医薬品品質フォーラム第2回シンポジウム



医薬品品質フォーラム第2回シンポジウム「承認書と品質保証」の開催にあたって
医薬品品質フォーラム代表世話人   小嶋茂雄 
(徳島文理大学香川薬学部 教授)

 医薬品品質フォーラムは、医薬品の製造や品質確保に関心のある産官学の方が広く参加して、わが国における医薬品の品質保証のあり方についてフランクなディスカッションを行い、その成果を行政に生かせるような活動(米国のPQRI的な活動)を行うことを目指して活動しています。

本年1月には「日本における品質保証の課題:製剤設計と変更管理−CTD申請と新しいGMP管理への対応−」をテーマとして取り上げて第1回のシンポジウムを開催し、今後の医薬品の品質保証の上において重要なポイントとなる製剤設計と変更管理について議論いたしました。約350名もの方の参加をいただき、限られた時間の中ではありましたが、活発な議論ができたものと考えております。

今回は、改正薬事法の施行が目前に迫っていることを踏まえて、「承認書と品質保証」を討論主題とするサマーシンポジウムの開催を企画いたしました。
平成14年7月に成立した改正薬事法が、いよいよ半年後の平成17年4月から施行されます。この薬事法改正は、改めて述べるまでもなく、わが国の医薬品の承認許可制度を、従来の製造承認をベースとしたものから、欧米と同様の販売承認をベースとしたもの(医薬品を市場に供給する製造販売業者が最終的な責任を負う)へと大きく改めるものです。
これに伴って、医薬品の品質に関する承認対象事項が次の2点で大きく改められることになりました。その1つは、承認要件として、規格及び試験方法、貯蔵方法、有効期間に加えて、従来は許可要件とされていた製造管理・品質管理が追加されことであります。他の1つは、厚生労働省令で定める軽微な変更については、承認事項一部変更申請(一変申請)を必要とせず、届け出でよいとされたことです。

届け出制度の導入は、変更管理の効率化を可能とするものですが、新たに承認要件となる製造管理・品質管理の項に記載すべき事項の範囲、ならびに軽微な変更の内容は明確にされていませんでした。来年春の改正薬事法施行を控えて、これらの事項の内容がどうなるのかが注目されておりましたが、8月2日に審査管理課から「改正薬事法に基づく承認書における医薬品、医薬部外品、化粧品の製造方法等に係る記載要領及び記載変更に関する取扱いについて(案)」が発出され、パブリックコメントが受付けられています。

一方、これまで14年間のICHの活動により日米欧三極間で調和に達した品質分野の25のガイドラインが既に実施の段階に入っています。また、昨年11月のICH6(大阪)では、製剤開発(Q8)および品質リスク管理(Q9)が品質分野の新たな調和課題として取り上げられることが決まりました。これらの調和課題は、医薬品の品質は、開発/承認審査の段階から生産/査察までを見通したシステム(Total Quality System)に基づいて保証すべきであるとする国際的な品質保証の流れに沿ったものです。

ICHなどの国際的な品質保証の流れも踏まえつつ、わが国に相応しい承認書のあり方や機能についてディスカッションを行うことは意義の大きいことと考えています。医薬品のライフサイクルを通じて効果的な品質保証を実施するためには、どんな内容を承認書に記載しておくべきか、記載内容の変更管理は如何にして行うべきかについて議論を深めたいと思います。
 本シンポジウムで議論されたことを参加者が受け止めて、今後の医薬品開発や製造管理あるいは行政に反映されることを願っております。

医薬品品質フォーラムは、医薬品の製造や品質確保に関心のある方が産官学を問わず広く参加して、行政から産業界への一方向的な情報伝達を行うのではなく、それぞれの立場から本音をぶつけ合うことによって、建設的なディスカッションを活発に行える場とすることを目指しています。医薬品の品質確保に携わる皆さんが、今後の承認書のあり方等に関して、積極的に意見を述べていただくことが、国際的にも整合性のある科学的な品質保証制度の確立に通じる道だと考えています。
活発なディスカッションを期待しております。