FDAの医薬品安全情報
FDAは今日,Cordis社の[‘Cypher’]冠動脈ステントに関する有害事象について医師へ通知した。
FDAはステントを埋め込んで1日から30日後に起こった血栓症(凝固)の290件以上の報告を受けた。これらの報告の60件以上で,ステントの使用は患者の死に関連しており,残りは,ステントが内科的または外科的介入を必要とする損傷に関連しているものであった。
FDAはまたCordis社が過敏性反応の可能性があると考えている,いくつかの死亡例を含む50件以上の報告も受けた。症状は以下の通り : 痛み,発疹,呼吸の変化,蕁麻疹,かゆみ,発熱および血圧変動。
数十万の患者が[‘Cypher’]ステントでの治療に成功している。FDAは[‘Cypher’]ステントでの血栓症および過敏性反応の事象が金属ステントのものと異なるかどうか判断する十分な情報を持っていない。
FDAは詰まった冠動脈を開く血管形成術を受ける患者に対し2003年4月に[‘Cypher’]ステントを承認した。円筒型の金属の網であるステントは動脈が術後に再狭窄するのを防ぐように設計されている。それは,患者の体内に徐々に放出されるsirolimusという薬物を含む薄いポリマーで覆われており,その他のステントで起こる再狭窄を減少する意図がある。
これらの有害事象の原因は未だ分かっていない。FDAとCordis社はこれらの事象の周辺状況についてできる限り多くの情報を迅速に集めるよう取り組んでいる。FDAはまた,[‘Cypher’]ステントの外国の事例についてさらに多くの情報を得るために各国の規制機関とも連携している。
FDAが問題の根幹を捉えるまで,ステントの使用に対して使用上の注意を遵守することを医師に勧め,患者に対し過敏症に起因する可能性がある症状への注意を促した。
このステントを埋め込んだ患者は主治医により定期的にフォローアップされるべきである。
承認の条件として,FDAはCordis社に,2000人の患者の承認後調査を行い,ステントの長期安全性と有効性を評価するための継続中の臨床試験により患者の評価を続行すること,そして製品の使用による結果生じる可能性があるまれな有害事象を発見するよう要請している。
FDAは最近,スポーツ選手の運動能力改善への使用が報告されているTHG(tetrahydrogestrinone)を認識している。規制機関の分析に基づき,FDAはTHGが未承認の新しい薬であると判断した。米国の消費者に販売される医薬品が安全かつ有効であることを保証する規制機関の厳密な承認基準では,FDAの承認なしで合法的に販売することはできない。
FDAはこの未承認の製品の販売と使用を懸念し,THGを製造,流通または販売している企業や個人の取り締まりに積極的に関与,強化および告発のために,他の連邦法執行機関と連携している。
「私たちの使命は有害な可能性のある物質から米国民を守ることである」とFDA,Regulatory Affairs,Associate CommissionerのJohn Taylor氏は述べている。
現時点では,この物質の安全性について公式にはほとんどわかっていないが,この物質の構造とすでにわかっている物質との関連性から,その使用が健康へのかなりのリスクをもたらすとの確信を得たと,FDAは消費者に警告している。
THGの販売者は,この製品は栄養補助食品だと説明するが,実は栄養補助食品の定義に合致していない。これは,むしろ,米国Anti-Doping Agencyから明確に禁止されている蛋白同化ステロイドの簡単な化学的修飾による明らかな合成デザイナーステロイドである。
禁止された蛋白同化ステロイドの代替物としてのスポーツ選手によるTHGの使用が,最近,米国Anti-Doping Agencyによって明らかにされた。この物質はgestrinone とtrenboloneの2つの合成蛋白同化テロイドに酷似しており,構造的にも類似している。筋力を増強する蛋白同化ステロイドは男性,女性および子供に重大な長期の健康への影響をもたらす可能性がある。
FDAはPublic Health Advisoryを発表し,MDDの小児患者におけるさまざまな抗うつ剤の臨床試験において自殺念慮(および自殺企図)の報告に対し医師に注意喚起する。
FDAは小児のMDDは確立された治療法の選択肢がほとんどない重篤な疾病であると認識している。治療のための非薬物的な取り組みに加え,医師はしばしば成人のMDDに有効な治療薬物の中での選択を余儀なくされる。現在,[‘Prozac’] (fluoxetine)が小児MDDにおける使用に対し唯一適応のある医薬品であり,最近,Pediatric Exclusivity provisionの下,承認された。
FDAは8つの抗うつ剤〔citalopram,fluoxetine,fluvoxamine,mirtazapine,nefazodone,paroxetine,sertraline,およびvenlafaxineで,すべてFDA Modernization ActのPediatric Exclusivity provision(FDAMA,1997)において調査された〕に対する報告の予備的な再評価を終了した(Fluvoxamineのデータが他の抗うつ剤とともに再評価されたが,米国ではfluvoxamineは抗うつ剤として承認されていないことに注意すべきである)。
FDAは今のところデータがそれらの薬物の使用と小児患者による自殺念慮もしくは自殺行為の増加との関連を明らかに確立するものではないことに注目する。それにもかかわらず,この時点で,2003年6月19日のFDA Talk Paperで,[‘Paxil’](paroxetine)を含むこれらの薬物のいずれかに対し有害事象のリスクを増加した可能性を払拭できないとした。この薬物の最近の研究に基づき小児における[‘Paxil’]の適応外使用に関する安全性の懸念を評価中であるとTalk Paperで報告した。
FDAは,小児のMDDにおいて評価された7つの薬物に対して,FDAが再評価したデータのうちMDDにおける有効性を確立するため十分だったものは[‘Prozac’](fluoxetine)のデータのみであったと強調した。小児のMDDにおける特定の研究において有効性を示すことには失敗したが,試験がさまざまな理由のため失敗した可能性があるため薬物が有効でないという明らかなエビデンスは示されない。
FDAは抗うつ剤を投与された小児科の患者において自殺企図および自殺の報道および医学雑誌での報告を承知しており,またそのような報告の多くは自発報告としてFDAに提出されている。しかし,対照群が欠落しており,それらの事象が治療を受けていないうつ病患者にも生じるため,そのような報告は非常に解釈が難しい。
FDAは更なるデータ,分析および有効なデータの公開の討論の必要性を強調する。小児のMDDは重篤な病気であると認識しているため,薬物をどのように使用するかをより理解することが必要である。
FDAは,またこれらの薬物が成人および小児の両方において慎重に使用されるべきであることを医師および患者に注意する。抗うつ剤のラベリングには,MDDに自殺企図の可能性があり,著しい回復まで持続する可能性があるという注意書きがある。初期の治療についてはハイリスクな患者は厳重な監視が必要である。
公衆衛生勧告において,FDAは抗うつ剤の治療を受けている小児患者の保護者はこれらの薬物の使用を中止する前に主治医に相談することを提言する。保護者は医師への相談なしにこれらの薬物の使用を中止すべきではない,そしてこれらのいくつかの薬物は突然,中止しないことが重要である。
FDAとRoche社は,CMV(サイトメガロウイルス)疾患のリスクが高い心臓,肝臓,腎臓および腎臓−膵臓の移植患者における[‘Valcyte’](VGCV)およびganciclovir(GCV)の実薬対照試験の結果を医療従事者に通知した。これは以下の知見に基づいている。(1)[‘Valcyte’] はリスクが高い腎,心臓および腎−膵臓移植患者におけるCMV疾患の予防に適応される。(2)[‘Valcyte’] は肝移植患者への使用に適応はない。(3)肺移植患者のような他の固形臓器移植患者におけるCMV疾患の予防に対する[‘Valcyte’]の安全性および有効性は確立されていない。
Roche社は最近,CMV疾患のリスクが高い〔CMV抗体陽性ドナー/CMV抗体陰性レシピエント(D+/R-)〕心臓,肝臓,腎臓および腎臓−膵臓の移植患者364人における二重盲検化ダブルダミー実薬対照試験(PV16000)を完了した。PV16000 はCMV疾患全般を評価する非劣性試験として計画された。患者は,[‘Valcyte’]錠1日1回900mgまたは[‘Cytovene’](ganciclovirカプセル)1日3回1gに2対1に無作為に割り付けられた。投与量は腎機能で補正した。投薬は,移植後10日目までに開始し,100日目まで続けられた。
この試験で,CMV疾患は,CMV症候群/または組織侵潤性CMVの発生と定義された。CMV症候群は,発熱(少なくとも24時間後に38度かそれ以上)を伴うCMV DNA PCR陽性による血液中にCMVが存在すると定義され,さらに一つまたは2つ以上の以下の症状を伴う:倦怠感,白血球減少症, 非定型リンパ球増多症,血小板減少症,肝酵素上昇。組織浸潤性CMVは,関連する症状または臓器の機能不全を伴う限局性のCMV感染(CMVを含む細胞,もしくは生検またはその他の適切な標本でのCMV抗原またはDNAの検出)の存在と定義される。
臨床結果
移植後6ヶ月間におけるCMV疾患の発生率は,両群とも類似していた〔[‘Valcyte’]:12.1%,N=239,ganciclovir:15.2%,N=125〕。一方,臓器別のサブグループ分析では,重要な情報が明らかとなった(表)。
腎,腎−膵臓および心臓移植
腎,腎−膵臓および心臓移植患者のサブグループ分析においては,CMV疾患の予防に[‘Valcyte’]が有効であると示された。
肝移植
肝移植のサブグループ分析では,CMV疾患総合発生率がganciclovir群(12%)に比し[‘Valcyte’]群(19%)で高かった。さらに組織侵潤性CMVの患者数は,ganciclovir群(3%)に比し[‘Valcyte’]群(14%)は有意に増加していた。これらの結果に基づき,[‘Valcyte’]は肝移植レシピエントでのCMV疾患予防には承認されなかった。
CMV 疾患* | 組織侵潤性CMV | CMV 症候群 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
組織 | VGCV (N=239) | GCV (N=125) | VGCV (N=239) | GCV (N=125) | VGCV (N=239) | GCV (N=125) |
肝臓 (n=177) | 19% (22/118) | 12% (7/59) | 14% (16/118) | 3% (2/59) | 5% (6/118) | 9% (5/59) |
腎臓 (n=120) | 6% (5/81) | 23% (9/39) | 1% (1/81) | 5% (2/39) | 5% (4/81) | 18% (7/39) |
心臓 (n=56) | 6% (2/35) | 10% (2/21) | 0% (0/35) | 5% (1/21) | 6% (2/35) | 5% (1/21) |
腎臓/膵臓 (n=11) | 0% (0/5) | 17% (1/6) | 0% (0/5) | 17% (1/6) | 0% (0/5) | 0% (0/6) |
Gilead(Gilead Sciences社)はNRTI(nucleosides/nucleotide reverse transcriptase inhibitor,核酸系逆転写酵素阻害剤)による,早期の高率なウイルス学的失敗と突然変異に関連した耐性が出現したと報告した。これは,tenofovir disoproxil fumarate〔[‘Viread’],Gilead〕,lamivudine〔[‘Epivir’], GlaxoSmithKline〕とdidanosineの腸溶性顆粒を充填した(EC)カプセル剤〔[‘Videx EC’], Bristol-Myers Squibb〕での1日1回投与の3剤併用療法で,HIVに感染し,初めて治療を受ける患者の臨床試験で観察された。
これらの新しいデータはNRTIの3剤併用療法を評価した最近のいくつかの臨床試験で観察された高率のウイルス学的失敗と一致している。
・初めて,または以前に治療を受けたHIV-1感染患者で,新しい処方計画を検討する際,didanosine,lamivudineとtenofovirDFの併用は推奨されない。現在,この治療を受けている患者は,治療の変更を考慮すべきである。
24週,単一施設(n=24),初めて治療を受けるHIV感染患者における3剤のNRTI,didanosine EC (250 mg),lamivudine(300 mg) とtenofovir DF(300 mg),1日1回投与での安全性と有効性の評価を目的としたパイロット研究(Jemsek et al., Oral Communication,2003年9月)で,ウイルス学的失敗(91%)が高頻度で起こることが確認された。ウイルス学的失敗は,血漿のHIV RNAレベルが12週で,1/100以下に減少しないことと定義されている。
耐性試験は,21人の患者で実施;20人(95%)が,M184I/V変異を持っており,そのうち10人(50%)がM184Vに加えて K65R を持っていた。この早期の高率の失敗により,この研究は中止された。
ウイルス学的応答が不十分であることは,abacavir/lamivudine/zidovudine 〔[‘Trizivir’],Gulick 2003〕とabacavir/didanosine/stavudine(Gerstoft 2003)のNRTI 3剤併用療法でもすでに報告されおり,またabacavir/lamivudine/tenofovir DF (Farthing 2003,Gallant 2003)では類似の早期のウイルス学的失敗と高率な耐性の突然変異が報告された。全体として,これらの研究はNRTI 3剤併用療法を受けている患者でのウイルス学的応答の低さを示した。
さらに,NRTI 3剤併用療法でウイルス抑制に成功している患者に,高率でウイルス学的失敗が見られた。
この概要は,各医薬品製剤の禁忌,枠組み警告,警告,使用上の注意,副作用の箇所の表示の改訂を含む。簡易版(表)には医薬品名と改訂箇所のリスト,また詳細版には改訂になった項目とその小見出し,禁忌または警告,及び新規または更新された安全性情報が掲載されている。
高濃度morphine sulfate内服液の不慮の過量投与により,重篤な有害事象および死亡事故が発生した。それらの事例のほとんどは,ミリグラム単位で処方されたmorphine内服液が製品のミリリットル単位に間違って換算され,20倍の過量投与の結果となったものである。例えば,5mgの処方量はmorphine sulfate濃縮液の5 mL(100 mg)として間違って投与された。
患者が適切な用量のmorphine sulfate内服液を受け取ることができるように,下記の事項を含むmorphine sulfate内服液の処方箋を書くこと。
[‘Roxanal’] 20 mg/mL ラベルに記載: 15 mg (0.75 mL または cc) 4時間毎 必要時 調剤: 30 mL |