FDAの医薬品安全情報
この概要は,各医薬品製剤の禁忌,枠組み警告,警告,使用上の注意,副作用の箇所の表示の改訂を含む。簡易版(表)には医薬品名と改訂箇所のリスト,また詳細版には改訂になった項目とその小見出し,禁忌または警告,及び新規または更新された安全性情報が掲載されている。
FDAは10月に,[‘Cypher’](sirolimus放出)冠動脈ステントの埋め込み後,30日以内に起こった血栓症(凝固)の報告と,過敏性反応の可能性の報告を医師に通知し,医師や患者にそのような事象をFDAに報告するよう要請した。
現時点で,さまざまな患者における製品の臨床試験の評価に基づくと,血栓症を起こす割合が他のステントに比し,予測値以内と思われる。11月21日現在で,10件の追加死亡例(総計70件以上)を含む,75件の血栓症の追加症例があった(総計360件以上)。
過敏性反応について,FDAに報告された多くの症例は比較的軽かったが(例えば,数日以内で消える発疹や掻痒),重篤な事象もいくつかあった(アナフィラキシーを含む)。FDAに報告されたいくつかの反応は原因がわかっていないものもあるが,多くの反応は埋め込みに関係した標準の薬物治療に関連していると考えられている。11月21日現在で,FDAは,過敏性反応の追加報告を20件(総計70件以上)受けているが,死亡例の追加報告はなかった。
FDAは,代替治療のない進行性前立腺癌患者に対する医薬品,[‘Plenaxis’](abarelix)の販売を許可するNDA(新薬申請)を承認した。医薬品は,他のホルモン療法を受けられず,かつ去勢手術を拒否した進行性前立腺癌の男性の症状の治療に適応がある。この医薬品は,使用に関連する重篤な生命を脅かす可能性のあるアレルギー反応のリスク増加のため,自発的なリスク管理プログラム(RMP)に同意の下で販売され,[‘Plenaxis’]の使用を代替治療のない進行性前立腺癌患者に制限する販売元により管理される。前立腺癌の男性の約5-10%が,[‘Plenaxis’]を投与できる可能性のある進行した症状のタイプである。[‘Plenaxis’]は,ほとんどの前立腺癌の進行に関連した主要なファクターである,男性ホルモンtestosteroneを低下させるタイプの医薬品〔gonadotropin放出ホルモン(GnRH)阻害薬と呼ばれる〕である。進行性の症候性前立腺癌の男性において,teststerone産生低下における[‘Plenaxis’]の有効性は,81人の臨床試験で示された。その結果,進行性の症候性前立腺癌の患者は最低12週間の治療に耐えることにより,去勢手術を回避できたことが示された。この医薬品の使用により,疼痛の軽減,および排尿障害の緩解等のその他のベネフィットを経験した男性もいた。しかし,臨床試験の81人のうち3人が重篤なアレルギー反応を経験し,そのうち1人には意識消失があった。
[‘Plenaxis’]の販売は,この重篤な生命を脅かす可能性のあるアレルギー反応のリスク増加のため,進行性の症候性前立腺癌でその他の治療法のない患者に限定すべきであることに,FDAと製造業者は合意した。[‘Plenaxis’]に対するアレルギー反応の一部としての血圧低下および失神のリスクのため,患者は医師の下で投与後少なくとも30分間モニターされるべきである。さらに,製造業者はこの医薬品を小売薬局を通じて流通させず,Plenaxis RMP(リスク管理プログラム)に登録された医師および病院内の薬局に直接販売する。
[‘Plenaxis’]は,最初の月は2週間おきに臀部への筋注,その後は4週間に1度の割合での治療となる。一部の患者においては,この医薬品が作用しない可能性があるので,医師はtestosteroneの濃度が低濃度に維持されることで,[‘Plenaxis’]の作用を確認するため,約2ヶ月毎に血液検査を行う必要がある。
臨床試験での最も一般的な副作用は,ほてり,睡眠障害,背部痛を含む疼痛,乳房腫大もしくは乳房痛および便秘である。
医薬品の製造業者が行う予定のPlenaxis RMPは,患者および医師に[‘Plenaxis’]の使用前にそのリスクとベネフィットについて十分に知らせるために計画された。RMPは医師,患者および病院薬剤師が[‘Plenaxis’]のベネフィットを最大限にし,リスクを最小限にするため協力しあうことを重視している。
プログラムでは,製造業者は,必要な条件を満たし,Praecis' Plenaxis PLUS(Plenaxis User Safety)Programに登録した医師にのみ[‘Plenaxis’]を販売することになる。さらに,企業は[‘Plenaxis’]のリスクとベネフィットについて,医師,患者および病院薬剤師に対する教育プログラムを確立する。患者は医薬品の投与を受ける前に患者情報のリーフレットを読み,サインすることが求められる。企業はまた,副作用を収集し,FDAへ報告するシステムを確立する。登録医師は,Praecis' Plenaxis PLUSまたはFDA MedWatchに重篤な有害事象を報告する。最終的に,企業は,また,[‘Plenaxis’]の処方,および実際の使用の評価を含むリスク管理プログラムの評価の研究を行う。
Abbott(Abbott Laboratories)は,[‘Ultane’](sevoflurane)を乾燥二酸化炭素吸収剤と併用した際の麻酔器の呼吸回路における発火または異常な熱のまれな報告について通知する。調査中で正確な原因は解明されていないが,Abbottは患者に危害を及ぼす可能性のある,このような事例の発生を麻酔施術者に知らせることが重要と考えた。[‘Ultane’]は成人および小児の入院および外来患者の手術における全身麻酔の導入および維持に適応される。
Abbottに報告された発火または異常な熱の事例のほとんどで,乾燥二酸化炭素吸収剤が併用されていたということが重要である。1例では,現在のところ当社の調査で,乾燥二酸化炭素吸収剤の関与の有無を確定できない。
麻酔施術者は,このような事例が発生するリスクを低減する可能性のある手段を検討すること。
AbbottはFDAと連携して,発火,異常熱,乾燥二酸化炭素吸収剤と[‘Ultane’]の併用で生成する可能性のある分解産物の問題に関する原因および予防策を調査中である。Abbottは関連情報を入手次第,適時ガイダンスを提供していく。
Aventis Pharmaceuticals社は[‘Arava’](leflunomide)錠に対する安全性情報の重要な更新を通知する。[‘Arava’]は,成人の活動性関節リウマチ(RA)の治療に対し,その徴候や症状の軽減,X線像により変形が判明した構造的な障害および関節隙の狭窄の抑制,およびFDAにより最近追加適応された身体機能の改善に適応がある。
世界各国の市販後調査において,致死的転帰の症例等のまれで重篤な肝障害が,[‘Arava’]の治療中に報告された。ほとんどの症例は治療開始後6ヶ月以内に生じ,肝毒性に対する複数のリスクファクターの背景があった。ほとんどの症例において,肝疾患の既往,肝合併症を起こしやすい疾患を併発,また肝毒性のある可能性のある薬物の併用など複数の交絡因子の存在は重視されるべきである。
致死的な可能性の敗血症等の重篤な感染症の市販後の報告も,まれに受けた。報告のほとんどは,免疫抑制療法の併用および/またはリウマチ疾患に加え感染症を患者に起こす可能性のある合併症などが交絡した。
市販後の安全対策の一部として,Aventis Pharmaceuticals社は処方情報とこのようにまれな重篤な有害事象を含むモニタリングの推奨を更新した。
警 告:処方情報の肝毒性の項目は治療開始後の毎月の肝酵素のモニタリングの期間,治療継続中のモニタリングの間隔,および正常値の上限(ULN,upper limit of normal)の3倍を超えるALTの上昇が確認された場合の投与の中止に関して,さらに詳しいガイダンスを提供する。以下が改訂箇所である。
肝毒性少なくとも,ALT(SGPT)は投与開始時および始めの6ヶ月間は月に1回の間隔で測定され,安定したならば,その後は6−8週間毎に測定されるべきである。加えて,[‘Arava’]とmethotrexateが併用される場合は,methotrexateの肝毒性をモニタリングするため,ACR(米リウマチ学会)のガイドラインに従いALT,ASTおよび血清アルブミンを毎月測定すべきである。
ALT上昇が重症で持続する場合の用量調整,または投与中止のためのガイドライン:正常値上限の2-3倍のALT上昇が確認された場合でも,10mg/日の減量により綿密なモニタリング下で[‘Arava’]の継続投与が可能である。減量したにもかかわらず正常値上限の2-3倍の上昇が持続,または正常値上限の3倍以上の上昇が現れる場合は,[‘Arava’]を中止し,綿密なモニタリングをしながらcholestyramineまたは活性炭を投与すべきである〔参照:添付文書の項目,注意(一般)医薬品除去の必要性〕。
Methotrexate療法を受けているにもかかわらず,持続性の活動性関節リウマチを持つ263人での患者の6ヶ月の研究で,leflunomideが133人の患者群に1日10mgから投与され,必要に応じて20mgまで増量された。正常値上限の3倍に達したALTの上昇が,プラセボを含んだmethotrexate継続投与の130人の患者において0.8%であったのに対し,leflunomideでは3.8%の患者に見られた。
警 告:免疫抑制の可能性/骨髄抑制の項目は[‘Arava’]での治療中に重篤な感染症が起きた場合,[‘Arava’]での治療を中止する必要の可能性があることを強調するため,下記の文を追加した。これは[‘Arava’]が重篤な免疫不全,骨髄異形成または重篤なコントロール不可の感染症の患者に対しては推奨されないという以前の警告に続くものである。
重篤な感染症が起こるような事象では,[‘Arava’]による治療は中止し,cholestyramineまたは活性炭を投与する必要がある。免疫抑制の可能性のあるleflunomideのような薬物で患者は日和見感染等の感染症にかかりやすくなる可能性がある。[‘Arava’]の投与患者では,致死的な可能性の敗血症等の重篤な感染症がまれに報告された。報告のほとんどは,免疫抑制療法の併用および/またはリウマチ疾患に加え感染症を患者に起こす可能性のある合併症等が交絡した。
[‘Arava’]単独投与の患者において,汎血球減少症,無顆粒球症および血小板減少症がまれに報告された。これらの事象は,methotrexateまたはその他の免疫抑制剤での併用治療を受けているか,最近この治療を中止した患者において最も頻繁に報告された;著しい血液異常の既往を持つ患者の症例もあった。
[‘Arava’]投与患者を投与開始時および治療開始後6ヶ月の間は毎月,その後6−8週間毎に血小板数,赤血球数およびヘモグロビンまたはヘマトクリット値をモニタリングするべきである。Methotrexateおよび/またはその他の免疫抑制の可能性のある薬剤が併用されるなら,それらのモニタリングは毎月行われるべきである。[‘Arava’]の投与患者において骨髄抑制の徴候が生じたなら,[‘Arava’]による治療を中止し,leflunomide活性代謝物の血漿濃度を減少させるため,cholestyramineまたは活性炭を使用すべきである。
注 意:臨床検査の項目は上に述べた警告−肝毒性の項目および免疫抑制の可能性/骨髄抑制の項目で更新されたものと同じモニタリング情報が更新された。
副作用の項目もそれらの安全性に関する更新を反映して修正された。
臨床試験の項目は,身体機能および効果の維持についての情報を含むものに更新された。
この概要は,各医薬品製剤の禁忌,枠組み警告,警告,使用上の注意,副作用の箇所の表示の改訂を含む。簡易版(表)には医薬品名と改訂箇所のリスト,また詳細版には改訂になった項目とその小見出し,禁忌または警告,及び新規または更新された安全性情報が掲載されている。
GlaxoSmithKline社は,喘息および慢性閉塞性肺疾患の治療に使用される長時間作用型の気管支拡張剤であるsalmeterolを含むいくつかの医薬品に対する表示に,新しい枠組み警告およびその他の安全性情報を追加した。それらの医薬品の中には[‘Serevent Inhalation Aerosol’],[‘Serevent Diskus’]および[‘Advair Diskus’]が含まれる。新しい警告はsalmeterolを服用している患者において,生命を脅かす喘息症状もしくは喘息関連死のリスクがわずかだが,有意な上昇のあることが述べられている。
新規の情報は,米国での[‘Serevent’]の大規模プラセボ対照試験,SMART研究からのものである。研究は,[‘Serevent’]の安全性,特にまれであるが重篤な喘息関連有害事象を起こす可能性があるかどうかをさらに調査するために計画された。この研究では,28週にわたって患者の通常の喘息治療にsalmeterolを追加したものとプラセボを追加したものの有効性が比較された。
FDAとGlaxoSmithKline社は,[‘Serevent’]群および対照群それぞれに約13,000人の患者を含むデータを解析した。[‘Serevent’]群の13人の喘息関連死に対し対照群は4人であった。サブグループ解析により,リスクは白人よりも黒人の方がより大きい可能性があることが示された。
Salmeterol製品での喘息およびCOPD治療のベネフィットは,ラベリングの指示に従って使用される場合,潜在的なリスクを上回ることをFDAは強調している。患者は,医師に相談なしに[‘Serevent’] や[‘Advair’]の治療を中止すべきではない。突然の休薬は,生命を脅かすような急激な悪化を引き起こす可能性があるからである。FDAは,salmeterolを含む全ての喘息薬は患者の喘息の重篤度を考慮に入れ,疾病とその治療法について患者によく説明する総合的な計画の一部として処方されるべきであると指摘した。
2)Warning on Human Growth Hormone for Prader-Willi SyndromePfizer社の子会社であるPharmacia & Upjohn社は,プラダーウィリ症候群による成長障害のある小児の治療時に使用される成長ホルモン製剤[‘Genotropin’](somatropin)について,重要な新規の安全性情報を医療関係者に警告した。プラダーウィリ症候群は低身長,精神遅滞,過食,肥満および性的幼児症により特徴付けられる先天的な疾患である。[‘Genotropin’]は,身長の成長と脂肪組織の脂肪の減少のためにプラダーウィリ症候群の患者に使用される。
同社は,プラダーウィリ症候群に対し,[‘Genotropin’]で治療を受けた小児において,世界的に7人の死亡者があることがわかったため警告を発表した。
この疾患の小児はいくつかのリスクファクターを持っている:極度の肥満,呼吸障害もしくは睡眠時無呼吸の既往もしくは原因不明の呼吸器感染症。複数のリスクを持つ男児患者は女児患者より高いリスクを持つ可能性がある。
添付文書では,現在,極度の肥満もしくは重篤な呼吸器障害をもつプラダーウィリ症候群の患者において成長ホルモンは禁忌であると記されている。また,成長ホルモンの治療に先立って上気道閉塞に対する診察を受けるべきであり,もしも患者が上気道閉塞の徴候を示すなら治療は中止すべきであると警告している。
3)Warning for [‘Risperdal’]Janssen Pharmaceutica社により製造され統合失調症の治療に使用される医薬品[‘Risperdal’](risperidone)について新規の警告がなされた。この医薬品のラベルの警告欄に,臨床試験で痴呆関連の精神疾患に対する治療を受けている高齢の患者における脳血管の有害事象について記載された。この事象には致死的な例もあり,卒中発作およびTIA(一過性脳虚血発作)が含まれる。警告には,さらに[‘Risperdal’]は痴呆関連の精神疾患患者の治療に適応がない旨が記されている。