を行う方がよい。この試験をどの程度行うかは用法によって決まるものであり、承認申請者の判断に任される。
 試験に用いる分析法は、適切にバリデートされていなければならない。

(1) 試料の配置
 試験される試料の物理的な特性を考慮して試験をするように注意を払い、昇華、蒸発、融解等の物理的状態の変化による影響が最小になるように試料を冷却したり、密封した容器に入れるなどの努力をしなければならない。試験試料の曝光をできるだけ妨げないように注意しなければならない。
 容器として用いられる物質や試料保護のために用いる物質などと試料との間に起こりうる相互作用についても考察し、試験に適しない場合には原因となるものを除去しなければならない。
 直接包装から取り出した製剤について試験することが実際的である場合には、原薬について述べた条件と同様の方法で試料を配列する。試料は、光源に曝される面積が最大になるように配置する。例えば、錠剤、カプセル剤等は単一の層になるように広げて配置する。
 直接に曝光するのが実際的でない場合には(例えば、製剤が酸化されるために)、適切に保護できる不活性で透明な容器(例えば、石英)に試料を入れる。
 直接包装に入れた製剤又は市販包装の製剤についての試験が必要な場合には、曝光が最も均一になるように、試料を水平に又は光路に対して直角になるように配置する。容積の大きい包装の製剤(例えば、調剤用の包装)を試験するときには、試験条件を調節することが必要な場合もある。

(2) 試料の分析
 曝光終了時に、試料の物理的な性質(例えば、外観、溶状、カプセル剤のような製剤については溶出性又は崩壊性等)の変化を検討するとともに、光分解過程で生じうる分解物について適切にバリデートされた方法を用いて含量及び分解物の量を測定する。
 散剤の場合には、サンプリングは、それぞれの試験の試料として全体を反映する部分が用いられるように行う。固形の経口剤の試験には、適切な個数、例えば20錠又は20カプセルを用いる。その他の製剤(クリーム剤、軟膏剤、懸濁剤等)についても、曝光後の試料が均一でない可能性がある場合には、同様に試料全体を均一化又は溶解した後、サンプリングを行う。対照として遮光した試料を用いる場合には、それを曝光した試料と同時に分析すべきである。

(3) 結果の判定
 変化の程度によっては、曝光の影響を軽減するための特別な表示や包装が必要とされることもある。確証試験の結果から、曝光による変化が許容できるかどうかを判定するときには、有効期間を通じて製剤が承認申請を予定している規格に適合する品質であることを保証できるように、光安定性試験以外の通常行われる安定性試験の結果を合わせて考察する必要がある。




4 用語の定義
(1) 新原薬
昭和55年5月30日薬発第698号薬務局長通知に規定する医療用の新有効成分含有医薬品のうちの原薬をいう。
(2) 新製剤
昭和55年5月30日薬発第698号薬務局長通知に規定する医療用の新有効成分含有医薬品のうちの製剤をいう。
(3) 直接包装(一次包装)
  原薬や製剤が直接接触する包装であり、それに貼付されているラベルを含めたものをいう。
(4) 市販包装
  直接包装及び紙箱などの直接包装以外の包装を合わせた全体をいう。
(5) 強制分解試験
  試料を意図的に分解させるために行う試験をいう。この試験は、通例、原薬 について開発段階で行われ、分析法を開発したり、分解経路を解明するために、 その物質の全般的な光感受性を評価するために行われる。
(6) 確証試験
  標準化された条件下における光に対する特性を明らかにするために行う試験をいう。この試験は、原薬の製造や製剤化において必要な注意事項を確認し、 また、曝光の影響を軽減するために、遮光包装や特別な表示が必要かどうかを 確認するために行われる。確証試験のためのロットは、親ガイドライン通知に 記載されている長期保存試験及び加速試験のロット選定にしたがって選定する。




別添2 
キニーネ化学光量測定システム

 近紫外蛍光ランプによる曝光量を測定するための初歩的な化学光量測定システムの詳細を以下に示す。
 この他の光源及び化学光量測定システムの組合せについては、同じ方法を採用することもできるが、それぞれの化学光量測定システムごとに使用する光源に対してキャリブレートする必要がある。
 塩酸キニーネ二水和物の2W/V%水溶液を必要なら加温して調製する。

1 オプション1
塩酸キニーネ溶液10mlを20ml容量の無色のアンプル(下図参照)にとり、熔封し、測定試料とする。別に、この溶液10mlを20ml容量の無色のアンプルにとり、熔封し、完全に光を遮るようにアルミニウムホイルで包み、対照試料とする。測定試料及び対照試料を適切な時間、曝光する。その後、測定試料及び対照試料中の溶液につき、400nmにおける吸光度(AT及びA0)を光路長1cmのセルを用いて測定し、吸光度の差△A=AT−A0を求める。吸光度の差が少なくとも0.9になるように十分な時間、曝光する。

2 オプション2
塩酸キニーネ溶液を1cm石英セルに満たし、測定試料とする。別に、溶液を1cm石英セルに満たし、完全に光を遮るようにアルミニウムホイルで包み、対照試料とする。測定試料及び対照試料を適切な時間、曝光する。その後、測定試料及び対照試料につき、400nmにおける吸光度(AT及びA0)を測定し、吸光度の差
△A=AT−A0を求める。吸光度の差が少なくとも0.5になるように十分な時間、曝光する。

 適切にバリデートされている場合には、他の容器を用いることもできる。塩酸キニーネ以外のバリデートされた化学光量測定システムを採用してもよい。

図1:形及び大きさ(日本工業規格(JIS)R3512(1974)参照)