韓国では禁じられている幹細胞投与を希望する患者らを福岡市博多区の「新宿クリニック博多院」が受け入れている問題で、患者を紹介したとされるソウルのバイオベンチャー「RNLバイオ」は21日、これまでに約3700人の顧客が日本で投与を受けたことを明らかにした。中国でも約1万1500人が投与を受けており、研究段階の幹細胞治療に関して規制の甘い国をターゲットにした「幹細胞ビジネス」の一端が明らかになった。【再生医療取材班】
R社が21日、毎日新聞に送付した回答書で明らかにした。R社は「契約は幹細胞の保管のみで、投与の依頼はしていない」と説明しているが、博多院はR社側から協力金を受け取って投与していることを認めている。
関係者への取材によると、R社は健診や治療と観光を組み合わせて外国人を呼び込む「医療ツーリズム」の形で日本に進出。09年半ばから、石川県内や京都市内のクリニック(いずれも閉院)などが、糖尿病やリウマチなどの治療や美容効果を期待するR社の顧客に対し幹細胞投与を始めた。現在は博多院が中心とみられる。
回答書によると09年以降、日本で3702人が延べ5399回の幹細胞投与を受けた。中国でも08年以降、1万1489人が延べ2万2075回、投与を受けた。日本で投与された人の中に日本人が含まれると指摘する関係者もいる。
自分の体から取り出した幹細胞を投与する幹細胞治療は、再生医療の一つとして実用化が期待されているが、治療効果や安全性は検証段階。医療現場では医師の裁量が優先されるため、規制法制がない日本では事実上「野放し」になっている。
同社ウェブサイトなどによると、R社は00年から幹細胞研究を始め、09年にはイヌの幹細胞を使って2匹の「クローン犬」を誕生させたと発表した。現在は、顧客の脂肪から採取した「間葉系幹細胞」を培養し保管するバンク事業を大規模に展開している。
R社は回答書で「(患者自身の体内にあり、卵子などを使わない)幹細胞こそが生命倫理に最も適合した難病治療方法だ。当社が研究する幹細胞は安全性及び効果が立証されたもの」と、幹細胞治療の意義を説明している。
(毎日新聞 2012/12/22より引用)