生活衛生化学部 第3室-イミノクタジン・ジクワット・パラコート検査マニュアル

イミノクタジン・ジクワット・パラコート 検査マニュアル

固相抽出-LC/MS/MSによる一斉分析法(別添方法21)

1.対象物質

 ここで対象とする農薬は,イミノクタジン,ジクワットおよびパラコートである.これらの農薬はいずれも吸着性が高く,ガラス製の器具を用いるとその壁面に吸着して回収率が著しく低下するため,これらの農薬を含む溶液が接触する器具は全てポリプロピレン製のものを使用する.

2.試薬

(1) 精製水
測定対象成分を含まないもの.
(2) チオ硫酸ナトリウム
測定対象成分を含まないもの.
(3) アセトニトリル
測定対象成分を含まないもの.
(4) メタノール
測定対象成分を含まないもの.
(5) ギ酸(99 v/v %)
測定対象成分を含まないもの.
(6) 150mmolギ酸アンモニウム緩衝液(pH3.6に調整)
ギ酸アンモニウム9.45gを900mLの精製水で溶解し,ギ酸5.6mLを加えてpH3.6に調整後,精製水で1Lに定容したもの.
(7) 農薬標準原液
イミノクタジン,ジクワットおよびパラコートのそれぞれ10mgを別々の10mLメスフラスコに採り,精製水に溶かして定容したもの(各農薬1000mg/L).これらの原液は,冷凍保存する.
(8) 農薬混合標準液
それぞれの農薬標準原液の一定量をメスフラスコに採り,精製水で薄めたもの.この溶液は,使用の都度調製する.

3.器具および装置

(1) 固相カラム
ジビニルベンゼン-n-ビニルピロリドン共重合体にカルボキシル基を導入したもの又はこれと同等以上の性能を有するもの.例として,Oasis WCX(60mg/3cc 30μm,Waters).
(2) 液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計
ア.分離カラム
内径2.1~4.6mm,長さ7.5~25cmのステンレス管に粒径が3μm以下のシリカゲルを充填したもの又はこれと同等以上の分離性能を示すもの(表1参照).
イ.移動相
最適条件に調製したもの(表1参照).
ウ.移動相流量
対象物質の最適分離条件に設定できるもの(表1参照).
エ.イオン化法
エレクトロスプレー(ESI)法で,ポジティブイオンモードのもの.
オ.検出器
選択反応測定(SRM)又はこれと同等以上の性能を有するもの.
カ.フラグメントを得るための電圧
ESI法(ポジティブイオンモード)により得られたプリカーサイオンを開裂させてプロダクトイオンを得る方法で,最適条件に設定できる電圧.
表1. LC/MS/MS装置条件の例
項目 設定値
LC カラム Atlantis HILIC Silica
(2.1 mm I.D. ×100 mm, 粒径3μm,Waters)
移動相 アセトニトリルとpH3.6ギ酸アンモニウム緩衝液を(50/50)に混合したもの
流速 0.40 mL/min
カラム温度 35℃
サンプルクーラー温度 5℃
注入量 20 μL
MS イオン化法 ESI法(ポジティブイオンモード)
プローブ電圧 +4.5 kV
ネブライザーガス流量 1.5 L/min
ドライングガス流量 10 L/min
脱溶媒部(DL)温度 250℃
ヒートブロック温度 400℃

4. 試料の採取および保存

 試料は,精製水及びアセトンで洗浄したポリテトラフルオロエチレンあるいはポリプロピレン製の容器に採取し,満水にして直ちに密栓し,速やかに試験する.なお,残留塩素が含まれている場合には,試料水1 Lに対してチオ硫酸ナトリウム10~20 mgを加える.

5. 試験操作

(1) 前処理
固相カラムにメタノール3mL及び精製水3mLを順次注入する.次に,検水50mL(検水に含まれるそれぞれの農薬の濃度が表1に示す濃度範囲の上限値を超える場合には,同表に示す濃度範囲となるように精製水を加えて50 mLに調製したもの)を毎分2~3mLの流量で固相カラムに流した後,精製水3mLおよびメタノール1mLを流してカラムを洗浄後,窒素ガスを吹き付けて固相カラムを乾燥させる.次いで,固相カラムの上端からアセトニトリル/ギ酸(90:10)混合液2.5mLを緩やかに流し,ポリテトラフルオロエチレンあるいはポリプロピレン製の試験管に採る.試験管の溶出液に窒素ガスを緩やかに吹き付けて0.2mL以下に濃縮した後,アセトニトリル/ギ酸(90:10)混合液を加えて1 mLとし,これを試験溶液とする.
(2) 分析
上記(1)で得られた試験溶液の一定量を液体クロマトグラフ‐タンデム型質量分析計に注入し,表2に示すそれぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求め,必要に応じて下記(3)で求めた空試験のピーク面積を差し引いた後,下記6により作成した検量線から試験溶液中のそれぞれの農薬の濃度を求め,これを濃縮倍率で除すことで検水中のそれぞれの農薬の濃度を算定する.
表2. モニターイオンの例
農薬名 プリカーサイオン
(m/z)
プロダクトイオン※
(m/z)
イミノクタジン 179 69, 100
ジクワット 92, 183 130, 157
パラコート 93, 171, 185 77, 170, 171
(3) 空試験
精製水100mLを採り,上記(1)および(2)と同様に操作してそれぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求める.

6. 検量線の作成

 農薬混合標準液を段階的にメスフラスコに採り,それぞれにアセトニトリル/ギ酸(90:10)混合液を加えて10mLとする.以下5(2)と同様に操作して,それぞれの農薬のモニターイオンのピーク面積を求め,それぞれの農薬の濃度との関係を求める.

関連情報

  • 小林憲弘,久保田領志,佐々木俊哉,五十嵐良明:水道水中のイミノクタジン・ジクワット・パラコートのLC/MS/MS一斉分析法の開発.環境科学会誌,28(2), 117–125 (2015).
  • 小林憲弘,久保田領志,齋藤信裕,木村謙治,宮﨑悦子,平林達也,水田裕進,木村慎一,宮本紫織,大倉敏裕,中村弘揮,粕谷智浩,古川浩司,塚本多矩,市川千種,髙原玲華,林田寛司,京野完,佐久井徳広,山本五秋,齊藤香織,五十嵐良明:水道水中のイミノクタジン・ジクワット・パラコートLC/MS/MS一斉分析法の妥当性評価.環境科学会誌,29 (1), 3–16 (2016).