FDAの医薬品安全情報
FDAは[‘Zenapax’](daclizumab)の処方情報の重要な改訂を発表した。この改訂には心臓移植試験での死亡率の増加,および過敏性反応の更新情報に関する2つの新しい警告文を含む。心臓移植試験からの追加情報によって影響を受ける[‘Zenapax’]のラベリングの他の箇所についても改訂された。
警告:Cyclosporine,mycophenolate mofetilおよびcorticosteroidsを含む免疫抑制療法の一部として[‘Zenapax’]の使用は,死亡率の増加と関連性があるかもしれない。[‘Zenapax’]による同種移植拒絶反応の予防に対する,cyclosoporine,mycophenolate mofetilおよびcorticosteroidsを併用した434人の心臓移植者について行われた無作為化二重盲検プラセボコントロール試験では,6ヶ月および12ヶ月後の死亡率はプラセボを服用した患者よりも[‘Zenapax’]を服用した患者の方で増加した(6ヶ月で7% v 5%,12ヶ月で10% v 6%)。全てではないがいくつかの症例については,死亡率の増加は重篤な感染症の高い発症率に関係するようである。抗リンパ球抗体療法との併用は致命的な感染症の要因の一つかもしれない。
過敏症:アナフィラキシーを含む重篤な(24時間以内に発症)急性の過敏性反応は,[‘Zenapax’]の初回投与および反復投与両方で見られる。これらの反応は,低血圧,気管支痙攣,喘鳴音,咽頭浮腫,肺水腫,チアノーゼ,低酸素症,呼吸停止,不整脈,心停止,末梢性浮腫,意識喪失,発熱,発疹,蕁麻疹,発汗,そう痒症,および/または注射部位での反応を含む。重篤な過敏性反応が起きた場合,[‘Zenapax’]による治療は恒久的に中止しなければならない。アナフィラキシーを含む重篤な過敏性反応に対する治療措置が直ちに取られることが必要である。[‘Zenapax’]を再投与する場合,注意深く治療を継続すべきである。特に免疫抑制に関連して,このような再投与によるリスクは不明である。
臨床試験;使用上の注意:相互作用;副作用:感染症の感染率および市販後調査
成人:[‘Zenapax’]を加えたcyclosoporineおよびcorticosteroidsによる免疫抑制治療は,プラセボと比較して移植3年後の生存率が良好であった。しかしながら,cyclosporine,corticosteroidsおよびazathioprineの3剤に[‘Zenapax’]を追加投与された患者では,プラセボと比較して3年後の生存率で差は見られなかった。治療を受けたグループではどちらの研究においても,移植3年後,移植片の生着率に差は見られず,移植片機能遅延の頻度にもグループ間に差は見られなかった。
移植後3年間では,[‘Zenapax’]の追加投与は移植後リンパ腫の数を増加させない。リンパ増殖症候群および日和見感染症の発症率は限られた臨床研究試験では高くなかったが,免疫抑制療法を受けている患者ではリンパ増殖症候群および日和見感染症のリスクは増加している。
小児:11ヶ月から17歳までの小児の腎臓移植患者60人について行われたオープン・ラベルの薬物動態学的研究のデータを用い,有効性,免疫原性および安全性について解析した。この研究では,1mg/kgの[‘Zenapax’]が移植手術を受ける前に合計5回14日ごとに標準の免疫抑制療法に追加された。移植1年後,生検で確認および臨床的に推定された急性拒絶反応の発生率の合計は17%,患者および移植臓器の生存率はそれぞれ100%および96%であった。移植後3ヶ月における抗daclizumab抗体の発生率は34%であった。
加えて,次のような副作用が成人の移植患者よりも小児の移植患者で発生率が高かった:下痢,術後痛,発熱,嘔吐,高血圧増悪,そう痒症,および上気道および尿路感染。
何に使われるか?
・以下のNSCLC(非小細胞肺癌)に単剤で用いられる化学療法剤(抗癌剤)
‐白金製剤およびdocetaxel治療後に進行したNSCLC,または
‐白金製剤またはdocetaxelの治療に反応しないNSCLC
・現時点では,[‘Iressa’]がNSCLCの症状を改善するか,または延命効果があるかどうかはわかっていない。
・[‘Iressa’]はNSCLCの治療の第一次選択薬とすべきでない。NSCLCの治療に白金製剤をベースにした化学療法で[‘Iressa’]との併用において,いかなるベネフィットも示さなかった。
どのような人が服用すべきでないか?
[‘Iressa’]および[‘Iressa’]に含まれる成分に対するアレルギーがある場合も服用すべきでない。
特別な警告:
・ILD(間質性肺疾患)を起こすことがある。ILDは重篤で致命的な肺疾患である。ILDは,咳嗽や発熱の有無に関わらず,呼吸障害の症状がある。ILDは非常に短期間に重篤になることがある。
・[‘Iressa’]は肝毒性といわれる肝臓の障害を起こすことがある。
・[‘Iressa’]は角膜びらんといわれる眼の障害を起こすことがある。
下記の症状が現れたときは,直ちに医療機関に相談すること。
・重篤で頻繁な下痢,悪心,嘔吐,または食欲喪失。このような状態は脱水(体液不足)を起こす可能性がある。
・ 肺症状の悪化(息切れ,咳嗽,発熱)
・ 眼刺激
・その他の新しい症状
[‘Iressa’]を使用する前に何を主治医または医療機関に伝えるべきか?
以下の場合は医療機関に伝えること:
・肝臓に障害があるか,またはあった。
・妊娠を試みているか,妊娠中または授乳中である。
処方薬,市販薬,ビタミン剤,ハーブ系(サプリメント)など,服用中の薬全てを医療機関に伝えること。
[‘Iressa’]は特に以下の薬剤を服用中の場合,その作用に影響を与えるかもしれない。
・rifampicin,phenytoin ・warfarin ・ketoconazole,itraconazole ・ranitidine,cimetidine
起こりうる副作用は何か?
(これは[‘Iressa’]で報告されている副作用の完全なリストではない。さらに詳しい副作用については,医療機関または薬剤師が相談に応じることができる。)
代表的な副作用の例:下痢,発疹,ざ瘡,皮膚乾燥,悪心,嘔吐,そう痒,食欲喪失,脱力,体重減少。
[‘Iressa’]に関するさらに詳しい情報は,医療機関または薬剤師に尋ねてください。
FDAは喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いる持続型の気管支拡張剤であるsalmeterol含有医薬品の表示に新しい安全性情報と警告を追加を発表した。今回の改訂に関与する製品は[‘Serevent Inhalation Aerosol’],[‘Serevent Diskus’], [‘Advair Diskus’]である。これらの製品の新しい表示は,最近終了した米国の大規模な安全性試験においてsalmeterolを服用した患者の生命にかかわる喘息の症例,もしくは喘息関連の死亡のリスクがわずかであるが有意に上昇したことについて枠組み警告で記されている。
2003年1月23日,FDAはSalmeterol〔[‘Serevent Inhalation Aerosol’],42μg1日2回〕とプラセボを喘息患者に28週間投与し,効果を比較するSMART(Salmeterol Multi-center Asthma Research Trial)の中間解析の予備的な結果を発表した。それ以来FDAは,注意深く治験を再検討し,この治験により得られた新しい情報を的確に反映する表示を作成するため,治験依頼者であり[‘Serevent’], [‘Advair ’]の製造元であるGlaxoSmithKline社と綿密な作業を続けた。
SMART試験の1次エンドポイントは呼吸器関連の死亡もしくは呼吸器関連の生命を脅かす症状(例,人工呼吸器装着の必要)とした。2次エンドポイントは全ての原因による死亡,喘息関連の死亡,および喘息関連の死亡もしくは生命を脅かす症状を含むものである。治験は60,000名の患者を登録する予定であったが,その約半数の患者が参加した。その中間解析の結果を検討した後,治験依頼者は治験を中止した。解析は,[‘Serevent’]を投与された13,174人の患者およびプラセボを投与された13,179人の患者を含む。
解析によると,1次エンドポイントについて処置群間に有意な差は見られなかったが,喘息関連の死亡(13対4),喘息関連の死亡もしくは生命を脅かす症状(36対23)は,プラセボと比較し[‘Serevent’]群に高い数字が見られた。SMART試験は,人口統計的特性に基づいた結果について違いを分析するデザインを事前に行っていないが,人種および民族性に基づいた事後比較のサブグループ分析が実施された。これらの解析によると,白人患者において呼吸器もしくは喘息関連の症状の増加は見られなかったが,黒人の患者について[‘Serevent’]群に1次エンドポイントの症例(呼吸器関連の死亡もしくは生命を脅かす症状)の有意な増加があった(20対7)。加えて,喘息関連の死亡(8対1)および喘息関連の死亡もしくは生命を脅かす症状(19対4)の発生がプラセボに比較し,[‘Serevent’]を投与した黒人患者について有意に増加していた。
FDAは得られたデータに基づいて,製品添付文書の中の使用上の注意に則って使用することにより,喘息およびCOPD患者におけるsalmeterol治療のベネフィットが潜在的なリスクを上回ることを強調した。FDAは患者に対し,salmeterolもしくは他の喘息もしくはCOPD治療薬を医師との相談なしに服用を中止するべきではないことを強く勧告した。喘息やCOPDの治療薬を突然中止することは,結果として生命を脅かすこれらの疾病を重篤に悪化させることになる可能性がある。FDAはさらに,salmeterolを含む全ての喘息治療薬は患者の喘息の重篤度を考慮し総合的な計画の一部として処方されるべきであり,疾病およびその適切な治療について患者に十分な説明をするべきであることを強調した。
この概要は,各医薬品製剤の禁忌,枠組み警告,警告,使用上の注意,副作用の箇所の表示の改定を含む。簡易版(表1)には医薬品名と変更箇所のリスト,また詳細版には変更になった項目とその小見出し,および禁忌または警告の,新規または更新された安全性情報が掲載されている。
CDCは潜伏結核感染のpyrazinamideおよびrifampinの併用療法において,この2剤の併用に関連した肝障害から入院加療や死に至る割合が高いため,医療従事者に勧告の変更を通知した。
疾病予防管理センター(CDC)は,潜伏結核感染の治療にrifampinとpyrazinamide(PZA)を2ヶ月間毎日あるいは週に2回服用している患者での重篤な肝障害を以前に報告した。その報告に基づいてCDCは,この治療を行う際にはモニタリングするよう医師に警告した。同併用療法が関連する重篤な肝障害の発現率を推定し,より正確なデータを潜伏結核感染の治療に供するために,2000年1月から2002年6月の間に潜伏結核感染の治療に同併用療法を受けた米国の患者群からのデータがCDCにより収集され,2003年6月6日までに報告された。この報告書は,同併用療法に関する肝障害による高い入院率と死亡率が示唆されたその分析を要約したものである。米国胸部学会(ATS)とCDCはこれらの知見に基づき,通常は潜伏結核感染に同併用療法を用いないように勧告した。改定されたATS/CDCの勧告に対し,米国感染症学会(IDSA)も支持を表明している。臨床家に,潜伏結核感染の治療には他の推奨される治療法を用いるよう勧告している。Rifampinとpyrazinamideは,活動性結核の治療に多剤併用療法の一部として用いるべきである。
サーベイランスに向け,CDCは重篤な肝障害の症例を「潜伏結核感染を同併用療法で治療した患者が入院または死亡に至った場合」と定義した。2000年10月から2003年6月の間,CDCは48例の報告を受けた。そのうち33例(69%)は治療開始後2ヶ月で発現した。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染していた2例を含めて11例(23%)が死亡した。
潜伏結核感染の治療に同併用療法を受けた患者での重篤な肝障害の発現率を推定するため,二段階の後向き調査が実施された。2001年12月(第一段階)にCDCは,潜伏結核感染の治療に同併用療法を処方している医療機関を調査するため,全50州と12の大都市のTB-control programsに電子メールで質問状を送った。全管理者が回答し,2002年2月にCDCは,各医療機関における同併用療法の使用を確認した。2002年9月(第二段階)にCDCは,第一段階で確認された150の医療機関に第二の質問状を送付し,2000年1月から2002年6月の全コホート・データを要求,109(78%)の医療機関が2003年6月6日までに回答した。
調査期間中に潜伏結核感染の治療に同併用療法を開始したと報告された7,737人のうち,5,980人(77%)が毎日服用し,1,757人(23%)が週に2回服用していた。204人の患者がaspartate aminotransferase(AST)の濃度が標準値の上限の5倍以上になり,同併用療法を中止した(26.4人/治療開始者1,000人;95%信頼区間(CI) = 22.8−30.0)。さらに146人が肝炎の症状のため,同併用療法を中止した(18.9人/治療開始者1,000人;95%CI = 17.4−20.4)。
受動的サーベイランスで,CDCに報告された重篤な肝障害の48例中30例が調査の第二段階においても確認された。確認されなかった18例のうち6例が調査期間外に肝障害を起こし,5例の医療機関は質問状に返答せず,7例(6例は個人病院の症例)は調査の第一段階では確認されなかったものである。確認された30例中,23例(77%)が回復,7例(23%)が死亡した。この調査期間中の入院と死亡の推定率は,治療開始者1,000人中それぞれ3.0人(95%CI = 1.8−4.2),0.9人(95%CI = 0.2−1.6)であった。