大手損害保険各社は様々な組織に育つiPS細胞を活用した臨床研究に向けた保険を投入する方針だ。臓器の移植などで副作用や後遺症が出た際、被験者に研究機関などが払う賠償金を補償する。京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞の受賞決定を受け、政府は研究への支援拡大に動き出す。損保各社は実用化への取り組みが急速に広がり、保険の需要が高まると判断した。
商品設計の検討に入ったのは東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険など。保険料は治療する部位で異なる見通しだ。ある大手損保の試算では被験者1人に最大1億円を払う契約の保険料で500万円以上となる見込み。保険金は治療費、休業や死亡に伴う損失、慰謝料、訴訟費用などにあてることを想定する。
iPS細胞の実用化に向け理化学研究所などは2013年度にも初の臨床研究を実施する。様々な臓器や組織に変わる細胞のため、新たな研究が相次ぐ可能性は大きい。損保各社は研究の広がりをみて商品投入の時期を決める。
一般に新しい治療の臨床研究では被験者が万が一死亡したり深刻な後遺症が残ったりした場合、数億円の賠償金の支払いが発生する。病院や研究機関が単独で負担するのは難しく、保険に加入しておくことが多い。
iPS細胞をいかした治療は通常の臨床研究に比べ「類似例がないためリスクの見積もりが非常に難しい」(大手損保)。損保各社は賠償リスクを引き受ける度合いや保険料の水準について研究を急ぐ。
(日経新聞 2012/11/2より引用)