1デオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)の一斉分析法
妥当性確認のためのコラボラティブスタディ結果報告書
1)目的
消化器系および免疫系障害等の毒性があるかび毒、デオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)は、主に小麦及び大麦等を汚染する。現在、我が国においては、DON およびNIVの両汚染が頻度高く報告されていることから、DON およびNIVの一斉分析法による測定が有効であると思われる。
ついては、DONとNIVの一斉分析法について、現通知法を用い、DONとNIVの一斉分析法を紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-UV検出法)および液体クロマトグラフ・質量分析計を用いる方法(LC-MSまたはLC-MS/MS法)で検討し、コラボラティブスタディーを実施することによってその妥当性を評価した。
2)方法
(1)試験試料
本試験に用いた非汚染および汚染小麦の試験試料は、(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター赤かび病研究チーム長中島隆博士 より提供して頂いた。LC/MS/MSで測定した結果、ブランク試料は DON/NIVともに<0.005mg/kg汚染試料はDON 0.96 mg/kg とNIV 1.03 mg/kgであった。
(2)試験方法
(i) 前処理法
小麦試料の前処理は、通知法「小麦のデオキシニバレノールに係る暫定的な基準値の設定について」(平成15年7月17日食安発第0717001号)に基づいて行った。前処理カラムとして、ローマ社製 MultiSep #
227Trich+および昭和電工(株)社製MFT-1500の2種類の多機能カラムを用いた。
(A)添加回収試験
小麦ブランク試料を用いて、DONおよびNIVそれぞれにおいて1.0 mg/kg, 0.5 mg/kg, 0.1 mg/kgの3濃度の添加回収試験を行った。
(B)分析方法
HPLCの条件は、上記の通知法「小麦のデオキシニバレノールに係る暫定的な基準値の設定について」(平成15年7月17日食安発第0717001号)と同一の方法で行った。
LC/MS(LC/MS/MS)法はそれぞれの分析機関が持っている機種に合った方法を用いた。
(C)コラボラティブスタディ
本コラボラティブスタディの結果の信頼性および分析法の妥当性に関して、「カビ毒試験法評価委員会」で行った。
3)結果
(1)HPLC-UVを用いたDON/NIVの一斉分析法
(2)LC/MS (LC/MS/MS) を用いたDON/NIVの一斉分析法
表1-1から1-6にコラボラティブスタディの結果を示した。
平均定量値(単位) mg/kg
平均定量値(単位) mg/kg
(3)定量下限と検出下限
HPLC-UV検出法の定量下限と検出下限は、本共同試験の前に行われた予備試験によって求められたもので、表1-7に示した。
表1-7
|
検出下限 |
定量下限 |
DON |
0.05mg/kg |
0.1mg/kg |
NIV |
0.05mg/kg |
0.1 mg/kg |
LC/MS/MS法の定量および検出限界は、それぞれの機種により大きく異なったため、今回は算出しなかった。
(4)「カビ毒試験法評価委員会」による評価
得られた有効なデーターから、室内併行性(RSDr)と室間併行性(RSDR)を算出し、その値からHorRat値を評価した。本コラボラティブスタディに用いた添加量である0.1 mg/kgから1.0 mg/kgまでの範囲において、本分析法の妥当性は認められると判断された。また、2種類の多機能カラムにおける有意な分析値の差は認められず、両者とも分析法に使用するのに問題はないと判断された。
(5)コラボラティブスタディ参加機関 〔敬称略〕
1 |
鞄清製粉グループ本社 |
2 |
アサヒビール |
3 |
キリンホールディングス |
4 |
キユーピー褐、究所 |
5 |
(独)農林水産消費安全技術センター |
6 |
韓国農業科学技術院 National Institute
of Agricultural Science & Technology |
7 |
(財)日本食品分析センター |
8 |
(財)日本冷凍食品検査協会 |
9 |
神奈川県衛生研究所 |
10 |
サントリー(株) |
11 |
(財)日本穀物検定協会 |
12 |
(独)農林水産消費安全技術センター仙台センター |