自治医科大学の小林英司客員教授と大塚製薬工場(徳島県鳴門市)などは、移植用の肝臓を種類が違う動物の体内で作る手法を開発した。この手法を使いマウスの体内で育てたラットの肝臓を病気のラットに移植すると、拒絶反応を抑える免疫抑制剤の使用を大幅に減らせた。移植医療用の臓器を家畜の体内で育てる動物工場の実現に近づく成果だ。
ラットから肝臓の細胞になる手前の前駆細胞を取り出し、産まれて間もないマウスの体内に移植すると、血管はマウスだが他の細胞や組織はラットという肝臓ができた。取り出して肝臓病のラットに移植した。
種類の違う動物から取りだした臓器を移植すると、複数の免疫抑制剤を大量に投与しなければならない。新手法で作った肝臓を移植すると、1種類の免疫抑制剤で約100日間も機能し続けたという。
将来は人間の患者から同様の細胞を肝臓から取りだし、ブタに移植して移植用の肝臓を作れるとみている。今後、他の動物でも安全性を確かめたうえで人間に応用する計画だ。
(日経新聞 2012/8/14より引用)