日本再生医療学会(理事長=岡野光夫<てるお>東京女子医大教授)は23日、福岡市のクリニックで効果や安全性の検証が不十分な幹細胞治療が自由診療で行われている事態を受け、こうした治療を手がける施設に「強く是正を求める」などとする声明を発表した。横浜市で同日、記者会見した澤芳樹理事(大阪大教授)は「自由診療の幹細胞治療ほど危ないものはない。倫理的にも問題だ」と警鐘を鳴らした。
声明では、国の監視が届かない幹細胞治療が広がっていることを、複数の報道や国際的な学術誌が問題視したことをふまえ「安全性や有効性において科学的・医学的根拠を持たない治療行為は、我が国の再生医療を発展させることはない。一部の不適切な治療行為をもって再生医療全体が評価されることに強く遺憾の意を表する」とした。澤理事は「医療者同士なので治療行為を排除するものではないが、安全性を高める形でやってほしい」と説明した。
厚生労働省は現在、こうした自由診療による幹細胞治療にも一定の規制を可能にする新法を検討中で、今国会への法案提出を目指している。
また同学会は、再生医療に使う細胞を調製する技師の認定制度を作ることも明らかにした。今後、医師の認定制度も検討する。いずれも再生医療に従事する人材の質を向上させ、患者の信頼感を高めるのが目的という。
(毎日新聞 2013/3/23より引用)