厚生労働省がiPS細胞などを使った再生医療を特定の病院に限定する背景には、一部の医療機関が科学的な根拠のないまま再生医療と称して治療を手がけるケースが報告されていることがある。学会などは自粛を求めているが、効果は上がっていないのが現状という。
がんや脊髄損傷、アルツハイマー病などに、患者の体から細胞を採取して注射する「幹細胞治療」について、研究者や専門医が集まる日本再生医療学会は昨年、安全性や効果が疑問視されるとして、安易に受けないよう患者に呼びかける声明を発表した。
厚労省は2006年、再生医療について指針をまとめた。大学や医療機関の倫理委員会と厚労省の審査委員会の承認を受けてから、慎重に進めるよう指導している。
しかし、国や研究機関の審査を経ていないケースが少なくない。さらには、健康保険が適用されない高額な自由診療で実施する医療機関があるほか、外国人患者が死亡する事故も起き、学会を中心に制限を求める声も出ている。
医療行為を特定の病院に限定する例として、脳死者からの臓器移植がある。厚労省は臓器移植法の枠組みにならい、新しい法律を作って制度化することも検討する。ただ、医師法では医師に幅広い裁量権を認めており、制約を設けることに反発も予想される。
(日経新聞 2012/8/19より引用)