■ ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド 水質検査マニュアル

誘導体化-LC/UVおよび誘導体化-LC/MS(/MS)による分析法(別表19の2および別表19の3)

1.対象物質

 ここで対象とする物質は,ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドである.これらの物質を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)で誘導体化した後に液体クロマトグラフ(LC)により分離・定量する.検出器は紫外検出器(UV),質量分析計(MS)およびタンデム質量分析計(MS/MS)を使用することができる.

2.試薬

(1) 精製水
測定対象成分を含まないもの
(2) アセトン
測定対象成分を含まないもの
(3) 塩化アンモニウム溶液(1w/v%)
(4) アセトニトリル
測定対象成分を含まないもの
(5) リン酸(20v/v%)
(6) DNPH溶液(0.1w/v%)
2,4-ジニトロフェニルヒドラジン0.1gをアセトニトリルに溶かして100mLとしたもの
この溶液は、褐色瓶に入れて冷暗所に保存する
(7) ホルムアルデヒド標準原液(1000mg/L)
トレーサビリティが確保された市販標準原液
この溶液は,ねじ口バイアルに入れて冷凍保存する
(8) アセトアルデヒド標準原液(1000mg/L)
水質試験用の市販標準原液
この溶液は,ねじ口バイアルに入れて冷凍保存する
(9) ホルムアルデヒド・アセトアルデヒド混合標準液(各10mg/L)
ホルムアルデヒド標準原液およびアセトアルデヒド標準原液のそれぞれ1mLを同じメスフラスコに採り,アセトニトリルで100mLに定容したもの
この溶液は、使用の都度調製する

3.器具および装置

(1) 高速液体クロマトグラフ(LC/UV)
ア.カラム
内径2~5mm,長さ15~25cmのステンレス管に,オクタデシルシリル基を化学結合した粒径が2~5μmのシリカゲルを充填したものまたはこれと同等以上の分離性能を有するもの(表1参照)
イ.移動相
最適条件に調製したもの
例えば,A液は精製水,B液はアセトニトリル(表1参照)
ウ.移動相流量
対象物質の最適分離条件に設定できるもの
例えば,毎分1mLの流量で,A液とB液の混合比が1:1のもの(表1参照)
エ.検出器
紫外部吸収検出器またはフォトダイオードアレイ検出器で,波長360 nm付近に設定したもの(表1参照)
表1. LC/UV測定条件の例
機器項目設定値
LCカラムInertsil ODS-3
(4.6 mm×250 mm,5 μm,ジーエルサイエンス)
カラム温度30℃
移動相精製水:アセトニトリル = 50:50
移動相流量1.0 mL/min
注入量20~50 μL
UV測定波長360 nm
(2) 液体クロマトグラフ-(タンデム)質量分析計(LC/MS(/MS))
ア.分離カラム
内径2~5mm,長さ5~15cmのステンレス管に,オクタデシルシリル基を化学結合した粒径が2~5μmのシリカゲルを充填したものまたはこれと同等以上の分離性能を有するもの(表2参照)
イ.移動相
最適条件に調製したもの
例えば,A液は精製水,B液はアセトニトリル(表1参照)
ウ.移動相
流量対象物質の最適分離条件に設定できるもの
例えば,毎分0.2mLの流量で,A液とB液の混合比が1:1のもの(表2参照)
エ.検出器
次のいずれかに該当するもの
①選択イオン測定(SIM)またはこれと同等以上の性能を有するもの
②選択反応測定(SRM)またはこれと同等以上の性能を有するもの
オ.モニターイオン
SIMの場合は,エレクトロスプレーイオン化(ESI)法(負イオン測定モード)で,最適条件に設定したもの
SRMの場合は,ESI法(負イオン測定モード)により得られたプリカーサイオンを開裂させたプロダクトイオンで,最適条件に設定したもの(表2参照)
表2. LC/MS(/MS)測定条件の例
機器項目設定値
LCカラムShim-Pack FC-ODS
(2.0mm×150mm,3μm,島津製作所)
カラム温度30℃
移動相精製水:アセトニトリル = 50:50
移動相流量0.2mL/min
注入量1~10μL
MS(/MS)イオン化法ESI(負イオン測定モード)
SIM測定のモニターイオン(m/z)ホルムアルデヒド-DNPH誘導体:209
アセトアルデヒド-DNPH誘導体:223
SRM測定のモニターイオン(m/z)※ホルムアルデヒド-DNPH誘導体:209>151
アセトアルデヒド-DNPH誘導体:223>163

※プリカーサイオン>プロダクトイオンの順に表示

4. 試料の採取および保存

 試料は,精製水およびアセトンで洗浄したガラス瓶に採取し,満水にして直ちに密栓し,速やかに試験する。速やかに試験できない場合は,冷蔵保存し,72時間以内に試験する.
 なお,残留塩素が含まれている場合には,試料100mLに対して塩化アンモニウム溶液(1w/v%)0.1~0.5mLを加える.


5. 試験操作

(1) 前処理
検水10mL(検水に含まれるホルムアルデヒドの濃度が0.1mg/Lを超える場合には,0.005~0.1mg/Lとなるように精製水を加えて10mLに調製したもの)を採り,リン酸(20v/v%)0.2mLおよびDNPH溶液0.5mLを加えて混合する.20分間静置後,この溶液を一定量採り,試験溶液とする.
(2) 分析
上記(1)で得られた試験溶液の一定量をLC/UVまたはLC/MS(MS)に注入し,DNPH誘導体化したホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド-DNPH誘導体のピーク面積を求め,下記により作成した検量線から試験溶液中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの濃度を求め,検水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの濃度を算定する
図1 分析フロー

6. 検量線の作成

 ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド標準液を段階的にメスフラスコ4個以上に採り,それぞれに精製水を加えて10 mLとする.この場合,調製した溶液のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの濃度は,上記5(1)に示す検水の濃度範囲を超えてはならない.以下上記5(1)および(2)と同様に操作して,ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド-DNPH誘導体のピーク面積を求め,ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの濃度との関係を求める.

7. 空試験

 精製水10mLを採り,以下上記5(1)および(2)と同様に操作してホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの濃度を求め,上記5(1)に示す検水の濃度範囲の下限値を下回ることを確認する.

関連情報

  • 小林憲弘,久保田領志,菱木麻佑,小杉有希,鈴木俊也,五十嵐良明:LC/MS/MSを用いた水道水中ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの同時分析.第24回環境化学討論会(2015.6.24 北海道札幌市).
  • 小林憲弘,久保田領志,菱木麻佑,小杉有希,鈴木俊也,五十嵐良明:LC/UVおよびLC/MS/MSによる水道水中ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの同時分析法の検討.日本水道協会 平成27年度全国会議(水道研究発表会)(2015.10.21 埼玉県さいたま市).
  • 小林憲弘,鈴木俊也,小杉有希,菱木麻佑,加登優樹,金田智,植田紘行,河相暢幸,北本靖子,土屋かおり,木村慎一,古川浩司,岩間紀知,中村弘揮,粕谷智浩,堀池秀樹,京野完,髙原玲華,馬場紀幸,佐藤信武,久保田領志,五十嵐良明:液体クロマトグラフィーによる水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド同時分析法の開発と妥当性評価.水環境学会誌,投稿中.