薬品部の概要および業績<平成19年>


概要
 医薬品を巡る環境の変化は著しいものがある.製薬企業の国際化はいわゆる先進国ばかりでなく,経済発展の著しいアジア圏等も巻き込むようになっており,医薬品原薬や医薬品添加剤の供給先は多岐にわたるようになっている.このような背景の中,グリセロールへのジエチレングリコールの混入事件,さらには今現在対応が迫られているヘパリンへの異物混入事件などは,従来の医薬品評価や医薬品品質管理体制では防ぎ得ないケースが生まれつつあることを示している.また,これらの事例は,医薬品の品質評価法および品質管理手法を主たる研究対象とする当部にとって,新たな課題が生まれつつあることを示している.一方,ICHでは品質関連のテーマとしてQ8-Q10が合意段階(あるいは合意近く)にある.これらは従来の品質テーマと異なり,特定な技術的課題を扱ったガイドラインというより,むしろ医薬品品質管理の新しい方策を提示したものである.即ち出荷規格試験を中心とした品質管理から,科学的な製法開発によって得られた知識に基づいて実施される工程管理に比重をおいた品質管理への移行を推奨している.これらのガイドラインの内容の多くは,医薬品認可の必須要件として示されているものではない.しかしこの手法の普及は,当部が長年改正作業を支えてきた日本薬局方にも質的変化を促すと思われる.これらの問題の解決には,以前にも増して知恵と工夫が必要とされよう.
 第2室の吉岡澄江室長が平成20年3月31日付で定年退職された.38年の長きにわたり,当所薬品部において医薬品の品質確保に関する職務に精励され,特に医薬品安定性試験法の国際調和,薬局方の国際調和の進展,及び医薬品添加剤の規格設定基準の策定等,厚生労働行政に貢献されるとともに,所の発展に尽くされてきたことに感謝の意を表するものである.吉岡室長の後任には4月1日付で阿曽幸男主任研究官が昇任した. 平成19年6月1日付けで高瀬葉月氏が非常勤職員として採用された.平成19年5月31日をもって堤幸子氏が派遣職員の任期を終了した.平成19年8月6日より水飼恵子氏が派遣職員として採用された.平成20年4月1日付けで齋藤はる奈氏が派遣職員として採用された. また医薬品の品質保証の研究を推進するため,協力研究員であった田中光博士(東邦大学薬学部教授)に平成20年4月1日より客員研究員として,同じく平成20年4月1日より荒戸照世博士(医薬品医療機器総合機構審査役)に協力研究員として協力をお願いした.
 宮崎玉樹主任研究官は,ミネソタ大学薬学部Suryanarayanan教授の招聘により,昨年度に引き続き同教授の下で医薬品の安定性評価研究を行った(平成19年4月14日~平成19年10月13日). 短期の海外出張については次の通りである:檜山行雄室長は第二回世界薬学会議(PSWC2007)で招待講演のためオランダに出張した(平成19年4月);川西徹部長はWHO-Biosimilarに関する非公式会議および生物学的製剤の国際一般名称に関する専門家会議へ出席するためスイスへ出張した(平成19年4月);檜山行雄室長はICH専門家会議出席のためベルギーに出張した(平成19年5月);香取典子主任研究官は第8回欧州臨床薬理学会(EACPT2007)で研究発表のため,オランダに出張した(平成19年8月);檜山行雄室長はAPEC主催ICHワークショップで教育講演を行うため韓国に出張した(平成19年9月);坂本知昭主任研究官は赤外ミリ波テラヘルツ波国際学会医学薬学応用部会で研究発表のためイギリスへ出張した(平成19年9月);檜山行雄室長は米国における品質システム研究調査およびPDA・FDA合同会議で招待講演を行うため米国に出張した(平成19年9-10月);坂本知昭主任研究官は国内未承認輸入熱帯病治療薬の品質に関する調査のためスイスへ出張した(平成19年10月);四方田千佳子室長は,韓国薬学会での招待講演及び韓国FDA訪問のため韓国へ出張した(平成19年10月);吉岡澄江室長,檜山行雄室長,阿曽幸男主任研究官,宮崎玉樹主任研究官,小出達夫主任研究官は米国薬剤学会年会で研究発表のため米国に出張した(平成19年11月);檜山行雄室長はISPE年会において特別講演を行うため米国へ出張した(平成19年11月);坂本知昭主任研究官は共同研究のためイギリスに出張した(平成19年12月);伊豆津健一主任研究官は,医薬品分析とレギュラトリーサイエンスに関する研究会(WCBP2008)に参加するため米国に出張した(平成20年1月)


業務成績
  1. 一斉取締試験
     テプレノン細粒 8品目,塩酸スルプリド錠 2品目,塩酸ドキシサイクリン 6品目,塩酸ペンタゾシン錠 1品目,塩酸ミノサイクリン顆粒 2品目,カルベジロール錠 9品目,臭化水素酸デキストロメトルファン散 5品目,ゾテビン錠 5品目,ハロペリドール細粒 6品目,ハロペリドール錠 14品目,マレイン酸レボメプロマジン細粒 1品目,マレイン酸レボメプロマジン錠 6品目,マレイン酸レボメプロマジン顆粒 1品目,アルプロスタジル注射剤 7品目.
  2. 医療用医薬品の品質再評価に係る溶出試験規格の妥当性検証
     エルゴタミン酒石酸塩,無水カフェイン,イソプロピルアンチピリン錠の溶出試験規格の妥当性を検討し,修正案を提案した.
  3. 薬事法に基づく登録試験検査機関の外部精度管理
     薬事法施行規則に規定する厚生労働大臣の登録を受けた試験検査機関のうち,69機関につき,外部精度管理としてISO17025に準拠した医薬品分析の技能試験を実施した.
  4. 国立保健医療科学院特別課程薬事衛生管理コース(GMP研修コース)への協力
     檜山室長,坂本主任研究官及び小出主任研究官は,国立保健医療科学院からの委託を受け,当該コースの主任ならびに副主任として,医薬品等製造所のGMP/QMS査察に当たっている薬事監視員の研修のためのコースの設計ならびに実際の運営に当たった(平成19年5月21日~6月22日).また四方田室長,吉岡室長,檜山室長,香取主任研究官,坂本主任研究官,小出主任研究官は上記コース中の講義の講師を務めた.
  5. 国際協力
     国際厚生事業団(JICWELS)の第23回アジア諸国薬事行政官研修および第18回必須医薬品製造管理研修(平成19年11月)に協力して,アジア諸国の薬事行政官ならびに医薬品GMP査察官に対する研修を行った.
  6. その他
      薬事・食品衛生審議会の医薬品の承認審査ならびに再評価における審議(医薬食品局審査管理課,医薬品医療機器総合機構),日本薬局方,日本薬局方外医薬品規格,後発医薬品等の同等性試験ガイドライン作成作業,溶出試験規格作成,医薬品添加物規格および殺虫剤指針の改正作業(医薬食品局審査管理課),GMP専門分野別研修(医薬食品局監視指導・麻薬対策課)ならびに日本工業規格(JIS)の改正作業(経済産業省)などに協力した.
     産官学の方が参加し,品質保証のあり方について討論する医薬品品質フォーラムに関しては,「改正薬事法下での品質保証」(平成19年9月11日),「ICHQ8及びQ9の具体的課題事例とガイドラインの適用」(平成19年12月7日)をテーマにそれぞれ第六回,第七回のシンポジウムを開催した.又,ICHQ10ステップ2案の説明会を平成19年8月29日に行った.

研究業績

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