デオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)の一斉分析法
1 装置
定性及び定量試験として紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフまたは、液体クロマトグラフ・質量分析計を用いる。
2 試薬・試液
次に示すもの以外は、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号)別添の第1章総則の3. 試薬・試液に示すものを用いる。
多機能ミニカラム注1)
内径12〜13mmのポリエチレン製のカラム管に、多機能カラム充てん剤(逆相樹脂、イオン交換樹脂、活性炭)約2.5gを充てんしたもの又はこれと同等の性能を有するものを用いる。
3 標準品注2) デオキシニバレノール 本品はデオキシニバレノール98%以上を含む。
融点 本品の融点は151〜153゜である。
ニバレノール 本品はニバレノール98%以上を含む。
融点 本品の融点は223〜225゜である。
4 試験溶液の調製
a 抽出法
検体を1,000μmの標準網ふるいを通るように粉砕した後、その25.0gを量り採り、200mLの共栓三角フラスコに移す。これにアセトニトリル及び水の混液(85:15)100mLを加え、10分間室温で静置する。振とう機を用いて30分間激しく振り混ぜ、50mLの共栓遠心沈殿管に入れて3,000rpmで5分間遠心分離し、上清液を抽出溶液とする。
b 精製法
多機能ミニカラムにa 抽出溶液10-20mLを入れ、毎分1mL以下の流速で流出させる。デオキシニバレノールおよびニバレノールが流出する分画注3)の約4mL をすり合わせ試験管、又は共栓付き試験管に採り、溶出液とする。
高速液体クロマトグラフ用試験溶液にあっては、溶出液の2.0mLを共栓付き試験管に正確に採り、45℃以下で溶媒を除去する注4)。上記の残留物にアセトニトリル、水及びメタノールの混液(5:90:5)1.0mLを加えて溶かした後、10,000rpmで5分間遠心分離し、上清液を試験溶液とする。
液体クロマトグラフ・質量分析計試験溶液にあっては、この溶出液の1.0mLを共栓付き試験管に正確に採り、45℃以下で溶媒を除去する注4)。上記の残留物に移動相注5)1.0mLを加えて溶かした後、10,000rpmで5分間遠心分離し、上清液を試験溶液とする。
5 操作法
@ 高速液体クロマトグラフを用いて試験を行う場合
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフを用いて、次の操作条件で試験を行う。得られた試験結果は、標準品と一致しなければならない。定量はピーク高法又はピーク面積法により行う。
操作条件例注6)
カラム充てん剤 オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)を用いる。
カラム管 内径4〜4.6mm、長さ250mmのステンレス管を用いる。
カラム温度 40℃
検出器 波長220nmで操作する。
移動相 アセトニトリル、水及びメタノールの混液(5:90:5)を用いる。
流速 0.6−1.0mL/分
A液体クロマトグラフ・質量分析計を用いて試験を行う場合
液体クロマトグラフ・質量分析計を用いて次の操作条件で試験を行う。得られた試験結果は、標準品と一致しなければならない。定量は、ピーク高法又はピーク面積法により行う。
操作条件例
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム温度:40℃
移動相:A 10mmol/L酢酸アンモニウム、B メタノール
0-5分 A 90% B 10%
15分 A 20% B 80%
20分 A 20% B 80%
21分 A 90% B 80%
流速:0.2mL/分
イオン化法:ESI(−)、APCI(−)、APPI(−)
モニターイオン(m/z ):DON;355(プリカーサーイオン)
295(プロダクトイオン)
NIV;371(プリカーサーイオン)
281(プロダクトイオン)
<注釈>
注1) MultiSep
#227Trich+ (Romer Labs社製)、Autoprep MF-T (昭和電工社製)などが使用できる。使用するカラムによって溶出パターンは異なるので、標準溶液を用いて事前に溶出量を確認する。なお、多機能カラム内には常に液が充填されているように留意する。
注2)標準溶液はアセトニトリルを加えて溶かし、調製する。標準品として液体で販売されているものも使用できる。
注3) MultiSep
#227Trich+ (Romer Labs社製) を使用する場合は、最初の流出液4mLは捨て、次いで流出する4mLを採取する。
注4)遠心エバポレーター等を使用する濃縮方法も用いることができる。
注5)グラジエント操作の場合は、初期移動相を用いる。
注6) 試料溶液中の溶存酸素がベースラインを上昇させることがあることから、溶存酸素の溶出位置とDONの溶出位置とが重ならないカラムで、NIVが10分前後、DONが20分前後に溶出するものを使用すること。DON溶出後の妨害物質は必ず溶出させること。また、ベースライン上に妨害ピークが出現する場合は、移動相に0.2mol/L酢酸アンモニウム(pH5.0)を加えることにより、ベースラインが安定する場合がある。
プロトコール
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DON/NIV試験法 |
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フロー図 |
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手 順、条 件 |
注 解 |
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試料調製 |
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試料を粉砕する |
1mm以下に調製 |
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冷凍保存する |
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試料の秤量 |
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25.0gを200mL三角フラスコに量り採る |
試料は室温にもどす |
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抽 出 |
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アセトニトリル・水(85:15)100mLを加える |
振とう機(通常速度) |
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10分間放置する |
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30分間振とう機で振とうする |
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遠心分離 |
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50mL遠沈管に移す |
50mL遠沈管 |
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3000rpm. 5分間遠心分離をする |
または同等品を使用 |
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抽 出 溶 液 |
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遠心分離後の上清液を抽出溶液とする |
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精 製 |
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MF-T1500カラムまたは |
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MultiSep#227カラムを使用 |
自然落下で可能 |
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抽出溶液適量を1mL/分の流速で流す |
抽出溶液10-20mLが必要 |
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溶出液の分取 |
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@初めに流出する4mLは捨てる。 |
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A次に流出する4mLを分取する。 |
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BHPLC:溶出液を2.0mL分取する。 LC-MS:溶出液を1.0mL分取する。 |
溶出液1.0mLは0.25g試料相当 |
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濃縮乾固 |
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45℃以下、窒素気流で濃縮乾固 |
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LCおよびLCMS測定用 |
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試験溶液 |
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HPLC; |
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H2O-MeOH-CH3CN (90:5:5) 1.0mLで溶解 |
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LC/MS; |
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移動相1.0mLで溶解 |
測定感度により適宜希釈する。 |