FDAの医薬品安全情報
FDAは,ephedraを含む栄養補助食品の販売を禁止すると発表した。また,消費者にephedra製品の使用を直ちに止めるように注意を呼びかけた。
今回のFDAの措置に関するQ&A
Questions and Answers about FDA's Actions on Ephedra Dietary Supplements (2003.12.30)
FDAは,薬理作用,安全性や有効性に関する臨床研究,新しく入手した副作用報告,文献,RAND(独立した科学系研究所)の報告書等,ephedraのリスクとベネフィットに関する膨大な証拠文献を可能な限り入手し検討した。また,2003年2月にFDAがephedra関連の健康リスクについて求めた多数のパブリックコメントについても検討した。その結果,短期の体重減少を除き,ephedraの有効性に関する証拠はほとんど見られなかった。一方,血圧上昇あるいは循環器系の緊張をもたらすことが確認された。これらの反応は心臓の不調や発作等重大な健康障害につながりかねない。
Ephedra(別名:麻黄 Ma huang)は天然の植物由来で,主要な有効成分はephedrineである。化学合成されたephedrineは,連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food,Drug and Cosmetic Act)によって医薬品として規制されている。一方,天然ephedraを含む栄養補助食品は栄養補助食品健康教育法(DSHEA)で規制されている。
近年,ephedra製品は,ダイエット,運動能力やエネルギー増進の目的で広く使用されている。今回の発表は,1997年6月にFDAが取った最初の提案(ephedra含有栄養補助食品は有害なので,7日間以上使用してはならないとする警告表示を要求)から始まった一連の措置の一環である。FDAは2000年にはこの提案を一部改正し,2003年2月にはephedra製品に関して強力な規制措置の検討を表明していた。
Ortho-McNeil社は,[‘Topamax’]が高クロール性のアニオンギャップが正常な代謝性アシドーシス(血清中の重炭酸イオンの減少)を起こすという警告を含めた[‘Topamax’]錠/スプリンクルカプセルの処方情報を改訂した。[‘Topamax’]は,成人および2歳以上の小児の部分発作,全身性強直性・間代性発作,レノックス・ガストー症候群関連発作の補助療法として承認,販売されている。
高クロール性アニオンギャップが正常な代謝性アシドーシスのデータが,250万人以上の患者における市販後の経験およびプラセボ比較試験より得られている。臨床試験では,血清中の重炭酸イオンの持続的減少は,topiramate群で23-67%,プラセボ群で1-10%であった。臨床試験における血清中の重炭酸イオン値の著しい低下は,topiramate群で3-11%,プラセボ群で1%未満であった。
治療期間中はいつでも発生する可能性はあるが,通常,血清中の重炭酸イオンの低下はtopiramateの開始直後に起きる。血清中の重炭酸イオンの低下は大抵,軽微から中等度で,成人では1日400mgの投与で,小児では6mg/kg/日の投与で,平均4mEq/L低下する。まれに,10mEq/L以下に減少する場合もある。
アシドーシスの素因となる状態や治療(腎疾患,重篤な呼吸障害,てんかん重積状態,下痢,外科手術,ケトン体を生成するような食事または薬剤等)も,topiramateの重炭酸イオンの低下に相加的に作用している可能性がある。
急性および慢性の代謝性アシドーシスの徴候には,過換気,疲労および食欲不振等の非特異的症状,また不整脈や昏迷等のもっと重篤な後遺症が含まれる可能性がある。慢性の治療されていない代謝性アシドーシスは,腎結石症や腎石灰沈着症のリスクを増大し,骨軟化症(小児ではくる病といわれる)および/または骨折のリスクが高い骨粗鬆症が発現する可能性がある。小児患者における慢性代謝性アシドーシスは,成長率を低下させる可能性もある。成長率の低下は,最終的な最高身長を低減するかもしれない。成長および骨関連の後遺症に関するtopiramateの影響の系統的研究は,行われていない。
Topiramateによる治療中は,治療開始前および定期的に血清重炭酸イオンを測定することを推奨する。代謝性アシドーシスが発現し持続した場合は,topiramateの投与量を漸減または中止することを検討すべきである。アシドーシスが持続しているにもかかわらず,topiramateの投与続行を決定した場合は,アルカリによる治療を考慮しなければならない。
Eli Lilly社は,パーキンソン病の徴候および症状の管理におけるlevodopa/carbidopaの補助療法として用いられる[‘Permax’] (pergolide mesylate)による治療を受けている患者が,自動車運転等の日常動作中に入眠する可能性について通知した。[‘Permax’]を服用している患者で傾眠はよく発生し,多くの臨床専門医が前もって傾眠傾向がある場合のみ日常動作中に入眠すると考えているが,入眠した患者の多くがどのような警告も認識していなかった。医療従事者にこのような事象に関連して起きる可能性のある重篤なリスクへの注意を喚起し,医療従事者は傾眠傾向がないか患者を注意深く評価し,患者とよく話し合うべきである。
この重要な安全性情報を伝えるため,[‘Permax’]の添付文書の警告の項と使用上の注意の患者向け情報の部分を改訂した。
出生から1ヶ月以内の新生児における細菌性結膜炎の治療に対する医薬品承認事項追加変更(sNDA)19-992/SE5-017は,認められない。
◇第4相試験および/あるいはRisk Management Stepsの勧告第4相試験および/あるいはRisk Management Stepsの実施は勧告しない。
Ciprofloxacinはフルオロキノロン系の抗菌剤である。Ciprofloxacin点眼液は,角膜潰瘍および結膜炎における感受性菌による感染症の治療に,米国で承認された。[‘Ciloxan’](ciprofloxacin hydrochloride)点眼液 0.3%は,1歳以上の患者に対する角膜潰瘍および結膜炎治療に適応があり,一方,[‘Ciloxan’]眼軟膏0.3%は,2歳以上の結膜炎治療にのみ適応がある。
Ciprofloxacin点眼液(NDA 19-992)の安全性と有効性の小児情報に対する,当局からの1999年10月22日の文書による要求(2001年8月3日および2002年9月6日に修正)を受けて,治験依頼者は,出生から1ヶ月までの新生児において,ciloxan 0.3% 1日3回点眼とmoxifloxacin点眼液0.5%1日3回点眼を比較し,9日間の多施設・無作為化・二重盲検・平行群間試験を行った。現在,新生児の細菌性結膜炎の治療のために承認された製剤はない。
◇有効性sNDA 19-992/SE5-017において提出された試験結果は,出生から1ヶ月までの新生児に対する細菌性結膜炎への[‘Ciloxan’]点眼液0.3%の有効性を確立するには十分なものではなかった。[‘Ciloxan’]の臨床的な治癒率(61%)は,賦形剤による一般的な治癒率(約70%)よりおよそ10%低い。[‘Ciloxan’]の臨床的な治癒率はmoxifloxacin(53%)より数字的には大きく,通院時(9日目)にはそれぞれの治療群で80%に達するが,試験結果は[‘Ciloxan’]の有効性を示すには十分ではない。
◇安全性今回の提出に含まれる安全性データは,以前承認された[‘Ciloxan’]点眼液0.3%,NDA(新薬承認申請)19-922で報告されたものと同等である。
◇投与現在の投与法の変更は,今回の申請では提案されていない。
◇特殊な母集団特殊な母集団に対する追加データは,必要でない。
生後1ヶ月までの新生児における,細菌性結膜炎の治療に対する承認を求める医薬品承認事項追加変更(sNDA)19-921/SE5-018は認められない。
◇第4相試験および/あるいはRisk Management Stepsの勧告第4相の実施は勧告されない。
Ofloxacinはフルオロキノロン系抗感染症薬である。局所用ofloxacin点眼液0.3%は,1歳以上の結膜炎および角膜潰瘍における感受性菌による感染症の治療に対し米国で承認された。
新生児に対する細菌性結膜炎(例えば,生後1ヶ月までの細菌性結膜炎)治療のための製品は,現在承認されていない。
Ofloxacin点眼液〔NDA(新薬承認申請)19-921〕の安全性および有効性の小児に関する情報を求める当局からの1999年10月22日の文書による要請(2001年8月3日および2002年9月6日に修正)を受けて,治験依頼者は,生後31日までの新生児を対象に,局所用ofloxacin0.3%点眼液[‘Ocuflox’]を局所用trimethoprim sulfate/polymyxin b sulfate合剤点眼液[‘Polytrim’]と比較する7日間の多施設・無作為化・二重盲検・平行群間臨床試験を行った。
◇有効性sNDA 19-921/SE5-018で提出された試験結果は,生後1ヶ月までの新生児に対する細菌性結膜炎治療への[‘Ocuflox’]点眼液0.3%の有効性を確立するには,十分ではなかった。
[‘Ocuflox’]の臨床的治癒率(60%)は,賦形剤の一般的な治癒率(70%)より,約10%低い。それぞれの治療群における7日目の感受性菌に対する細菌の除菌率は,[‘Ocuflox’]で55%,[‘Polytrim’]で50%である。今回の試験において[‘Ocuflox’]の臨床的治癒率は,[‘Polytrim’]が示した治癒率(48%)よりも高いが,試験結果は新生児の結膜炎の治療における[‘Ocuflox’]の有効性を示すには十分でなかった。
今回の試験で示された低い臨床的治癒率は,試験のデザイン,ofloxacin点眼液0.3%の投与回数,細菌性結膜炎の症例特有な菌,試験の実施に関する要因,もしくはこれらの要因の組み合わせによるものであるかどうかは,提出されたデータからは決定できない。
承認。
◇第4相試験および/あるいはRisk Management Stepsの勧告Roche社は青年期の使用にあたり,製品に複合ビタミンを入れることを強く検討すべきである。
青年期における肥満の管理に対する薬物治療は現在承認されていない。
◇臨床的なプログラムの概要Orlistat,商品名[‘Xenical’],化学名tetrahydrolipistatinは,食事からの脂肪の吸収阻害による膵リパーゼ阻害薬である。Orlistatは最初のBMI(肥満度指数)が >30 kg/m2または > 27 kg/m2で,その他のリスクファクター(高血圧,糖尿病,異脂肪症等)のある成人の患者に対して,1999年4月23日に肥満の長期治療のため承認された。小児の患者におけるorlistatの有効性と安全性は,当局の2000年8月9日の要請の概要に沿って,2つの臨床試験において評価された。1つは539人の肥満青年(BMI>97%値)の52週間,無作為化(2:1),二重盲検,プラセボ対照試験だった。もう一方は,32人の肥満青年における無作為化(1:1)二重盲検,プラセボ対照のミネラルバランスの試験だった。
◇有効性1年間の試験において,それぞれの治療群の約65%の患者が試験を完了した。青年期の母集団におけるorlistat使用は,BMIがプラセボ(+0.31 kg/m2)に比較して統計的に有意に減少(-0.55 kg/m2)する結果となった(P=0.001)。全体として,26.5%のorlistat治療患者および15.7%のプラセボ治療患者が投与開始時のBMIを少なくとも5%減少し(P =0.005),一方orlistat治療患者の13.3%およびプラセボ治療患者の4.5%が投与開始時のBMIを少なくとも10%減少した(P =0.002)。この成長期の母集団において予測されるように,体重と身長は両群で増加した。しかしorlistat群の体重の増加(0.53 kg)はプラセボ群の増加(3.1 kg)より有意に少なかった(P =0.001)。
以前に行われた肥満成人の試験では,約60%のorlistat治療患者および31%のプラセボ治療患者が投与開始時の体重より少なくとも5%減少し,一方27%のorlistat治療患者と11%プラセボ投与患者が治療の1年目で少なくとも10%の体重減少があった。
胴周りはorlistat群で平均2.6cm,プラセボ群で0.6cmの減少であった(P =0.008)。腰周りはorlistat治療患者において1.3cmの減少,プラセボ治療被験者において0.1cmの増加であった(P =0.01)。
脂肪量と除脂肪体重は152人のorlistatと77人のプラセボ被験者のサブグループにおいてDEXAにより直接測定された。治療終了時,orlistat群は平均0.54kgの体重減少があり;一方プラセボ被験者は平均1.45kgの体重増加があった。脂肪量はorlistat群において平均2.4kgの減少し,プラセボ群において0.38kg増加した(P =0.03)。
低リスクの青年母集団において,血圧,脂肪パラメーターおよび血糖値やインスリン濃度では治療群間に有意な差はなかった。
FDAは,米国で承認された免疫グロブリン静脈注射(ヒト)(IGIV)製品は,表示された適応に対し使用された場合比較的安全性が高いという認識である。しかし,IGIVの適切に管理された臨床試験のデータは小規模であり,現在までの試験では,まれで珍しい有害事象を検出するには限界がある。
腎,心血管,肺,中枢神経系,皮膚および血液組織系等の数多くの副作用がIGIV輸液に見られ,市販後に報告され,文献に記載された。
市販後報告および関連文献のレビューの結果,CBERはIGIV製品のすべての製造業者に,下記の事項を含むように,製品表示の指摘された箇所の更新を要求する。
副作用
IGIV製品の承認後の使用で,下記の副作用が確認され報告された。
使用上の注意
免疫グロブリン静脈注射(ヒト)(IGIV)製品は,溶血素として作用する血液型抗体を含んでおり,生体内で免疫グロブリン(の特異抗体)が赤血球に結合し,直接抗グロブリン反応を,またまれに溶血を引き起こす。赤血球の破壊を促進するため,IGIV療法の結果,溶血性貧血が発症する可能性がある(副作用の項参照)。IGIV投与患者は,溶血の徴候および症状をモニターすべきである(使用上の注意:臨床検査の項参照)。
IGIV投与患者において,非心原性の肺水腫〔輸血関連急性肺障害(TRALI)〕の報告がある。TRALIは重篤な呼吸窮迫,肺水腫,低酸素血症,正常な左心室機能および発熱によって特徴付けられ,通常は輸血後1−6時間以内に発症する。TRALIを発症した患者は,適切な人工呼吸と酸素療法でコントロールする。
IGIV投与患者は,肺の副作用をモニターすべきである。TRALIが疑われた場合,製品および患者血清の両方における抗好中球抗体の有無を確認するため,適切な検査を実施すべきである(使用上の注意:臨床検査の項参照)。
血栓事象がIGIVに関連して報告されている(副作用の項参照)。アテローム性動脈硬化症の既往,複数の心血管危険因子,加齢,心拍出量の低下,および/または既知や疑わしい過粘稠度症等の患者が,リスクの高い可能性がある。IGIVによる可能性のあるリスクとベネフィットについては,IGIV投与が検討されるすべての患者に対し,代替療法のリスクとベネフィットと比較検討すべきである。クリオグロビン,空腹時カイロミクロン血症/著しく高いトリアシルグリセロール(トリグリセリド)もしくは単クローン性免疫グロブリン血症等の過粘稠度症のリスクがある患者では,血液の粘稠度レベルの評価を検討する必要がある(使用上の注意:臨床検査の項参照)。
さらに,使用上の注意の小項目として臨床検査の項を追加すること。
この項目に含む文章は以下の通り。
IGIV輸液の後に溶血の徴候および/または症状があらわれた場合には,確認のため臨床検査を実施すること(使用上の注意の項参照)。
TRALIが疑われた場合には,製品および患者血清の両方において抗好中球抗体の有無を確認のための適切な検査を実施すること(使用上の注意の項参照)。
血栓症のリスク増加の可能性があるため,クリオグロビン,空腹時カイロミクロン血症/著しく高いトリアシルグリセロール(トリグリセリド)もしくは単クローン性免疫グロブリン血症等の過粘稠度症のリスクがある患者では,投与開始時の血液粘稠度レベルを検討すること。(使用上の注意:臨床検査の項参照)
このレターの日付から45日以内にSpecial Labeling Supplement: Changes Being Effected(21CFR601.12(f)(2))を提出すること 。要求されたSpecial Labeling Supplementに,上記以外の添付文書の変更を加えないこと。これは以前提出され今回保留になっている可能性のある補足変更を含む。
変更の実施期限は,追補の表紙に表示すること。
FDAは,難治性の慢性骨髄性白血病の第二選択薬として[‘Gleevec’](imatinib)を正式に承認した。
なお,この疾患はまれに生命の危険性があり,米国では約40,000人が罹患している。正式な承認とは,[‘Gleevec’]が難治性の慢性骨髄性白血病に対し,長期の臨床的なベネフィットを示すとFDAが判断したことを意味する。[‘Gleevec’]がまず2001年5月にaccelerated approval program(迅速審査制度)の下で承認された時点で,長期の臨床的なベネフィットは高いと思われるエビデンスが示されたが,それを確認するためにさらに臨床試験が必要であった。
“[‘Gleevec’]の臨床経験は,医薬品が患者の生活を改善する可能性があることを合理的に予測する短期の腫瘍反応率(奏功率)のような有効なサロゲートエンドポイントに基づいて,生命を脅かす疾病の患者に対し,近い将来,有効な薬剤が得られることを約束するデータを示している”とFDA長官Mark B. McClellan, M.D., Ph.D.は述べた。“また我々の経験により,今回,スポンサーが行ったような,医薬品の臨床的なベネフィットの確認に承認後の追跡研究が重要であることは明らかである。”
Accelerated approval programは,重篤なもしくは生命を脅かす疾病に対し,長期の臨床的ベネフィット以上に,有意により早期に見られる医薬品の優れた作用に基づいて承認を与えることで,開発段階で一早く利用可能とする。[‘Gleevec’]の優れた作用とは,赤血球数の正常化と骨髄白血球における異常な染色体の低減等である。
スポンサーであるNovartis Pharmaceuticals社は2001年の承認の際に,この特別な適応に対する長期のベネフィットを確認するため,最初の試験における患者の追跡を継続するよう求められた。FDAに示されたデータによれば,95%の患者が正常な赤血球数に達し,さらに,好ましい治療反応が持続した。骨髄白血球における異常な染色体の割合が減少した患者の約88%(推定)が,少なくとも2年間その効果を持続した。治療の2年後,推定85%の患者が疾病の悪化を免れた。推定の全生存率は91%だった。この追加データの結果,この疾患の治療に対し,[‘Gleevec’]を正式承認に変更するために十分な情報がFDAに示された。
[‘Gleevec’]は2001年5月から,慢性骨髄性白血病の治療の第一選択,小児の白血病および胃腸の癌のまれな形である消化管間質腫瘍に承認されている。