体のさまざまな組織になるiPS細胞から網膜の組織を作り出し、重い目の病気の患者に移植する世界初の臨床研究の申請を、理化学研究所が、今月28日に厚生労働省に行うことが分かりました。
審査で認められしだい、移植用の網膜組織の作成など、具体的な作業が始まることになります。
厚生労働省に臨床研究の実施を申請するのは、神戸にある理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーなどのチームです。
臨床研究では、iPS細胞から目の網膜の組織を作り出し、「加齢黄斑変性」と呼ばれる、網膜の一部が傷つく重い目の病気の患者6人に移植して、視力の回復を目指します。
研究チームでは、すでに移植手術が行われる予定の、神戸の先端医療センター病院の承認を得ていて、世界初となる臨床研究の早期の実施を目指し、理化学研究所の理事会の承認を得たあと、今月28日、厚生労働省に申請するということです。
今後、厚生労働省の審査で認められしだい、患者の選定やiPS細胞を使った移植用の網膜組織の作成など、臨床研究に向けた具体的な作業が始まります。
審査の手続きは
理化学研究所の臨床研究は再生医療や生命倫理などの専門家で作る厚生労働省の委員会で審査が行われます。
審査の様子は非公開で、「ヒト幹細胞臨床研究指針」というガイドラインに基づいて、安全性に問題がないか、有効な治療になるかなど、倫理面や技術面から検討が加えられます。
そして、申請内容が指針に沿ったものであることが確認されれば、厚生労働大臣が了承して、臨床研究の実施が可能になります。
この委員会ではこれまで、骨髄や脂肪などから採取した細胞や組織を患者に移植する、66件の臨床研究を了承していて、審査に要した期間は平均で7か月程度だということです。
ただ、今回は、iPS細胞を使った世界でも初めての臨床研究となることから、慎重に審査が進められると見られています。
(NHKニュース 2013/2/26より引用)