II. 生物学的同等性試験
   1. 試験法

Q-8.「消失半減期の非常に長い医薬品」とは、どのような医薬品をさすのか。
(A) tmaxに消失半減期の3倍を加えた時間が72時間以上となる薬物のことをいう。

Q-9.被験者の数が多くて試験を1度に実施することが困難なときには、試験を2度に分けて、または2施設に分けて実施し、データを併合して解析してよいか。
(A)はじめから試験を2つに分けることを計画しており(例数追加試験ではない)、2つの試験間で実施期間がほぼ同じであること、プロトコールや分析法が同じであること、人数にかたよりがないことなどが守られていれば、一つの試験とみなして解析することができる。

Q-10.予試験のデータで生物学的同等性を示すことができたきとき、本試験は実施しなくてよいか。
(A)新ガイドラインの基準を満たした試験が行われていれば、予試験の結果をそのままヒト生物学的同等性試験のデータとして評価に用いることができる。

Q-11.例数追加試験を行った場合には、データがどのようになっていれば、本試験と例数追加試験のデータを合わせて解析することができるか。また、予試験の結果を例数追加試験として取り扱っていいか。
(A)異なる薬物の臨床効果を比較する通常の臨床試験と異なり、生物学的同等性試験では、本試験と例数追加試験との間でプロトコールが共通しており、標本の大きさがほぼ等しければ、2つの試験結果が著しく異なるこということは生じにくいと考えられるので、新ガイドラインにおいても例数追加試験を認めることにした。但し、これは必要以上のヒト試験を極力避ける目的から行う例外的な措置であり、生物学的同等性試験を逐次検定法で行ってよいとしたわけではないので、例数追加試験は1回に限る。1回の試験で結論を得ることを目標にして、十分な数の被験者によって試験を開始すべきである。
 試験結果(2つの製剤のバイオアベイラビリティの比)及び残差の分布が2つの試験間で著しく異ならないのであれば、2つの試験結果を合わせて解析することができる。
 例数が不足するために本試験で結論が得られず例数追加試験を行う場合には、その旨を本試験を始める前にプロトコールに定めておく。予試験データを例数追加試験データとして利用する場合には、予め本試験を始める前に、それをプロトコールに定めておかなければならない。
 なお、追加試験では検定の多重性による第一種の過誤の確率(α)の増大が問題になるが、生物学的同等性試験においては次のような理由によりあまり問題にしなくてよいであろうと言われている。本来生物学的に非同等な製剤の場合には、バイオアベイラビリティの平均値の比が第一段階で生物学的に同等の領域に入り、第二段階の例数追加試験に踏み切る確率は大きく見積もっても50%であり、例数追加試験によるαへの寄与は高々2.5%である。バラツキの大きい薬物の第一段階でのαは5%よりも小さいと考えられるので、例数追加試験によるαの増大はそれ程危惧しなくてもよい。(K.F. Karpinski: Ed. by I.J. MaGilveray et al., Proceedings Bio International '89, Issues in the evaluation of bioavailability data, October 1-4, 1989, Pharma Medica Research Inc., Toronto, Canada, p. 138 (1990))

Q-12.被験者は健康成人志願者とあるが、年齢、性別、体重、胃液酸度などの基準を示してほしい。
(A)健康と判断される人であれば、年齢、性別、体重などについては特に規定を設けていない。胃液酸度についても特に問わない。

Q-13.低胃酸の被験者の選択方法、低胃酸の基準などを示してほしい。
(A)簡易な評価方法としてGA-テストがある。(供給元:国立医薬品食品衛生研究所薬品部)。この方法は、pH5.5付近で低胃酸と正常胃酸を区別するものである。この方法で低胃酸と判定された場合でも、正常胃酸の人が低胃酸と判定された可能性も否定できないので、その場合は検査を繰り返すことが望ましい。また、臨床試験において用いられる方法には、ファイバー状の pH メータの挿入による直接的な測定方法、挿入した胃管を通して採取した胃液の pH を測定する方法などがある。これらの方法における低胃酸と正常胃酸との区別は、それぞれの検査法の規定に従うか、pH5.5を識別の指標とする。従来の検討結果では、高齢になるほど低胃酸被験者の比率が高くなる。20歳代では10%以下である。また、低胃酸と確定された場合、かなりの確率で低胃酸状態が継続する。

Q-14.医薬品の適用集団又は低胃酸の被験者による試験は不要ではないか。また、適用集団が限られているとは、具体的にどのようなことを意味するのか示してほしい。
(A) 医薬品の適用集団が限られているとは、医薬品が特定の年齢層や性別の患者に、高い頻度で適用される場合を意味する。適用集団には、健康人も、患者も含まれる。
 特定されない集団から募った健康志願者と適用集団とでは、バイオアベイラビリティに影響を及ぼす因子が異なり、製剤間のバイオアベイラビリティの差も、両者間で異なる可能性がある。したがって、いくつかの溶出試験条件の一つ以上で製剤間に著しい差があるとき、適用集団においてバイオアベイラビリティの差が生じる可能性が無いとは言えない。そこで、そのような場合には、「医薬品の適用集団」を対象とした生物学的同等性試験を実施することが必要である。
ただし、特定されない集団から得られた結果から、適用集団としてのデータを抽出することは統計学上適切ではない。
 一方、胃液酸度については、低胃酸の人が多いという欧米では見られない日本の特殊事情があるので、pH 6.8における平均溶出率に著しい差がある場合には低胃酸群の被験者を対象として、生物学的同等性試験を実施する必要がある。以下の文献に、製剤間のバイオアベイラビリティの差が、正常酸群と低胃酸群とで異なった例が報告されている。
  • H. Ogata et al., The bioavailability of diazepam uncoated tablets in humans. Part 2: Effect of gastric fluid acidity. Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. Toxicol., 20, 166 (1982).
  • N. Aoyagi et al., Bioavailability of sugar coated tablets of thiamine disulfide in humans. I. Effect of gastric acidity and in vitro correlation. Chem. Pharm. Bull., 34, 281 (1986).
  • H. Ogata et al., Bioavailability of metronidazole from sugar-coated tablets in humans. I. Effects of gastric acidity and correlation with in vitro dissolution rate. Int. J. Pharm., 23, 277 (1985)

Q-15. 旧ガイドラインでは「薬効又は副作用などが強いなどの理由で、健康人での試験が望ましくない場合」には、動物試験で生物学的同等性を示すことになっていたが、新ガイドラインでは「当該医薬品の適用患者で試験を行う」ことになった。患者を被験者とすることには倫理的に問題があるのではないかと考えられるが、変更された理由を説明してほしい。また、患者を対象とする試験ではバラツキが大きくなると予想されるが、特別の判定基準はないのか。
(A) 現在までに行われた研究によれば、ビーグル犬などの動物を用いた生物学的同等性試験による結果は、必ずしもヒト生物学的同等性試験の結果と一致しないことが指摘されている。薬効又は副作用などが強い医薬品は、同等性の評価を特に厳密に行うことが求められる医薬品であるので、動物ではなくヒトによる試験によって生物学的同等性が保証されなければならない。治療上の同等性が保証されない医薬品を臨床に供給することは出来ないという考えに基づいて、変更が行われた。
 患者を対象とした生物学的同等性試験をGCPに従って行うならば、倫理上の問題が生じることは考えにくい。患者を対象として生物学的同等性試験を実施するに当たって、治療の中断が患者に不利益を与える場合には、試験対象医薬品以外の医薬品や治療は通常通り続行しながら、試験を行う。また、試験対象の医薬品についても、定常状態で試験を行うことができる。
 患者を対象とした試験においても、判定の基準は健康人による試験と同じである。

Q-16. 遺伝的多形がある場合に、クリアランスが大きい被験者で試験を行うとあるが、なぜか。クリアランスの大きさの判定はどのようにするのか。また、クリアランスの大きい被験者のデータを用いる場合、(1)あらかじめ被験者をクリアランスでスクリーニングしておくのか、(2)得られたデータからクリアランスの大きい被験者のデータのみを用いるのか、具体的な考え方を示してほしい。
(A) 文献あるいは蓄積されたデータから、予め対象医薬品に遺伝的多形のあることが分かっている場合にのみ、クリアランスが大きい被験者で試験を行うことができる。試験からクリアランスの小さな被験者の排除を奨めるのは、被験者の安全性を確保するため、及び、クリアランスの大きい被験者の方がバイオアベイラビリティの差の検出感度が優れているからである。クリアランスの大きさの判定は遺伝子上の情報に基づく判断を必要とせず、統計上の判断で外れ値の検定に従って削除するのでよい。被験者の選択は(1)の方が望ましいが、(2)でもよい。但し、(2)の場合には、試験を行う前にプロトコルにおいて「遺伝的多形のためにクリアランスの小さい被験者のデータを削除することがある」とうたっていなければならない。被験者の中からクリアランスが特に小さい被験者のデータを(2)の方法によって落とした場合、例数不足となることがあり、追加試験が必要となることも考えられる。

Q-17. 「食後投与」において、20分以内に食事を終了することを条件として、被験者に一律に食事開始後50分に製剤を投与してもよいか。
(A) 食事が終了した時間から30分後に投与することが重要であるので、被験者に一律に食事開始後50分に製剤を投与するのは望ましくない。

Q-18. 絶食投与ではバイオアベイラビリティが著しく低いか又は重篤な有害事象の発現頻度が高い医薬品の場合には、新ガイドラインでは食後投与で試験を行うとある。試験製剤の溶出速度が標準製剤と著しく異なる製剤については、低胃酸群の被験者又は適用集団の被験者を対象にして、食後投与による試験を実施してよいか。
(A) 通常製剤のバイオアベイラビリティの製剤間の差は、絶食投与に比較し食後投与の方が小さくなる傾向がある。そのため、溶出速度が標準製剤と著しく異なる製剤の生物学的同等性を低胃酸群の被験者又は適用集団の被験者を対象にして、食後投与の試験で適切に評価することはできない。

Q-19. 検出限界が高いなどの分析上に問題がある場合には、多回投与又は高用量単回投与のいずれを優先させるのか。
(A)  高用量単回投与の方が多回投与よりもCmaxの差の検出力が優れているので、高用量単回投与を優先する。

Q-20. 多回投与試験において1日3回投与の医薬品では、等間隔(例えば、10:00am、6:00pm、2:00am)で長期間医薬品を投与し続けることは実質的に不可能である。このような場合、どうすればよいか。
(A) 原則は等間隔投与であるが、やむをえない場合には、被験製剤の投与開始から体液採取の前前日までは用法に従った間隔で投与し、体液採取日の前日からは、等間隔投与を実施するのでよい。

Q-21. 尿を採取体液にすることが出来るのは、どのような場合か。
(A) 尿中に未変化体あるいは活性代謝物が排泄され、それらを測定することができる場合である。ただし、サンプリング間隔の問題でtmax及びUmaxが適切に評価できないような薬物の場合には、尿で評価することは適切ではない。

Q-22. 不活性な代謝物を測定対象とすることが出来ない理由は何か。
(A) 生物学的同等性試験は治療学的な同等性を保証することを目的としているので、治療効果に関与しない不活性な代謝物で生物学的同等性を評価することは適切ではない。

Q-23. 原則として未変化体を測定することとあるが、プロドラッグの場合には、プロドラッグを測定して評価してもよいか。
(A) 2つの製剤間でプロドラッグのバイオアベイラビリティが等しいときには、互いに生物学的に同等である。プロドラッグを用いて評価する方が活性代謝物を用いて評価するよりも通常バイオアベイラビリティの差をよく検出できるので、プロドラッグの分析が可能な場合には、プロドラッグの測定を行うことが推奨される。しかし、活性代謝物を測定し、これを評価に用いる場合には、プロドラッグの成績は評価に用いる必要はない。

Q-24. 抗生物質はバイオアッセイと機器分析のいずれで測定するのが適切か。
(A) 生物学的同等性試験においては、活性を有する化学種を特異的に分析できる方法を用いることが原則である。複数の化学種の和として測定された値を生物学的同等性の評価に用いることは適切ではない。抗生物質も機器分析など特異的な方法で分析することが望ましいが、やむを得ぬ場合にはバイオアッセイで測定しても構わない。

Q-25. 活性を有する代謝物に非抱合体と抱合体があるときには、評価は非抱合体のみで行うのか、両者を合わせたもので行うのか。
(A) 抱合体が活性成分ではないときには、これを測定対象物に含めてはいけない。抱合体と非抱合体がともに活性を有する場合には、いずれか科学的に妥当な方を選択し、測定評価に用いる。抱合体と非抱合体とを合わせて測定すべきではない。

Q-26. 「吸収速度に依存した選択的吸収又は消失が起こる場合は主薬理活性の強い異性体を測定する」とあるが、具体的にはどのような薬物を指しているのか。
(A) 吸収速度の差によって、生物学的同等性判定のパラメータのS/R比が著しく変動することが文献で報告されている薬物のことを指している。

Q-27. 分析法バリデーションの具体的な方法を示してほしい。
(A) 生体試料を扱う分析法のバリデーションでは、主として次のような事柄を検討し、その要約を生物学的同等性試験結果の記載事項に記述する。
  • 保管条件下での試料中の分析対象物の安定性(凍結/解凍サイクルにおける安定性も含む。)
  • 真度(回収率で表してもよい)
  • 精度(併行精度と室内再現精度)
  • 特異性(個体間の差を考慮して複数の個体から採取した試料で検討する)
  • 検量線に関する検討
  • 定量限界
日常の分析法の管理を行う他、次に示す事柄は試験に先立ち予め基準を設定しておかなければならない。なお、日常の分析法のバリデーション結果については、生物学的同等性試験結果の記載事項に含める必要はない。
  • 分析結果を許容する基準
  • 再分析を必要とするときの基準
分析法バリデーションを行うときには次の文献を参考にするとよい。
  • V.P. Shah et al., Analytical methods validation: Bioavailability, bioequivalence and pharmacokinetic studies. J. Pharm. Sci., 81, 309 (1992).
分析結果の許容に関しては、上記の文献の他、次の文献が参考になる。
  • ISO 5725-6 Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and results - part 6: Use in practice of accuracy values. (日本語版(JIS)が発行される予定)
  • JIS z 8402-1991「分析・試験の許容差通則」(日本規格協会発行)



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