変異遺伝部20周年を祝して

前変異遺伝部長 石館 基

昭和63年(1988),変異原性部10周年の記念パーティを開催したが,ついこの間のような気がする.その時,記念として研究業績集を作製した.その巻頭文に,私は次のようなことを書いた。「行政に関わる研究業務は,全て国民の福祉のためのものであり,その業績は信頼すべき研究から生まれる.信頼すべき研究を生むためには,それに従事する研究者白身が,先ず,専門分野においてエキスパートにならねばならない.エキスパートとなるためには,国内外の学会を通し,豊富な知識を習得すると共に,その分野における長年に渡る経験が必要である」と。

今回,20周年を迎え,このような立派な業績をさらに付け加えられたことを拝見して,誠に感無量である。祖父尼俊雄部長をはじめ,部内関係者ご一同が,10年前の私の願いを実現して下さった.心から感謝の意を表したい.私の敬愛する内村鑑三の書物に次のような有名な言葉がある.「咲く花は多し,されど実となるは少なし.実となるは多し,されど熟するは少なし」と.変異原生部は,昭和53年(1978),時代の要請によって誕生した.全く新しい分野で「花」を咲かせたと言っても過言ではあるまい.次いで,平成元年(1989)その名を変異遺伝部に改め,この10年間に多くの「実」を結んできた.これからの10年は,その実を「熟させる」時期にある.医薬品,食品をはじめ,多くの生活関連物質の安全性評価の問題は,国内外における永遠の課題である.試験法の確立もさることながら,ヒトの遺伝学的障害性に関わるメカニズムの解明のためにも,さらに新しい業績を増し加えて下さるよう念願し,お祝いの言葉に代えさせて頂きたい。