あらゆる細胞になる能力を持つヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から赤血球を豊富に作る技術を、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)の中村幸夫細胞材料開発室長らが開発した。実用化されれば、少子高齢化で不足が懸念される輸血用血液の製造につながる可能性がある。21日に横浜市で始まった日本再生医療学会で発表した。
中村さんらは、赤血球を次々と生み出す「赤血球前駆細胞」をマウスで既に作製しており、これをヒトiPS細胞に応用した。貧血治療に使われる薬「エリスロポエチン」の成分など血液増殖につながる物質を使って培養し、同様の前駆細胞の作製に成功した。
この前駆細胞の集まりを赤血球にしようとすると、約25%がうまく変化するが、残りは不完全だったり、前駆細胞自身が死んでしまったりするという。前駆細胞自体はほぼ無限に増えるため、輸血に必要な量の赤血球は作れるが、コストを抑えるのにさらに技術改良が必要で、実用化には数年かかるという。
iPS細胞から作った組織は、ヒトに移植すると異常な形で増殖してがん化する恐れがあるが、赤血球は他の細胞と違って核がなく、自分で増殖しないためその心配はない。ほぼ万人に輸血可能なO型Rhマイナスの赤血球を作って貯蔵すれば、ほかの血液型にも対応できるという。
中村さんは「前駆細胞から赤血球を作製する効率を、現在の25%から100%に高めることが必要で、さらに研究を続けたい」と話している。
(毎日新聞 2013/3/21より引用)