人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った再生医療を促す再生医療推進法案が25日、参院厚生労働委員会で全会一致で可決された。26日の参院本会議で可決、成立する見通し。国には研究開発から実用化までを後押しする責務があるとしている。
ただ、実現すれば40兆円近い国民医療費を一層押し上げると予想され、医療保険制度の根幹を揺るがしかねない側面もある。それなのに財源を巡る議論は乏しい。
法案は超党派の議員が提出した。再生医療の普及に財政、税制上の措置をすることも国の責務としている。
近年の医療費高騰は医療技術の進歩が要因だ。10年度の国民医療費は対前年度比3・9%増で、うち2・1%分が医療の高度化による。しかしiPS細胞の実用化は先の話であるうえ「まだ限られた人が対象」(与党厚生族議員)とあって、保険適用を巡る議論は低調だ。その点を国際医療福祉大の矢崎義雄総長ら一部医療関係者は強く懸念している。
厚生労働省は高度な再生医療を保険外併用療養費制度の対象とすることを想定する。保険が利く診療と利かない診療を組み合わせた混合診療を例外的に認めるのが同制度。本来混合診療なら保険診療分も含めて全額自己負担となるが、同制度なら保険外のiPS関連以外には保険が利く。
それでも同制度は、確かな技術はいずれ保険適用するのが前提。所得にかかわらず高度な医療を受けられるようにするためだ。ただそれだけでは財政が窮迫するので、風邪など軽症の治療、大衆薬への保険適用の制限も検討せざるを得なくなる可能性があるという。
一方、保険の制限は受診を手控え、重症化する人を増やしかねない。田村憲久厚労相は3日の衆院厚労委で「非常に高額のものをどのように保険適用にするか、大変大きな問題」と指摘した。
矢崎総長は再生医療への保険適用について「難病や事故で身体機能を失った人にはある程度妥当だが、加齢で衰えた身体機能を回復するために用いるのはいかがか」と話す。
(毎日新聞 2013/4/26より引用)