医 薬 審 第 267号

平成9年10月17日

日本製薬団体連合会 会長 殿

厚生省医薬安全局審査管理課長

後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(修正案)について



 「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(案)」については、平成8年7月10日薬審第486号により公表したところですが、当初の案に対して多くの意見が寄せられ、それらを検討した結果、別添のとおり、いくつかの重要な点を修正した上でとりまとめたところであります。
 つきましては、修正された点に関し、短期間ではありますが、再度意見を求めることとしましたので、ご意見がある場合は、平成9年11月17日までに、別紙様式により、下記宛に提出いただくようお願いいたします。
 
 なお、今後寄せられたご意見を踏まえ、同ガイドラインの最終内容を公表することを予定しております。

 (意見提出先)
100-45 東京都千代田区霞ヶ関1−2−2 厚生省医薬安全局審査管理課
      佐藤 大作、磯崎 正季子
  電話 
03-3503-1711 内2912
    FAX 03-3597-9535


後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン

(案ver. 1297 October 15
 
目  次
 

第1章.緒言
 
第2章.用語
 
第3章.試験

A.経口通常製剤及び腸溶性製剤

I.標準製剤と試験製剤
II.生物学的同等性試験
1.試験法
1)割付
2)例数
3)被験者
4)投与条件
  
a投与量
  
b投与法
   ア.
単回投与試験
   イ.
多回投与試験
5)測定
a 採取体液
b 採取回数及び時間
c 測定成分
d 分析法
6)休薬期間
2.評価法
1)生物学的同等の範囲
2)パラメータ
3)対数変換
4)統計学的手法
5)同等性の判定
III.薬力学的試験
IV.臨床試験
V.溶出試験
1.試験回数
2.試験時間
3.試験条件
1)酸性薬物を含む製剤
2)中性又は塩基性薬物を含む製剤,コーティング剤
3)難溶性薬物を含む製剤
4)腸溶性製剤
4.溶出挙動の同等性の判定

VI.生物学的同等性試験結果の記載事項
1.試料
2.試験結果
1)要旨
2)溶出試験
3)生物学的同等性試験
4)薬力学的試験
5)臨床試験
B.経口徐放性製剤
I.標準製剤と試験製剤
1.標準製剤
2.試験製剤
II.生物学的同等性試験
1.試験法
2.評価法
1)生物学的同等の範囲,パラメータ,対数変換及び統計学的手法
2)同等性の判定
III.薬力学的試験及び臨床試験
IV.生物学的同等性試験結果の記載事項
C.非経口製剤
  1. 標準製剤と試験製剤

  2. 生物学的同等性試験

  3. 薬力学的試験及び臨床試験

  4. 溶出試験又は物理化学的試験

  5. 生物学的同等性試験結果の記載事項

D.同等性試験が免除される製剤
付録.パラメータの略号一覧表
 
 
第1章  緒言  
 
 本ガイドラインは,後発医薬品の生物学的同等性試験の実施方法の原則を示したものである.生物学的同等性試験を行う目的は,先発医薬品に対する後発医薬品の治療学的な同等性を保証することにある.生物学的同等性試験では,
通常,先発医薬品と後発医薬品のバイオアベイラビリティを比較する.それが困難な場合,又は,バイオアベイラビリティの測定が治療効果の指標とならない医薬品では,原則として,先発医薬品と後発医薬品との間で,効力を裏付ける薬理作用,又は,主要効能に対する治療効果を比較する(以下,これらの比較試験をそれぞれ薬力学的試験及び臨床試験という).また,経口製剤では,溶出挙動が生物学的同等性に関する重要な情報を与えるので,溶出試験を実施する.
 
 
第2章  用語
 
本ガイドラインで使用する用語は,以下の意味で用いる.
バイオアベイラビリティ:未変化体又は活性代謝物が体循環血中に入る速度と量.
生物学的に同等な製剤:
バイオアベイラビリティが同等である製剤.
治療学的に同等な製剤:
治療効果が同等である製剤.
先発医薬品:新医薬品として承認を与えられた医薬品又はそれに準じる医薬品.
後発医薬品:先発医薬品と同一の有効成分を同一量含む同一剤形の製剤で,用法用量も等しい医薬品.

第3章 試験

A.経口通常製剤及び腸溶性製剤

I.標準製剤と試験製剤

 原則として先発医薬品の3ロットについて,第3章,A.第V項に従った溶出試験(但し,毎分50回転のパドル法のみ,また,試験回数は6ベッセル(容器)以上)で予試験を行い,ロット間で溶出性の差が最も大きくなる条件において,中間の溶出性を示すロットの製剤を標準製剤とする.有効成分が溶解した状態で投与される製剤は,溶出試験を行わずに,適当なロットを標準製剤としてよい
 後発医薬品の試験製剤は,実生産ロットの製剤であることが望ましいが,実生産ロットの1/10以上の大きさのロットの製剤でもよい.有効成分が溶解している溶液製剤では,ロットの大きさはこれより小さくてもよい.なお,実生産ロットと同等性試験に用いるロットの製法は同じで,両者の品質及びバイオアベイラビリティは,共に,同等であるものとする.
 標準製剤の含量又は力価はなるべく表示量に近いものを用いる.また,試験製剤と標準製剤の含量又は力価の差が表示量の5%以内であることが望ましい.

II.生物学的同等性試験
 
1.試験法
 本試験に先立ち,予試験を行うなどして,必要例数及び体液採取間隔を含む適切な試験法を定める.
1)割付:

 原則としてクロスオーバー法で行う.消失半減期が極めて長い医薬品などで,クロスオーバー試験を行うことが難しい場合には,並行群間比較試験法で試験を行うことができる.測定対象成分のクリアランスの個体内変動が大きい場合には,繰返しを含むクロスオーバー試験が有用である.
2)例数:
同等性を判定するのに十分な例数で試験を行う.例数が不足したために同等性が示せない場合には,本試験と同じ方法により例数追加試験(add-on subjects study)を1回行うことができる.追加試験は本試験の例数の半分以上の例数で行う.本試験で総被験者数20名(1群10名)以上,あるいは本試験及び追加試験を併せて総被験者数30名以上の場合には,後述するように,信頼区間に依らず,試験製剤と標準製剤のバイオアベイラビイリティの平均値の差と溶出試験の結果に基づいて生物学的同等性を判定することもできる.
 多数の必要例数が推定される場合には,多回投与試験,安定同位体を同時に投与する試験などを考慮し,できるだけ少数例で本試験を行えるように検討する.
3)被験者:
 適用集団が限られていない医薬品では,原則として健康成人志願者を被験者とする.第3章,A.第V項に従った溶出試験によりpH6.8付近(但し,弱塩基性薬物はpH3.06.8)で,溶出の速い方の製剤の平均溶出率が80%に達した時点で他方の製剤の平均溶出率が50%以下の場合,低胃酸の被験者で試験する.いずれの製剤も平均溶出率が6時間で80%に達しない場合は6時間の溶出率を比較する.溶出の遅い方の製剤の平均溶出率が他方の製剤の平均溶出率の60%以下の場合には,低胃酸の被験者で試験する.但し,標準及び試験製剤の平均溶出ラグ時間(薬物が5%溶出するまでの時間)の差が10分以内で両製剤とも溶出ラグ時間以降15分以内に平均85%以上溶出する場合,標準及び試験製剤が共に6時間以内に平均20%以上の溶出率を示さない場合,又は,腸溶性製剤の場合には,低胃酸の被験者で試験を行う必要はない.
 一方,医薬品の適用集団が限られており,第3章,A.第V項に従った溶出試験の一つ以上の条件において,溶出の速い方の製剤の平均溶出率が80%に達した時点で他方の製剤の平均溶出率が50%以下の場合,その集団を対象とした生物学的同等性試験の実施が必要となる.いずれの製剤も平均溶出率が6時間で80%に達しない場合は6時間の溶出率を比較する.溶出の遅い方の製剤の平均溶出率が他方の製剤の平均溶出率の60%以下の場合には,適用集団を対象とした生物学的同等性試験の実施が必要となる.但し,標準及び試験製剤の平均溶出ラグ時間の差が10分以内で両製剤とも溶出ラグ時間以降15分以内に平均85%以上溶出する場合,又は,標準及び試験製剤が共に6時間以内に平均20%以上の溶出率を示さない場合には,上記の比較は行わない.
 薬効又は副作用が強いなどの理由により,健康人での試験が望ましくない場合は当該医薬品の適用患者で試験を行う.遺伝的多形があって,薬物のクリアランスが被験者間で大きく異なる場合はクリアランスの大きい被験者で試験を行う.
 試験前後及び試験中は,被験者の健康状態に注意を払い,その観察結果を記録する.特に,有害事象の発現に注意する.
4)投与条件:
  1. 投与量:原則として,1投与単位または臨床常用量を用いる.検出限界が高いなど,分析上に問題がある場合には,規定された用法用量の上限を超えない量を投与することができる.

  2. 投与法:原則として,単回投与で試験を行う.但し,繰返し投与される医薬品は多回投与で試験を行うこともできる

ア.単回投与試験:
原則として,10時間以上の絶食後,被験製剤を100-200 mlの一定量の水(通常,150 ml)と共に投与する.投与後,4時間までは絶食とする.但し,食後投与が用法に明記され,絶食投与ではバイオアベイラビリティが著しく低くなる場合,又は,重篤な有害事象の発現頻度が高くなる場合においては,食後投与で試験を行う.食後投与では,低脂肪食(700 kcal以下,且つ,総エネルギーに対する脂質のエネルギーの占める割合いは20%以下)を20分以内に摂り,用法に定められた時間に製剤を投与する.用法に服用時間が定められていない場合には,食後30分に製剤を投与する.
イ.多回投与試験:
測定のために体液を採取する時は,単回投与試験と同様,原則として絶食投与する.それまでの投与は等間隔とし,測定時に食後投与する場合を除き,食間投与(食事と投与の間隔を2時間以上あける)とする.

5)測定
  1. 採取体液:原則として血液とする.尿を採取体液とすることもできる.
  2. 採取回数および時間:採取体液として血液を用いる場合は,CmaxAUCなどの評価に十分な回数の体液を採取する.投与直前に1点,Cmaxに達するまでに1点,Cmax附近に2点,消失過程に3点の計7点以上の体液の採取が必要である.体液の採取は,原則としてAUCtAUC80%以上になる時点まで行う(tmaxから消失半減期の3倍以上にわたる時間に相当する).未変化体又は活性代謝物の消失半減期が非常に長い場合は,少なくとも72時間にわたって体液の採取を行う.
     体液として尿を用いる場合は,血液を用いる場合に準じる.
     デコンボルーションにより
    Fを評価する場合には,吸収が終了するまでの体液採取が必要であるが,長時間の体液採取は必ずしも必要とされない.
  3. 測定成分:原則として,未変化体を測定する.合理的な理由がある場合には,主活性代謝物を測定できる.立体異性体の分離測定は原則として必要としない.但し,主薬理活性の強さが異なる立体異性体が存在し,吸収速度に依存した選択的な吸収又は消失が起こる場合は,主薬理活性の強い異性体を測定する.
  4. 分析法: 特異性,真度,精度,直線性,定量限界,試料中の測定対象物の安定性などについて,十分にバリデーションを行った方法を用いる.
  5. 6)休薬期間
       通例,未変化体又は活性代謝物の消失半減期の5倍以上の休薬期間を置く.

    2.評価法

    1)生物学的同等性の範囲

     生物学的同等の許容域は, AUC及びCmaxが対数正規分布する場合には,試験製剤と標準製剤のパラメータの母平均の比で表すとき0.81.25である. AUC及びCmaxが正規分布する場合には試験製剤と標準製剤のパラメータの母平均の差を標準製剤の母平均に対する比として表すとき-0.2+0.2である.作用緩和な薬物では,Cmaxについてはこれよりも広い範囲を生物学的同等の許容域とすることもある.tmaxなど上記以外のパラメータで生物学的同等性を評価する場合には,生物学的同等の許容域は薬物毎に定められる.
    2)パラメータ
     血液を採取体液とする場合には,単回投与試験では,AUCt及びCmaxを生物学的同等性判定のパラメータとする.多回投与試験では,AUCt及びCmaxを生物学的同等性判定のパラメータとする.Cmaxは実測値を用い,AUCは台形法で計算した値を用いる.デコンボルーションでFが算出できる場合は,AUCの代わりにFを用いることができる.
     
    AUC∞,tmaxMRTkelなどは参考パラメータとする.多回投与においては,Ctも参考パラメータとする.
    尿を採取体液とする場合は,
    AetAetAe∞,Umax及びUtAUCt AUC t AUCCmax及びCtに代わるパラメータとして用いる.
    3)対数変換
    原則として,tmaxを除くパラメータの値は,対数変換をして解析する.
    4)統計学的手法
    90%信頼区間(非対称,最短区間)で生物学的同等性を評価する.これの代わりに,有意水準5%の2つの片側検定(two one-sided tests)で評価してもよい.合理的な理由があれば他の適当なものを用いてもよい.例数追加試験(add-on subjects study)を実施した場合には,本試験のデータと併合して,試験(study)を変動要因のひとつとして解析する.但し,両試験間で製剤,実験計画,分析法,被験者の特性などに大きな違いがない場合に限る.
    5)同等性の判定
    試験製剤と標準製剤のAUCt及びCmaxの対数値の平均値の差の90%信頼区間が,log(0.8)log(1.25)の範囲にあるとき,試験製剤と標準製剤は生物学的に同等と判定する.
    なお,上記の判定基準に適合しない場合でも,試験製剤と標準製剤の
    AUC及びCmaxの対数値の平均値の差がlog(0.90)log(1.11)であり,且つ,第3章,A.第V項に従った溶出試験で規定するすべての条件で溶出速度が同等と判定された場合には,生物学的に同等と判定する.有効成分が溶解した状態で投与される製剤は,すべての条件で溶出速度が同等と判定された製剤とみなす.但し,この規定が適用されるのは,本試験で総被験者数20名(1群10名)以上,あるいは本試験及び追加試験を併せて総被験者数30名以上が用いられた場合に限られる.なお,第3章,A.第V項に従った溶出試験で規定するどの条件においても,6時間以内に溶出率が85%以上に達しない製剤には,この判定基準を適用することはできない.
    参考パラメータの統計学的評価の結果は,判定を行うときに参照され,試験製剤と標準製剤の平均値間に有意の差があると判定された場合には,治療上の同等性に影響を与えないことについて説明が求められる.
    III.薬力学的試験

     本試験は,ヒトにおける薬理効果を指標に,同等性を証明する試験である.血中または尿中の未変化体又は活性代謝物の定量的測定が困難な医薬品,及びバイオアベイラビリティの測定が治療効果の指標とならない医薬品に対して適用される.
    制酸剤,消化酵素剤については,適当なin vitro効力試験を用いることができる.薬力学的試験においては,薬理効果の時間的推移を比較できることが望ましい.
     本試験の同等性の許容域は,医薬品の薬効を考慮し,個別に定められる.

    IV .臨床試験

     本試験は臨床効果を指標に,同等性を証明する試験である.生物学的同等性及び薬力学的試験が困難あるいは適切でないときに適用される.
     本試験の同等性の許容域は,医薬品の薬効の特性を考慮し,個別に定められる.
     
    V .溶出試験
     
     適当な方法でバリデーションを行った溶出試験法及び分析法を用いて試験を行う.有効成分が確実に溶解した状態で投与される製剤は,溶出試験を実施する必要はない.
    1. 試験回数

    2.  溶出試験の1条件につき,
      12ベッセル以上で試験を行う.
       
    3. 試験時間
    4. pH 1.2では2時間,その他の試験液では6時間とする.但し,標準製剤の平均溶出率が85%を越えた時点で,試験を終了することができる.
    5. 試験条件
    以下の条件で試験を行う.

    装置:パドル法.
    試験液の量:原則として
    900L
    試験液の温度:
    37±0.5
    試験液:
    pH 1.2には日本薬局方(JP13)崩壊試験の第1液,pH 6.8には同第2液,また,その他のpHには薄めたMcIlvaineの緩衝液(0.05 mol/L リン酸1水素ナトリウムと0.025 mol/L クエン酸を用いてpHを調整する)を用いる.標準製剤がMcIlvaineの緩衝液で平均溶出率が6時間までに85%に達せず,他の適当な緩衝液では達する場合には,その緩衝液による試験を追加してもよい.
     
    1)酸性薬物を含む製剤

    回転数(rpm)  pH
    50 ア 1.2
    イ 5.5〜6.5a)
    ウ 6.8〜7.5 a)
    エ 水
    100 イ,ウ,エのうちのいずれか一つa)
     a)
    標準製剤が6時間で平均85%以上溶出する条件で,溶出の遅い試験液を選択する.いずれの試験液においても,標準製剤が6時間までに平均85%溶出しない場合には,最も速い試験液を選択する.

    2)中性又は塩基性薬物を含む製剤,コーティング製剤
    回転数(rpm)  pH
    50 ア 1.2
    イ 3.0〜5.0 a)
    ウ 6.8
    エ 水
    100 イ,ウ,エのうちのいずれか一つa)
    a)
    標準製剤が6時間で平均85%以上溶出する条件で,溶出の遅い試験液を選択する.いずれの試験液においても,標準製剤が6時間までに平均85%溶出しない場合には,最も速い試験液を選択する.

    3)難溶性薬物を含む製剤
     難溶性薬物を含む製剤とは,
    毎分50回転で試験を行うとき,界面活性剤を含まない1)又は2)に規定するどの試験液でも,標準製剤の平均溶出率が,6時間までに85%に達しないものである.
    回転数(rpm)  pH 界面活性剤
    50 ア 1.2 無添加
    イ 4 同上
    ウ 6.8 同上
    エ 水同上
    オ 1.2 ポリソルベート80添加a)
    カ 4 同上
    キ 6.8 同上
    100 オ,カ,キのうちのいずれか一つb) ポリソルベート80添加ac)
    a) ポリソルベート80の濃度は0.010.10.5又は1.0%を検討する. オ,カ又はキのうち少なくとも1つ以上の試験液で,標準製剤が6時間で平均85%以上溶出するのに必要なポリソルベート80の最低濃度を検討し,この濃度をオ,カ又はキの試験液に添加する.b) 標準製剤が6時間で平均85%以上溶出する条件で,溶出の遅い試験液を選択する.いずれの試験液においても,標準製剤が6時間までに平均85%溶出しない場合には,最も速い試験液を選択する.c) 50 rpmと同じ濃度
     
    4)腸溶性製剤
    回転数(rpm)  pH
    50 ア 1.2
    イ6.0
    ウ 6.8
    100
     
     なお,難溶性薬物を含む腸溶性製剤の場合には,毎分
    50回転では試験液イ,ウ,また,毎分100回転では試験液イに,ポリソルベート80を添加した試験も行う.ポリソルベート80の添加濃度は,3)難溶性薬物を含む製剤の項に従う.

    4.溶出挙動の同等性の判定
     試験製剤の平均溶出率を,標準製剤の平均溶出率と比較する.すべての溶出試験条件において,以下のいずれかの基準に適合するとき,同等とする.但し,本試験による同等性の判定は,生物学的に同等であることを意味するものではない.
    1).標準製剤の平均溶出率が6時間以内に85%に達する場合
    a. 標準製剤の溶出に明確なラグ時間がない場合:
    ア. 標準製剤が15分以内に平均85%以上溶出する:試験製剤は15分以内に平均85%以上溶出する.
    イ. 標準製剤が
    15分〜30分に平均85%以上溶出する場合: 標準製剤の平均溶出率が60%及び85%付近の適当な2時点において,試験製剤の平均溶出率は標準製剤の平均溶出率±15%の範囲にある.
    ウ. 上記以外の場合:
    標準製剤の平均溶出率が40%及び85%付近の適当な2時点において,試験製剤の平均溶出率は標準製剤の平均溶出率±15%の範囲にある.<p>
    b. 標準製剤の溶出にラグ時間がある場合:
    ア. 溶出ラグ時間以降15分以内に標準製剤が平均85%以上溶出する場合:平均溶出ラグ時間の差が10分以内であり,且つ,溶出ラグ時間以降試験製剤は15分以内に平均85%以上溶出する.
    イ.
    溶出ラグ時間以降15分〜30分に標準製剤が平均85%以上溶出する場合: 平均溶出ラグ時間の差が10分以内であり,且つ,標準製剤の平均溶出率が60%及び85%付近の適当な2時点において,試験製剤の平均溶出率は標準製剤の平均溶出率±15%の範囲にある.
    ウ.
    上記以外の場合: 標準製剤の平均溶出率が40%及び85%付近の適当な2時点において,試験製剤の平均溶出率は標準製剤の平均溶出率±15%の範囲にある.
    溶出に遅れがあるときには,便宜上,ラグ時間を薬物が5%溶出するまでの時間で表す.
    2)標準製剤の平均溶出率が6時間以内に85%に達しない場合
    標準製剤が6時間目の平均溶出率の1/2の平均溶出率を示す適当な時点,及び,6時間目において,試験製剤の平均溶出率は標準製剤の平均溶出率±a%の範囲にある.aは,溶出率が50%以上の場合には1550%以下の場合には8とする.

    VI.生物学的同等性試験結果の記載事項.
     
    1.試料:
    1)試験製剤のコード名等,並びに,試験に用いたロットの製造番号及び大きさ.標準製剤の銘柄名及びロット番号
    2)剤形の種類
    3)有効成分名
    4)表示量<
    5)試験及び標準製剤の含量又は力価の測定値と測定方法
    6)薬物の溶解度(溶出試験に用いられる各
    pH(水を含む)での溶解度)
    7)難溶性医薬品の場合,原薬の粒子径あるいは比表面積及びそれらの測定方法
    8)結晶多形がある場合,多形の種類と溶解性
    9)他の特記事項(例えば,
    pka, 物理化学的安定性など)
     
    2.試験結果
    1)要旨
    2)溶出試験:
    a.試験条件の一覧表:装置,撹拌速度,試験液の種類と量
    b.分析法:方法の記述,バリデーションの結果
    c.装置のバリデーションの結果
    d.結果
    ア.標準製剤を選択するための予試験の結果 表:各試験条件における個々の製剤の溶出率,各ロットの平均値と標準偏差
    図:各試験条件における各ロットの平均溶出曲線を比較した図
    イ.試験液を選択するための試験の結果
    ウ.標準製剤と試験製剤の比較結果 表:各試験条件における個々の製剤の溶出率,試験製剤及び標準製剤の平均値と標準偏差
    図:各試験条件における試験製剤,標準製剤の平均溶出曲線を比較した図
    3)生物学的同等性試験

     本試験について,以下の項目について記載する.予試験については,本試験の試験法を設定するのに必要とした項目を記載する.
    a.試験条件

    ア.被験者:年齢,性,体重,その他に臨床検査などで特筆すべき事項があれば記載する.胃液酸度の測定データがあれば記載する.
    イ.投与条件:絶食時間,投与時の水の量,服用後の食事時間.食後投与のときは,食事のメニューおよび内容(蛋白,脂質,炭水化物,カロリーなど),摂食後から投与までの時間を記載する.
    ウ.分析法:方法の記述,バリデーションの結果
    b.結果
    ア.個々の被験者のデータ
    表:試験及び標準製剤の各時間における血中濃度,CmaxCtAUCtAUCtAUCkel及びkelを求めた際の測定点と相関係数,tmaxMRT.いずれも,未変換のデータを示す.
     
    Cmax及びAUCtについては個々の被験者における標準製剤に対する試験製剤の比を記載する.
    図:個々の被験者で両製剤の血中濃度推移を比較した図(原則として普通目盛りのグラフに表示すること)
    イ.平均値および標準偏差 表:試験及び標準製剤の各時間における血中濃度, CmaxCtAUCtAUCtAUCkeltmaxMRT.いずれも,未変換のデータを示す.
     
    CmaxAUCtについては試験製剤の標準製剤に対する比を記載する.
    図:標準製剤及び試験製剤の平均血中濃度推移を比較した図(原則として普通目盛りのグラフに表示すること)
    ウ.統計解析および同等性評価   CmaxCtAUCtAUCtAUCtmaxMRTkelなどについて,必要に応じて変換又は未変換データの分散分析表を記載する.CmaxAUCt及びAUCtについては,90%信頼区間及び分散分析表から計算した残差変動(CVで表す)を記載する.その他のパラメータについては,標準製剤と試験製剤の平均値が等しいとおいた帰無仮説に基づく検定結果を記載する.
    エ.薬物動態学パラメータの解析情報
     デコンボルーションを用いるときには,使用計算プログラム名,アルゴリズム,薬物動態学モデルおよび適合性を示す情報などを記載する.
    オ.その他
     脱落例の情報(データ,理由),被験者の観察記録
    4)薬力学的試験
      生物学的同等性試験に準じる.
    5)臨床試験
      生物学的同等性試験に準じる.  
    B.経口徐放性製剤
     
    I.標準製剤と試験製剤
     
    1.標準製剤
       原則として先発医薬品の3ロットについて,第3章,B.第I項に従った溶出試験(但し,毎分50回転のパドル法のみ,また,試験回数は6ベッセル以上)で予試験を行い,ロット間で溶出性の差が最も大きくなる条件において,中間の溶出性を示すロットの製剤を標準製剤とする.
    2.試験製剤
       徐放性製剤の後発医薬品は,その形状,比重,放出機構が先発医薬品のものと著しく異ならないものとする.後発医薬品のロットの大きさ及び含量又は力価は経口通常製剤及び腸溶性製剤の項に従う.
       試験製剤の溶出性は,標準製剤の溶出性と類似していなければならない.溶出性の類似は,以下の条件で,経口通常製剤及び腸溶性製剤の項に準じて試験を行い,判定する.回転バスケット法と崩壊試験装置法は,いずれか一つを選択し,選択した理由は明記する.試験時間は,通常,
    pH 1.2では2時間,その他の試験液では少なくとも24時間とする.但し,標準製剤の平均溶出率が85%を越えた時点で試験を終了することができる.  
     
      装置 回転数(rpm)  pH    その他
    パドル50 ア 1.2
    イ 3.0〜5.0a)
    ウ 6.8〜7.5a)
    エ 水
    ポリソルベート80,1.0%添加
    100  
    200  
    回転バスケット100  
    200  
    崩壊試験30b) デイスク無し
    30b) デイスク有り

    a)24時間で標準製剤の平均溶出率が85%以上溶出する条件で,溶出の遅い試験液を選択する.いずれの試験液においても,標準製剤が24時間までに平均85%溶出しない場合には,最も速い試験液を選択する.b) ストローク/分
     
     上記の溶出試験の全ての条件で,標準製剤の平均溶出率が30%,50%,80%附近の適当な3時点において,試験製剤の平均溶出率が標準製剤の平均溶出率±15%の範囲にあるときに,溶出性が類似していると判定される.但し,pH 1.2において2時間で30%以上溶出しない場合には,2時間の平均溶出率で比較する.  
    II .生物学的同等性試験
     
    1.試験法
     絶食及び食後の単回投与で試験する.食後投与試験では,高脂肪食(900 kcal以上,且つ,総エネルギーに対する脂質のエネルギーの占める割合いは35%以上)を20分以内に摂り,食後10分以内に製剤を投与する.絶食投与で重篤な有害事象の発現頻度が高くなる場合には,絶食投与に代えて経口通常製剤及び腸溶性製剤における低脂肪食を用いた試験に準じて,試験を行う.
       上記以外の諸条件は,経口通常製剤及び腸溶性製剤の試験法に準じる.
    2.評価法
    1)生物学的同等性の範囲,パラメータ,対数変換及び統計学的手法
       経口通常製剤及び腸溶性製剤と同じである.
    2)同等性の判定
    試験製剤と標準製剤のAUC及びCmaxの対数値の平均値の差の90%信頼区間が,log(0.8)log(1.25)の範囲にあるとき,試験製剤と標準製剤は生物学的に同等と判定する.
    なお,上記の判定基準に適合しない場合でも,試験製剤と標準製剤のAUC及びCmaxの対数値の平均値の差がlog(0.90)log(1.11)であり,第3章,B.第I項に従った溶出試験で規定するすべての条件で,標準製剤の平均溶出率が30%,50%,及び80%付近の適当な3時点において,試験製剤の平均溶出率が標準製剤の平均溶出率±10%の範囲にある場合には,生物学的に同等と判定する.但し,この規定が適用されるのは,本試験で総被験者数20名(1群10名)以上,あるいは本試験及び追加試験を併せて総被験者数30名以上が用いられた場合に限られる.
    参考パラメータの評価については,経口通常製剤及び腸溶性製剤の項に準じる.
     
    III.薬力学的試験及び臨床試験
     生物学的同等性試験の実施が困難なときは,薬力学的試験又は臨床試験で同等性を評価する.試験は経口通常製剤及び腸溶性製剤に準じて行う.
    IV.生物学的同等性試験結果の記載事項
    比重,形状,放出機構が先発医薬品と著しく異ならないことを示す記述を行う.その他は,経口通常製剤及び腸溶性製剤に準じる.
     
    C.非経口製剤
     
    I.標準製剤と試験製剤
     先発医薬品の3ロットについて,製剤の特性に応じた適当な溶出試験又はそれに代わる物理化学的試験を行い,中間の特性を示したロットの製剤を標準製剤とする.
    試験製剤のロットの大きさ及び有効成分の含量又は力価は,経口製剤に準ずる.
    II.生物学的同等性試験
     経口通常製剤及び腸溶性製剤又は経口徐放性製剤の項に準じる.但し,生物学的同等性の判定には溶出試験又は他の物理化学的試験の結果は用いない.  
    III.薬力学的試験及び臨床試験
    経口製剤に準じて試験を行う.一部の作用緩和な局所(皮膚など)適用製剤で,ヒトにおいて同等性を証明することが困難な場合に限って,動物を使用して薬力学的試験を行うことができる.外用殺菌剤では,適当なin vitro効力試験を用いることができる.薬力学的試験においては,薬理効果の時間的推移を比較できることが望ましい.
    IV.溶出試験又は物理化学的試験
    標準製剤と試験製剤を比較するために,製剤の特性に応じた適当な溶出試験又はそれに代わる物理化学的試験を行う.
    V.生物学的同等性試験結果の記載事項

       経口通常製剤及び腸溶性製剤又は経口徐放性製剤の項に準じる.
     
    D.同等性試験が免除される製剤.
     
       使用時に水溶液である静脈注射用製剤.

    付録 パラメータの略号一覧表

    Ae t     最終サンプリング時間tまでの累積尿中排泄量
    Ae 無限大時間までの累積尿中排泄量
    Aet 定常状態に達した後の一投与間隔(t)内の累積尿中排泄量
    AUC 血中濃度−時間曲線下面積
    AUCt 最終サンプリング時間 t までのAUC
    AUCt 定常状態に達した後の一投与間隔(t)内のAUC
    AUC 無限大時間までのAUC
    Cmax 最高血中濃度
    Ct 定常状態における投与後t時間での血中濃度
    F 基準製剤(水溶液又は静脈内投与)のバイオアベイラビリティに対する被験製剤のバイオアベイラビリティの比率
    kel 消失速度定数
    MRT 平均滞留時間
    tmax 最高血中濃度到達時間又は最高尿中排泄速度到達時間
    Umax 最大尿中排泄速度
    Ut 定常状態における投与後 t 時間での尿中排泄速度